異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu

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第4話 宿屋でまさかの女神再会

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夜。  
街に広がる灯りが窓越しに揺れていた。  
ようやく落ち着いた部屋の中で、俺はベッドに沈み込みながら天井を見上げる。  

「……疲れた」

転生以来、休まる暇がない。  
スライム退治で爆発、研究館で水晶破壊、リシェルを助けたら信仰対象。  
わずか三日で人生が激変している。  
異世界チートものって、本来もっと余裕があるはずだろう?  
少なくとも、俺は望んでない。静かにパンを食って生きていきたいだけなのに。  

とはいえ、今日命を救った礼として宿代はリシェル持ちになった。  
彼女の家のコネで上級客室へアップグレードまでされ、部屋はやたら豪華だ。  
フカフカのベッドも湯気が立つ風呂もある。普通なら大喜びなのに、心は重い。  

「ほんと、俺……どうなるんだろ」

ため息混じりに呟いたその時、背後から声がした。  

「どうなるかって? あなた次第よ」

「うわあああああっ!?」

飛び起きた。  
そこには、白い光をまとった金髪の女性。  
転生のときに見たあの女神が、平然と座っていた。  

「ま、また出た……!」
「“出た”は失礼じゃない?」

女神は頬を膨らませてふてくされたように言う。  
あれ? 神様なのに、妙に人間臭い。  

「え、なんでここに!?」
「だって、様子見に来たのよ。ちょっと手違いが続いちゃって、見過ごせなくなったの!」

手違い。  
この世界に来たときの言い訳ワードだ。聞きたくもない。

「何回手違いしてるんですか!?」
「二回くらい? 三回かも?」  
「多すぎる!!」

俺のツッコミにも動じず、女神はふわりと笑う。  
「でも安心して。結果的にはあなた、ちゃんと強くなってるし、世界のバランスも壊してないし」
「壊してないことが奇跡ですけどね!?」

女神は「えへへ」と誤魔化しながら立ち上がる。  
光の衣がひらひらと揺れて、ほんのり香りが漂った。どこか甘く、懐かしい匂いだった。  

「それで、あなたの加護、少し調整したの」  
「……調整?」
「そう。“自動発動”が過剰すぎたのよ。だから今後は、あなたの意志に少し反応するようにしたわ」
「少しって、程度が問題なんですよ」

女神は真顔で指を立てる。  
「簡単に言うと、あなたの“守りたい”って感情がトリガーね。危険を感じたときだけ発動するようにしたの」
「それでも困るんですけど! あと、昨日の人たちは吹っ飛びましたけど!?」
「でも死んでないでしょ。安全設計よ。ちゃんと“安全補正”働いたし」

なるほど、俺が奇跡を連発しても死人が出ない理由、それか。  
神様の手違いのくせに、妙に制度的。  

「……お願いがあるんですけど」
「なあに?」
「俺、平凡に過ごしたいんです。いちいち注目されるのは無理です。目立たない設定にして下さい」
「目立たない設定……?」女神は顎に指を当てて首を傾げた。「むずかしいなぁ。だってあなた、もう噂になってるし」
「だからこそお願いします!」

女神はしばらく考えてから、パチンと指を鳴らした。  
空気がわずかに揺らぎ、光が俺の身体を包む。  

「“曖昧の加護”を付与したわ。あなたを覚えても、しばらくすると人は印象をぼやかして思い出しづらくなる。英雄なのに誰も詳しく覚えてない、そんな感じね」
「……地味な成功者になれそうです」
「ただし、恋愛だけは別。情が深い相手には効果が薄いわ」
「え、それ地雷要素では?」

女神はくすりと笑って言う。
「人の心を完全には曖昧にできないの。だって、想いって神ですら干渉できないから」
「急にいい話っぽくまとめないでください」

沈黙。  
女神はベッドに腰掛け、少し遠くを見るようにして言った。  
「……あなたがここに転生したのは、偶然でもあるけど、意味もあるの」
「意味?」
「この世界は“理想個体”を希求している。力と優しさを併せ持つ者をね。あなたは――」

その先の言葉は、突如鳴り響くドアのノックで遮られた。  

「ユウさん、入っていいですか?」  
リシェルの声だ。  

「ちょっ……まずい、今入られたら!」  
「だいじょぶ、姿見えないようにしてあるもん」  

女神が指を軽く振ると、その姿が霧のように淡く溶けて見えなくなった。  

「はい、どうぞ!」

入ってきたリシェルは、いつもの騎士服ではなく、カジュアルなワンピース姿だった。  
「よかった、まだ起きてたんですね。昨日のお礼を言いに来て……」  
「昨日って……リシェルさん、本当に気にしないで。俺の方こそ助けられましたから」  
「いえ、命の恩人です。でも、どうしても気になって……その光の力、どこから来るんでしょう?」

まさに女神の前で聞かれたくない質問ランキング第1位。  

「いやそれが、その、俺にもわからなくて……」

背後のどこかで、透明になっているはずの女神が「うんうん」と頷いた気配がする。  
頼むから余計なこと言わないでくれ。  

「きっと神の導きですわ」リシェルの瞳が真剣だ。「私にはそう思えます」
「……かも、しれませんね」

適当に笑ってごまかすと、リシェルは少し困ったように笑った。  
「でも、もしあなたが光の勇者として人々に望まれるなら、その時は……私、あなたを守ります」

俺は思わず言葉を失った。  
リシェルの眼差しが真っすぐすぎて、嘘で覆せなかった。  

「……ありがとう。でも俺、そんな大層な存在じゃないですよ」
「それでも構いません。私にできることがあるのが嬉しいんです」

その笑顔に、小さな沈黙が流れる。  
夜の街の光が窓の外を照らし、部屋の中を淡く染める。  

やがてリシェルは名残惜しそうに立ち上がった。  
「それでは、おやすみなさい。明日またギルドで。……ユウさんに光があらんことを」  
「お、おやすみなさい」

彼女が出て行くと同時に、空気がふっと変わり、女神が再び姿を現した。  

「ふふ、いい子ね。あの騎士さん」
「そう思うなら、余計な祝福とかはやめてくださいね」
「ちょっとだけ“応援”しただけよ?」

眉をひそめる俺をよそに、女神は笑った。  
その笑みは、どこか寂しげでもあった。  

「……この世界の均衡には、愛も戦いも必要なの。あなたはその“転換点”になるわ」
「え、また難しいことを……」
「ま、思い出したころに理解できるようになるわよ」

女神は窓辺に立ち、月明かりの中で振り返る。  
「じゃあ、また来るわ。たぶん近いうちに」

そう言って光の粒になり、静かに消えた。  

残された俺は、ただ呆然と立ち尽くす。  
窓の外の月は丸くて美しいのに、俺の心の中は嵐だった。  

「……平穏に暮らしたいって言ったばかりなんですけどね、女神様」

誰にでも聞こえないよう、小さく愚痴る。  
けれど次の瞬間、どこかでくすくすと笑う声が聞こえた気がした。  

(第4話 終)
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