どうも、邪神です

満月丸

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冒険者編

神様の意地を見せてやんよ!

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帝都ケンタックの人々はそれに気づき、言葉もなく思わず呆然と佇んだ。
人々の希望を根こそぎ奪おうと、空の果てより来訪した黒いそれは、まるで雲の如く巨大さでその異形の体躯を惜しみなく晒しながら、帝都上空へとたどり着きつつあったのだ。

「なん、なんだ…ありゃぁ…?」

未だかつて無い威圧感。
おぞましくも非現実的なそれを見て、盗賊イーレンは生唾を飲み込んだ。

「…嘘でしょぉ…本当に、世界の終わりなの?」
「……ミライア、離れるな」

ライドとミライアは互いに抱き合い、迫りくる威圧感から支え合った。

「…く、なんていう圧迫感…ぼ、僕の歌が、これ以上は…!」
「はぁ、はぁ…そんな、こんなことで、力が…!」

ダーナとトゥーセルカは、屋根の上で精霊と世界の軋みを聞いていた。強制的に自身の体から漏れ出るそれは、精霊を喰らう化け物の糧となっている。

「…来やがったぜ、メルメル」

ゲッシュは斧の柄を地面に突き、迫る終わりの予感に冷や汗を流した。

誰もがその異様を目の当たりにし、誰もが濃い死の気配に膝を屈した。
司祭は祈れど神は答えず、幼子は泣き叫び、虚無教信徒ですらその根源的な恐怖に身を竦ませた。

「嗚呼、主よ。終わりの時はすぐそこまで。ならばこの道化の身は、最後まで貴方様のお供をいたしましょう!」

一人、中央広場の噴水の上で踊る道化師は、くるりと回ってカァーと鳴き、黒い羽を散らして天へと消えた。

そんな、誰もが終末を見届けていた時。

「お退きなさい…!」

ラーツェルとメルが、帝都に侵入していた魔物を一瞬で屠り、血で汚れた道を駆ける。
その姿に、衛兵たちは仰天したように声をかけた。

「め、メルサディール様!?そのお姿は…」
「治療は結構ですわ!今は、時間を稼ぐ方が大事…全市民に通告しなさい!今すぐ、帝都の外へと逃げなさい、と!」
「ですが、逃げるってどこへ…」
「決まっています!生き残れると思う方角へ!」

指示とも言えぬ指示を出しながら、メルサディールは城門の上、歩哨が登る歩廊へと上がっていた。
あの巨大な虚公、大きすぎて動きが遅いのが救いではある。
欄干の上に立ち、メルは帝都を覆うほどの巨大な結界を張りながら、傍に仕える従者へ言う。

「…ラーツェル、逃げてもよろしいのですわよ?」
「御冗談を。貴方を放って逃げたら末代まで祟られるでしょう」
「あら、よくわかっていらっしゃるわね?アタクシの嫉妬深さは折り紙付きですわよ」

冗談を言い合いながら、しかし両者は共に覚悟を決めていた。
メルは杖を突き、ラーツェルは剣を手に、来たるべき敵を迎え撃つべく最後の時を待つ。

…ところが、

「…メル姉!!」
「メルさん!」

「あなた方…無事でしたのね!?」

突如、咆哮が響いて頭上よりフェスベスタが舞い降りてきた。慌てる兵士とは裏腹に、フェスベスタの背に乗っていた三人、ハディ、ケルト、ネセレは歩廊へと飛び降りた。そのままフェスベスタも横に降り立ち、迫ってきている虚公を見上げている。

『厄介なことになったぞ、勇者よ』
「ええ、そのようですわね。…あなた方も、今なら逃げられますわ。おじい様ならきっと、あなた達を救い出して…」
「メル姉、それはいいっこなしだ!俺たちは最後まで戦う!」
「ですが…」
「メルさん、同じパーティとして、貴方一人だけを放り出して逃げられるほど、我々も非情じゃないんですよ。仲間を救うのは、当然のことでしょう?」
「あなた達…」
「私も、ここにはいませんがゲッシュも、きっと同じ心持ちですぞ、姫」
「………」

