大衆娯楽、短編集

toku

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異世界ダージリン

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 私は異世界転生した。
 貴族。

 あるとき、お茶会に呼ばれた。
 私も含め6人の女性。
 紅茶とケーキ。

「お紅茶とてもおいしゅうございますわ」
 私は感想を言った。
「ダージリンですの?」

 私は前世で紅茶が好きで、利き紅茶ができる。
 ダージリンはわかりやすいので、自信があったが……

「いえ……」
 自信満々の私に対し、相手は申し訳なさそうに違う名前を言った。
 その後、
「ダージリンとは初めて聞く名前のお紅茶ですわ」
「きっと似たお味なのでしょうね」
 そんなフォローの言葉をもらったが……

 えっ、ダージリンじゃないの?
 そんなパニック後。
 そうだ。と私は思いついた。
 ここは『異世界』だ。

 そして、紅茶の『ダージリン』とは。
 ダージリンで作られた紅茶。

『地球』の地名が名付けられた紅茶なので、地球ではない異世界には『ダージリンティー』は存在しない。

 しかし、ダージリンティーと似た味の紅茶を作ることのできる環境はこの世界にもあるので、ダージリンティーに似た味の紅茶は存在するのだ……

 
 ――――――

 そしてお茶会は終わった。
 帰り支度をしているとき、このお茶会が初対面の女性に話しかけられる。
「今度、わたくしのうちのお茶会にいらっしゃいませんこと?」
「ええ。是非」


 ――――――

 しばらく後お愛想ではなかったようで実際招待してもらい、彼女の催すお茶会へ行った。
 驚いたことに二人きりだった――誘われたのは私だけ。

 紅茶を頂く……
 香りの時点で、『あの紅茶かな?』と予想しつつ口に含む。
「!」

 やっぱり!
 あの紅茶だ!

 しかし……
 私は『ダージリンティー』の失敗を覚えていたので、名前を言うことは控えた。

「おいしいですわ」とだけ言うと、
「よかったですわ」彼女はにっこりと言った。

「ウバ。お気に召して?」

 ……

 ウバ!

 そう、確かにこの紅茶は『ウバ』だと思った。
 だけど『ウバ』も地球の地名なのでは……

 なのに、何故…… 

 混乱していると、彼女はさらに言った。
「わたくしサンドイッチを作りましたのよ。
召し上がってくださる?」

 サンドイッチ!

「まあ!」
 私はドキドキしながら言った。
「あの。サンドイッチ伯爵が発明された?」

「そう」
 彼女はおかしそうに、
「そのサンドイッチですわ」

 私と彼女は友達になった。




 終 
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