大衆娯楽、短編集

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胸くそアイドル

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 バラエティー番組。

 一人の女の子――アイドル――が、綺麗な、テカテカしたバッグを見せびらかすように持ちながら言う。
「これ、私のお気に入りのブランドで……」
 隣に座る同じグループの女の子たちが『わあ』と目を丸くしたり、『スゴーい』と手を合わせたり、『いいなー!』うらやましがったりする。

 番組の進行役が言う。
「スゴいね!
高校生でこんなの持っている子、他に居る? 周りに?」
「ふふ」
 アイドルの女の子はバッグを肩にかけて笑う。

 進行役が話を盛り上げるように言う。
「(お金のジェスチャーしつつ)若いのに、持ってるね~」
「ふふ」笑って、
「持ってまーす! ウチら皆、持ってるよね?」
 まわりの、アイドルグループ仲間を見ると、彼女たちも頷く。
「うん」
「同年代より、ずっと持ってる~!」

「働いているもんね?」進行役の、フォローか、それとも煽ろうとしての発言に、
「うん。それもあるけど……」
「でも、やっぱりぃ」

 そこでアイドルたちがテレビ画面いっぱいにひしめき合い、
「ファンの方が貢いでくれるからでーす!」
「グッズとか、たくさん買ってくれるもんね」
「ありがとー!」
 お茶の間のファンの向けて、笑顔で手を振る。

 そんな彼女たちを見ながら、思う……
 あームカつく。
 高校生で100万近いブランド品?
 親が金持ちとかではなく『ファンのおかげ』。
 何それ。
 まあ、わかるけど。
 何でもくそ高いもんな。グッズ。
 ウチらの落とす金、あのバッグになるんか……
 微妙な気持ちにならないでもない……

 だが……
 そこが良い! 
 この『モヤモヤ』を味わうのが、彼女たちを愛でる際の醍醐味……

 彼女たちは『胸くそ』をコンセプトにした、ダークヒロインなアイドルグループ。

 しかし、そう言うところは『テレビ向けのキャラ』で。
 実は良い子たちなのだ――本当は。
』は握手会とかライブで、ほんとに無邪気な姿を見せてくれる。

 あのブランド品も、『借り物』である。多分、本当はね。ファンは本当はちゃんと分かっている。
 彼女たちが『演じている』ことを分かっている――『胸くそ』なアイドルを。
 大人の、色々こねくりまわし、こじれまくり、おそらくヤケクソの逆張りで誕生した、変なコンセプトのアイドル、『このアイドルを見ても癒やされない、むしろむかつく――「胸くそ」なアイドル』と言う作られた変なキャラを守っている。
 かわいそう。被害者だ。

 本当は良い子たちであること、ファンは当たり前に知っているけれど、皆にも知ってもらいたいな……


 ――

 そんなとき、彼女たちの〇イッターの裏アカが流出した。


 ――

 ライブ会場。
『胸くそアイドル』は今日も元気。

「みんなー!
今日もありがとう!」
 黄色い声を張り上げ、キャッキャうふふ。わちゃわちゃ。

 そんな彼女たちを見ながら思う……

 今更、良い子ぶっても遅いんだよ!
 おまえらの裏アカ、全部見たからな!
 本性知っているんだよ……!
 おまえらはファンのことなんて、金を落としてくれる人間としか思っておらず。
 アイドル活動は金持ち実業家と出会うためにやっているんだって、もうわかっているんだ!

 しかし。

 やっぱり、そこが良い!
 この胸の中で感じる胸くそ――『モヤモヤ』――がたまらない……

 今日もグッズ買って、金を落とすんだ……
 次はどんなブランド品を自慢してくるのかな?



 ――終――

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