仲間、という言葉に、メルは少しだけ顔を伏せた。
孤独な勇者だった姫君は、もう唯一無二の仲間を得ていたのだと、ようやく実感したのだ。
ちなみに、ネセレはかぁーっとツバでも吐きそうな顔をしているが、空気を読んで何も言わなかった。
そっと涙を拭ってから、メルは顔を上げる。

「よろしいですわ。ならば皆様の命、アタクシに託してくださいませ!」
「ああ!俺たちは最後まで諦めないさ!」
「勇者と共に戦えるなんて、光栄です」
「栄誉で飯は食えねえっての…ま、最後まで付き合ってやっか!」
「我が魂はメルサディール様と共にあり!邪悪なる化け物に屈するはずもなし!」

そして、遂に帝都へ辿り着いた虚公。
その触手の笑い声が響き、降り注ぐ泥が帝都へと降り始める。
それをメルの結界が弾き飛ばすが、虚公はあざ笑いながら、悪あがきとばかりにその節足で結界に掴みかかり、そして…。


「やれやれ、やはり私が必要になったか」


その瞬間!
虚公の横っ面へ、極大の魔法がぶっ刺さったのだ!

驚き戸惑う最中、眼前で魔法陣が展開され、そこから現れたのは…、

「爺さん!?」
「おじい様!?」
「クソジジイてめぇ!?」

「あ~、何も言うな。何を言っても私は答えんからな。まったく………ただ」

ひらひらと手を振りながら、見慣れた紫ローブの老人は、背を向けたまま大鎌を手にしていた。

「救いを求める子らの声を無視するのは、親としては問題なのでな」

その眼差しは天を睨めつけ、憎むべき敵を射止めるように黒い瞳に収めた。

「…まったくもって、忌々しい。この私が前言を撤回してまで戻ってきたのだぞ。後でクソエレゲル共がどんな小言を言い出すか、むかっ腹が立って仕方がないな」
「カロン老…その、大丈夫なのですか?」
「安心しろ。最悪にはならぬように予防はしておいた…まあ、私が消えるか奴が消えるか、そのどちらかだな。…ああ、そうそう」

カロンは鎌をトンっと突く。
その途端、メルサディールの隣に魔法陣が現れ、そこから別の老人が現れたのだ。その姿にメルは素っ頓狂な声を出す。

「し、師匠!?」
「ふぅやれやれ、ここまでの酷使は老骨には応えますのぅ…おお、メルサディール。息災…とはいかぬようじゃが、生きているようでなにより」
「ど、どうして師匠がここに…!?」
「私が頭を下げて呼んだのだ」
「おじい様が?」
「うむ、感謝するのだぞメルサディール。我が主神はお前たち、そしてこの大陸の全ての者のために、無茶をしてまで来てくださったのじゃからな」

老人、エーティバルトは肩を揉みながらも、杖をくるりと回して詠唱し、その瞳を見開いて一瞬だけ輝かせた。
すると、カロンを中心に巨大な円陣が広がった。

「それではエーティバルト、頼んだぞ」
「お任せくだされ、ルドラ様」

エーティバルトが頷くと同時、カロンは目を伏せ、その体が浮き上がった。

それと同時、

突如としてカロンの体躯から、輝かんばかりの凄まじいヴァルが放出された!

目を射るばかりのそれに、皆が目を塞いだ後…目を開けば、そこには虚空に体を貼り付け、幾本もの魔法陣に包まれているカロンの姿が。
そして…、

「…なんだ、あれ…巨大な、人…?」

人々の眼前、内門の農場の上に佇む、天を突くほどの巨大な、何か。

それは人型をしていた。
それは輝かんばかりの体躯をしていた。
魔法士でなくとも感じられる、純粋なまでのヴァル…自然エネルギーの塊、そのもので構成されていた。

輝ける人は、ゆっくりと顔を上げ、両手を上げて構え、言った。

『さて、虚公よ…これならば、流石のお前も痛かろう?』

挑発するように指先をクイッと上げる。

輝く人の出現に、虚公は戸惑い、怒り、すぐさま消し飛ばさんと、その触手を向けて結界を貫いてきた。

しかし、

『舐めるな』

巨人は、貫通してきた触手を一瞬で掴み、そのまま引きちぎった。
崩れ、悲鳴を上げるおぞましいそれを地面に打ち捨てながら、巨人はぐっと身を低くし、

突如、凄まじい勢いで飛び上がったのだ。

【貴様は…!!ルド】

『言わせんぞ!!』

吠える虚公、その顔面を両手で鷲掴み、巨人は強烈な膝蹴りで蹴り抜き、命中と同時に大爆発!
虚公の顔をふっとばした巨人は、しかし何かを察して手を離す。
と同時、虚公の体から再び触手が溢れ出て、それらは怨嗟と嘲笑の声を撒き散らしながら縦横無尽に攻撃を加えてくる。それを手刀で切り落としながら、巨人は虚公を睨めあげる。

【くっくっく…!!まさか貴様が直々に出てこようとはな…大方、その者共を見捨てられずに出てきたというところか?なんという愚か!】

『貴様ごときに愚かと切って捨てられる謂われなぞないわボケナスが!』

【くだらぬなぁ!原初神よ!そこまで定命の者を見捨てられぬか?貴様を喰らえば、世界は我が物となる!この場にて貴様を食い散らかし、残りの二柱をも腹に収めてやるわ!!】

『はんっ!甘い甘い!砂糖をまぶしたプリンよりも甘いわ!!その程度でくれてやるほど、この世界は安くはないぞ!!』

迫る触手を掻い潜り、巨人は再び天へと飛び立ち、アッパーカットで虚公の胴を打ち据える。更に節足を掴んで胴に足を巻き付け、そのまま両手で足二本をぶち切った!
これには耐えきれず咆哮を上げる虚公…。

…否、虚公は痛みで声を上げたのではない。
大口を開いた口から、鋭い音が響いて輝き、帝都を滅ぼさんと力を溜めていたのだ。

ピィンッ!!

『させんぞ!!』

鋭い音を立てて、一閃が帝都を襲う…ように見えたが、
巨人が目前に現れて腕を掲げれば、閃いた光はカクンっと直角にかわされ、天へと消えていく。
お返しとばかりに巨人は虚公に飛びつき、そのまま空中で触手を掴んでグルグルとジャイアントスイング。

『どぉぉりゃああぁぁぁっっ!!!』

【ぐがあぁぁっ!?】

地面へ向けて叩き落される虚公。
そして落ちた虚公のマウントを取り、巨人は追撃のラッシュラッシュラーッシュ!!

虚公がボッコボコにされているのを見ていた帝都の人々は、思わず歓声を上げていた。

「なんだありゃぁ…なんかよくわからんが、頑張れ巨人!」
「負けんなー!ぶっとばせー!」
「ああ、あれはきっと天光神さまに違いない!おお、神よ!どうか我らをお救いください!!」

司祭の言葉に触発され、人々は声援を送り出す。
それは感情であり、祈りである。
全ての声は巨人へと通じ、その一撃の威力を底上げしてた。

「ふむ、ここをこうして…メルサディール、あとケルティオよ。そこの魔法陣をこう留めるのじゃ」
「し、師匠!いったい、何をなさるおつもりなの!?」
「な、なんか見るのも恐ろしいくらい精巧な魔法陣のように思えますが…しかし、どこかで見たことが…」
「無駄口をたたく前に魔法を操れ。ルドラ様は自身で体を張って時間稼ぎをされておるのじゃぞ。ほれ、そこが不完全じゃ。お主ら、それでも知の道の信徒か、情けない」

一方、カロンの前では。
虚空で微動だにしなくなったカロンの周囲に、エーティバルトが自身の瞳に記録している魔法陣を展開し、繋ぎ、更に書き足し続けていた。お手製の魔眼には様々な魔法陣が収録されているらしく、それのお陰で自動的に大部分の魔法陣が描かれていく。更に詠唱で杖を振れば振るほどに恐ろしいほどの緻密な呪文式が書き足され、それはカロンの魔法陣へと繋がっていく。
無理やり手伝わされることになった魔法士二人は、ひーこら言いながら怪獣大激闘を横目に陣を作っていく。
なお、ルドラと虚公の戦いに、ネセレが興奮した感じで「やれクソジジイーぶっ殺せー!!」と応援しているのを、フェスベスタがなんとも言えない顔で小さく声援を送っていたりする。

一人、手持ち無沙汰なハディは、レビと一緒に魔法陣の構築を眺めている。

「あれ、いったい何なんだ?俺にはさっぱりなんだけど」
『…我も魔法は詳しくない。が、見たところ…どこかへ繋がっているように思える』
「どこか?どこかってどこさ?」
『そこまではわからぬ』
「う~ん…それより、あの巨人は、爺さんなのか?物凄い存在なのはわかるけど…」
『正確には魔法、カロンの魔力で編み上げた魔法人形だな。攻撃の見た目は派手だがその実、致命的ダメージには程遠い』
「そんじゃ、どうするんだろう、爺さん」

「何をぽけーっと見ておるんじゃ、小僧よ」

と、そこでエーティバルトがハディを呼んだ。
エーティバルトは、地面に敷かれた魔法陣の一角にハディを立たせて、言った。

「小僧、虚無の剣とやらを出すのじゃ」
「え?ええっと………ほら、これでいいのか?」
「うむ!なんという凄まじいエネルギーの塊じゃ!虚無という有限の否定そのものを具象化した、いわば消滅武器といったところか!是非ともいろいろな実験に付き合って…貰いたいのだが、それはまた後日」

目をキラキラさせるエーティバルト。しかし理性は自重したのか、こほんと咳払いしてから前を向く。

「よいかね?これから主神は、やつを葬り去る唯一無二の魔法を放つ。それはお主のその剣を媒介に行われるのじゃ。…ひどい反動があろうが、堪えろよ」
「あ、ああ、分かった!」
「師匠、魔法ということは、これは…」
「うむ、これは全ての存在の、血を繋ぐ魔法!」

そう言ってからエーティバルトは、杖を振るって詠唱した。
魔法陣が煌めき、カロンの体へ纏うように虹色が輝く。

「我が神よ!準備は整いましたぞ!」

『良し!よくやった!』

突如、巨人は輝きを失せさせて小さくなり、流星の如き勢いでカロンの肉体へと突き刺さる。
輝きを纏いながら、カロンの瞳が開き、大鎌を向けた。

「さて、後は応えるか否かなだけだ…」

【愚かな神よ!我が前に恐れをなしたか!?】

「見くびるなよ虚無風情が。私には貴様と違って、優秀な部下がついているのだ」

結界を破り、突き抜けてきた虚公。
誰かが悲鳴を上げる最中、その体躯は、不可視の障壁によって押し止められた。

【なんだ、これは…?】

それは、結界。
白と黒の二重結界。
そして一羽のカラスがカーと鳴き、2つに分かたれ、虚空に浮かぶ。

「そうまで言われちゃ、頑張らないわけにはいきませんなぁ」
「主神の信頼に応えねば、元司祭としても示しがつきません」

凄まじいヴァルを発する、黒い男と白い女。
2つに分かたれた双子の神は、互い違いの腕を掲げ、虚公を押し止める。
白と黒の障壁、それは薄く、されど決して貫けない。
六元神の二柱が作り出した魔法の壁を突破することは、虚無であっても容易ではない。
ギリギリと拮抗し合うそれに、虚公は憤怒するかのような咆哮を上げる。

【魂が半異形の成り損ないが…主たる我が邪魔をするか!】

虚公の咆哮に応じるように、二人の相貌がやや歪む。

「生憎と、俺は貴様を主に奉じた覚えは、一度たりとてない」
「我が神はただ一柱のみ。身の程を知りなさい、下郎が」

その感情に呼応し、双子神の白と黒の魔法はより強く放たれ、虚公の勢いを失せさせる。
更に白と黒の鎖がどこからか現れ、虚公の体躯に縛り付き、虚空へと縛り付けた。
虚公が身を捩って逃れようとするも、更に魔法の障壁は虚公を中心に球状となって覆い込み、何人も逃さぬ檻を作り上げる。

