10 / 84
夜のカフェテラス
冬の戯れ
しおりを挟む
校庭は銀世界。
今年初めての雪を観測した。
その景色は世界と部室を別世界のように隔てている錯覚を起こす。
それもこれも、この暖かい場所のおかげに違いない。
「こたつって最高だなあ。」
感じる最高級の温もりに思わずテーブルに頬ずりし突っ伏す。
ほぅっと口から擬音が零れた。
丁寧に蜜柑の皮を剥いている友人の顔を見やると、今しがた剥いていた蜜柑を差し出してくれる。
反射的にガバッと口を開けたら笑われた。
口に広がる甘酸っぱい柑橘の旨味。
「こたつって最高だなあ。」
「さっきも同じ事言った。」
また笑われた。
笑うたびに揺れる真っ白な髪と睫毛。
「天使がいる。俺の隣に優しい天使がいる。最高だよ。」
「陽太の方が天使じゃねーか。ゆるふわ堕天使。」
その珍妙なあだ名は本当に止めて欲しい。
思わず炬燵をひっくり返したくなる衝動に駆られるほどに嫌だ。
高校に入学してから数ヶ月経った頃、そのような名が出回っている事を知った。
黒髪の緩い天然パーマが堕天使の由来らしい。
説明されても理解に苦しむ由来だった。
柚木陽太といった名前がちゃんとあるのだが、あまり名前で呼ばれることは少ない。
アクセサリーデザイナーの姉が与えてくれる物を日々身に付けているためか、最近ではチャラふわ堕天使などいう、もはやよく分からない造語も使われ始めている。
「ほんとに止めて。恥ずかしいから。」
嫌がる俺を笑っている彼にも冷徹王子と言ったあだ名があるのだが、俺は全く気に入っていない。
この可愛い天使ちゃんに冷徹とは何事か。
確かに俺以外にはツンツンしているが、本当は可愛い天使ちゃんだ。
デレを垣間見た時は拝みたくなる程に神々しいというのに、冷徹王子なんて似合わない。
「白猫天使とか良いよね。」
「絶対に止めてくれ。」
「白猫天使ちゃん!蜜柑下さい!」
だから止めろと嫌がりながらも蜜柑を口に放り込んでくれる友人は、いつも、この上なく天使なのである。
ガチャガチャと部室のドアが空き、くたびれたスーツを着た、くたびれた顔の男が入ってきた。
「今日はもう絶対に頑張らねえ。絶対にだ。」
そう愚痴る男は、我らが顧問の萱島先生だ。
「お前ら部室に炬燵持ち込んで仲良く蜜柑とは良いご身分だなあ。よくやった。」
俺にも蜜柑くれと催促し炬燵の空いたスペースに潜り込み、おいおい炬燵やべぇなと顔を緩ませる。
緩ませた顔には変わらず疲労が見えた。
今年初めての雪を観測した。
その景色は世界と部室を別世界のように隔てている錯覚を起こす。
それもこれも、この暖かい場所のおかげに違いない。
「こたつって最高だなあ。」
感じる最高級の温もりに思わずテーブルに頬ずりし突っ伏す。
ほぅっと口から擬音が零れた。
丁寧に蜜柑の皮を剥いている友人の顔を見やると、今しがた剥いていた蜜柑を差し出してくれる。
反射的にガバッと口を開けたら笑われた。
口に広がる甘酸っぱい柑橘の旨味。
「こたつって最高だなあ。」
「さっきも同じ事言った。」
また笑われた。
笑うたびに揺れる真っ白な髪と睫毛。
「天使がいる。俺の隣に優しい天使がいる。最高だよ。」
「陽太の方が天使じゃねーか。ゆるふわ堕天使。」
その珍妙なあだ名は本当に止めて欲しい。
思わず炬燵をひっくり返したくなる衝動に駆られるほどに嫌だ。
高校に入学してから数ヶ月経った頃、そのような名が出回っている事を知った。
黒髪の緩い天然パーマが堕天使の由来らしい。
説明されても理解に苦しむ由来だった。
柚木陽太といった名前がちゃんとあるのだが、あまり名前で呼ばれることは少ない。
アクセサリーデザイナーの姉が与えてくれる物を日々身に付けているためか、最近ではチャラふわ堕天使などいう、もはやよく分からない造語も使われ始めている。
「ほんとに止めて。恥ずかしいから。」
嫌がる俺を笑っている彼にも冷徹王子と言ったあだ名があるのだが、俺は全く気に入っていない。
この可愛い天使ちゃんに冷徹とは何事か。
確かに俺以外にはツンツンしているが、本当は可愛い天使ちゃんだ。
デレを垣間見た時は拝みたくなる程に神々しいというのに、冷徹王子なんて似合わない。
「白猫天使とか良いよね。」
「絶対に止めてくれ。」
「白猫天使ちゃん!蜜柑下さい!」
だから止めろと嫌がりながらも蜜柑を口に放り込んでくれる友人は、いつも、この上なく天使なのである。
ガチャガチャと部室のドアが空き、くたびれたスーツを着た、くたびれた顔の男が入ってきた。
「今日はもう絶対に頑張らねえ。絶対にだ。」
そう愚痴る男は、我らが顧問の萱島先生だ。
「お前ら部室に炬燵持ち込んで仲良く蜜柑とは良いご身分だなあ。よくやった。」
俺にも蜜柑くれと催促し炬燵の空いたスペースに潜り込み、おいおい炬燵やべぇなと顔を緩ませる。
緩ませた顔には変わらず疲労が見えた。
10
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる