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本当の親
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全国ニュースに『4人殺しの暴力団組員 逮捕』と報じられたのは南 佳子の第一審の判決が言い渡される日であった。一課の刑事たちが河村を捕まえるまで色々と彼との攻防があったらしいのだが、今は置いておこう。
家庭裁判所にて、
「主文、被告人を懲役6ヶ月、執行猶予3年に処する」
彼女に言い渡されたのは有罪判決だった。窃盗に関しては彼女自身の自白のみが証拠だったので、証拠不十分で不起訴。詐欺罪で1件だけが起訴となっていた。余罪に関してはこれも証拠不十分で不起訴であった。
南家にて、
和義は娘の有罪判決を受け、選挙活動を辞めようとしていた。そこへ、妻である佳恵は折りたたまれた一枚の紙を和義に渡した。
「佳恵、これはなんだ」
「もう、あなたにはうんざりだわ」
和義がその紙を広げると半分の空白がすでに埋められていた。その紙の上部には緑で『離婚届』と書かれていた。
「佳子が有罪になったからなのか」
「いいえ、あなたの幸せって一体、何なの」
和義は長い間、佳恵と寄り添ってきたはずなのだが、こんなに冷徹な佳恵を見たことはなかった。そんな佳恵の様子に和義は怯えてしまった。
「えっと、それは、家族、が、幸せに暮らせる、こと?」
「よくもまぁ、そんなことが言えましたね」
「ご、ごめんなさい」
「あなたは娘を道具としか思っていない、家族が幸せに暮らせる?佳子がどんなにあなたに怯えて毎日を過ごしてきたのか知らないでしょ」
和義が何か言いたげな様子であったが、佳恵はそれを無視して荷物を持ち、家を出た。佳恵と佳子の部屋はすでに何もない。残されたのは放心状態の和義だけだった。
一年後、
佳恵は刑務所の前に車を停めた。佳恵は外に出ようかと思ったが、外の暑さにやられそうになのでクーラーの効いている車の中で待つことにした。5月にも関わらずこの異様な暑さに佳恵は目が少し潤った、太陽も佳子の出所を待っているのだと。そこへ、二人の人影が向かってくる、女性と男性だ。
「南 佳子さんのお母様ですか」
こんな暑い日にも関わらずスーツ姿の女性が尋ねてきた。
「はい、そうです」
「私、南 佳子さんの取り調べを行った佐味と申します」
「あぁ、刑事さんですか」
佳恵は車のエンジンを切り、外に出た。暑さで立ち眩みがおき、倒れそうになったがなんとか耐えた。
「一年前の暴力団組員連続殺人事件って覚えていらっしゃいますか」
暑さというのは人に物事を考えることを諦めさせようとする。それでも懸命に記憶を掘り起こす。
「えー、そうですねぇ、あっ、覚えてます、覚えてます、栄生組の人が殺った事件ですよね」
「そうです、その事件の犯人の情報提供者が南 佳子さんなんです」
佳恵の目が点になる。言葉がうまく出てこない。
「そのお礼が言いたいので、私達も同伴してもよろしいですか」
「はい、どうぞ、、」
佳恵は思った、佳子はもっと私の知らないところへ行ってしまうのだろう。再び、佳恵の目が潤い始めた。笑って迎えようとしたいのだが、溢れるものが止まらない。佳子に家を出ますと言われたら私はどうなるのだろう。色々な思いが頭の中で錯綜する。だが、涙は真っ直ぐ、頬を伝って落ちていく。
佳子には母親らしいことを何もしてあげられなかった。元夫に暴力を振るわれていたのは知っていた。止めることができなかった。佳子を犯罪の道に進ませてしまった。気づくことができなかった。本当の母親だったらどうしていただろう。私は本当の母ではないことで佳子に対して躊躇していた。私も今まで佳子がどんな辛い気持ちで毎日過ごしていたのかわからない。
「佳恵さん、あなたは頑張りました、あなたは本当に佳子さんのお母さんです」
一緒に佳子を待っている佐味が佳恵に向かって言った。佐味の付き添いの男性が佳恵に一枚の紙を渡した。
わたしのお母さん
わたしのお母さんはとても優しいリッパなお母さんです。私が失敗して、お父さんに怒られたあと、お母さんはいつも私に優しくギューとしてくれます。それに、町を歩いているとすれ違う人全員にあいさつをしています。わたしもお母さんのマネをして、みんなにあいさつをするとみんな笑顔で返してくれて心が幸せな気持ちでいっぱいになります。お母さんはわたしに幸せをかんじる方法を教えてくれた本当に優しいリッパなお母さんです。
「これは佳子さんが小学校のとき、母の日の作文で書いたものだそうです」
佳恵は泣き崩れた。高温のアスファルトを忘れるぐらい泣いていた。
「和義さんの暴力は佳子さんの心を傷つけていましたが、この心を癒やしていたのはあなたが佳子さんに教えたあいさつです」
高温のアスファルトの上には2つの小さな水溜りができていた。
家庭裁判所にて、
「主文、被告人を懲役6ヶ月、執行猶予3年に処する」
彼女に言い渡されたのは有罪判決だった。窃盗に関しては彼女自身の自白のみが証拠だったので、証拠不十分で不起訴。詐欺罪で1件だけが起訴となっていた。余罪に関してはこれも証拠不十分で不起訴であった。
南家にて、
和義は娘の有罪判決を受け、選挙活動を辞めようとしていた。そこへ、妻である佳恵は折りたたまれた一枚の紙を和義に渡した。
「佳恵、これはなんだ」
「もう、あなたにはうんざりだわ」
和義がその紙を広げると半分の空白がすでに埋められていた。その紙の上部には緑で『離婚届』と書かれていた。
「佳子が有罪になったからなのか」
「いいえ、あなたの幸せって一体、何なの」
和義は長い間、佳恵と寄り添ってきたはずなのだが、こんなに冷徹な佳恵を見たことはなかった。そんな佳恵の様子に和義は怯えてしまった。
「えっと、それは、家族、が、幸せに暮らせる、こと?」
「よくもまぁ、そんなことが言えましたね」
「ご、ごめんなさい」
「あなたは娘を道具としか思っていない、家族が幸せに暮らせる?佳子がどんなにあなたに怯えて毎日を過ごしてきたのか知らないでしょ」
和義が何か言いたげな様子であったが、佳恵はそれを無視して荷物を持ち、家を出た。佳恵と佳子の部屋はすでに何もない。残されたのは放心状態の和義だけだった。
一年後、
佳恵は刑務所の前に車を停めた。佳恵は外に出ようかと思ったが、外の暑さにやられそうになのでクーラーの効いている車の中で待つことにした。5月にも関わらずこの異様な暑さに佳恵は目が少し潤った、太陽も佳子の出所を待っているのだと。そこへ、二人の人影が向かってくる、女性と男性だ。
「南 佳子さんのお母様ですか」
こんな暑い日にも関わらずスーツ姿の女性が尋ねてきた。
「はい、そうです」
「私、南 佳子さんの取り調べを行った佐味と申します」
「あぁ、刑事さんですか」
佳恵は車のエンジンを切り、外に出た。暑さで立ち眩みがおき、倒れそうになったがなんとか耐えた。
「一年前の暴力団組員連続殺人事件って覚えていらっしゃいますか」
暑さというのは人に物事を考えることを諦めさせようとする。それでも懸命に記憶を掘り起こす。
「えー、そうですねぇ、あっ、覚えてます、覚えてます、栄生組の人が殺った事件ですよね」
「そうです、その事件の犯人の情報提供者が南 佳子さんなんです」
佳恵の目が点になる。言葉がうまく出てこない。
「そのお礼が言いたいので、私達も同伴してもよろしいですか」
「はい、どうぞ、、」
佳恵は思った、佳子はもっと私の知らないところへ行ってしまうのだろう。再び、佳恵の目が潤い始めた。笑って迎えようとしたいのだが、溢れるものが止まらない。佳子に家を出ますと言われたら私はどうなるのだろう。色々な思いが頭の中で錯綜する。だが、涙は真っ直ぐ、頬を伝って落ちていく。
佳子には母親らしいことを何もしてあげられなかった。元夫に暴力を振るわれていたのは知っていた。止めることができなかった。佳子を犯罪の道に進ませてしまった。気づくことができなかった。本当の母親だったらどうしていただろう。私は本当の母ではないことで佳子に対して躊躇していた。私も今まで佳子がどんな辛い気持ちで毎日過ごしていたのかわからない。
「佳恵さん、あなたは頑張りました、あなたは本当に佳子さんのお母さんです」
一緒に佳子を待っている佐味が佳恵に向かって言った。佐味の付き添いの男性が佳恵に一枚の紙を渡した。
わたしのお母さん
わたしのお母さんはとても優しいリッパなお母さんです。私が失敗して、お父さんに怒られたあと、お母さんはいつも私に優しくギューとしてくれます。それに、町を歩いているとすれ違う人全員にあいさつをしています。わたしもお母さんのマネをして、みんなにあいさつをするとみんな笑顔で返してくれて心が幸せな気持ちでいっぱいになります。お母さんはわたしに幸せをかんじる方法を教えてくれた本当に優しいリッパなお母さんです。
「これは佳子さんが小学校のとき、母の日の作文で書いたものだそうです」
佳恵は泣き崩れた。高温のアスファルトを忘れるぐらい泣いていた。
「和義さんの暴力は佳子さんの心を傷つけていましたが、この心を癒やしていたのはあなたが佳子さんに教えたあいさつです」
高温のアスファルトの上には2つの小さな水溜りができていた。
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