その合間、カロンは朗々と声を発する。

【人よ、我が血を引きし、全ての我が子らよ。
 汝が父なる声を聞くがよい。
 我が血と肉を通じ、汝が元へ、我が声を届ける】

その声は、カロン…ルドラの子にして、人の始祖ヴァルスの血を引く、全ての者に等しく語りかけられた。
むろん、それは大陸の外、人と交わった獣種や翼種にも届く。

【今や、世界は滅びの憂き目にある。
 虚無なる物にて有限は破られ、全ては無限へと帰そうとしている。
 …されど我が子らよ、諦めるな。我らある限り、汝らもまた在り続けるのだ。
 神ある限り、世界は滅びぬ!】

神の啓示に、信仰深い人々は膝をついて祈りを捧げる。いつもは神など見向きもしないものも、終わりの前にて、ようやくその祈りを捧げている。

【我が血にて、汝らと繋がりを介す。
 人よ、祈れ!
 世界を救うべく、奴らを滅ぼす、強き祈りを捧げよ!
 祈りは力となり、世界を救う礎となる!

 世界を救うのは、汝らが強き想い!
 決して屈せぬ、強き勇気の輝き!

 さあ人よ、祈るのだ!
 汝らと我らの手によって、我らが世界を守り通そうぞ!!】


その声を届けた、瞬間。

アンテナである魔法陣が光り輝き、化身であるカロンの体に向けて、世界中から凄まじい勢いで祈りのエネルギーが集ってきたのだ。
その全てを、カロンは魔法という力に組み込み、編み上げ、その威力を際限なく底上げしていく。

「な、なんという膨大な精霊の輝き…!彼らの力も掬い上げているのですか…!?」
「おお、おお…!我が神よ!これぞ奇跡の技法!神自らが織る魔法そのものじゃ!」

「くぅっ…!?くっ、ち、力が…吸い取られそうだ…!!」
『堪えろハディ!今、カロンは道を通じてお前の身の内から、虚無のエネルギーを横取りしているのだ!』
「で、でも!ちょっと…いや、かなりキツイ!!」
「我慢しろチビ助!!てめぇが頑張りゃ世界が救われんだよ!!男見せろぉ!!」
「いやいや!根性論だけでどうにかなる問題じゃ…」
「ハディ!」

突如、メルがハディの背後から剣に触れ、支えるように立った。


―――ほら、頑張って!

―――後もうちょっとだ!負けるなよ!


どこからか、天高く響く声。
その声と同時、メルは何故か血を繋ぐ感覚を理解し、それを介してハディへ勇者の…神であるブレイブリーの力を、注ぎ込んだのだ。
ガクリと負担の減ったそれに、ハディは驚いて後ろを見てから、全てを察して笑みを浮かべる。

「アタクシも手伝いますわ!だから、二人で堪えましょう!」
「…ああ、これなら大丈夫そうだ!!」

剣を振り上げれば、黒き剣は星の如く輝き、その光をカロンへと繋いだ。

「こっちは大丈夫だ爺さん!いつでもいけるぞ!!」

「…ふん、一端の口を聞くようになりおって…だが、よくやったぁ!!」

カロンは笑みを浮かべてから、大鎌を構えて、魔法を解き放つ準備をする。

それは、原初の魔法。
全ての人間の祈りを集め、全ての精霊の力を合わせた、神にしか放てぬ魔法。
もはやレベルで定めることも出来ない、奇跡と言い換えられる、生命の本流。

それを力として織り上げ、更にハディの虚無エネルギーをも編み込んで、虚無すら否定する特大の一撃を、未だに藻掻く虚公へ向けて、構えた。

「消えよ、虚公」

【馬鹿な…!?そんな、馬鹿なことがぁあぁっ…!?】

そして、彼はニヤリと笑う。

「御前は、滅びを撒きすぎた」






…それは、一柱の輝きそのものだった、と、他大陸の者は語る。

ゲンニ北大陸全てを覆うほどに、強大で、荘厳で、見るだけで涙を流すほどに恐ろしくも神々しいエネルギーの本流であった、と。
それにより、遠目でも見ることの出来たおぞましい大樹は一瞬にして消え去り、塵と消え…

後に残ったのは、雲をも吹き飛ばして晴れ渡った夜空と、

煌々と輝く満月だけが、地上を見つめていたのだ…。


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