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09.寝て、寝て、眠る
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ゆっくりと目を開けた時、どこかの病室にいた。
目の前には美乃梨らしき人物がいる。まだ頭がぼんやりしていて、ちゃんと認識できない。
「晃、大丈夫?」
「今……何時……」
「今? 十二時少し前よ。ちゃんと骨髄液は採れたって」
そう言いながら美乃梨はナースコールを押していた。
すぐに看護師が来て、俺の様子を見た後に「大丈夫なようなので、病室に戻りましょう」と言ってベッドを移動させられる。
どうやらここは回復室みたいなところのようだな。
けど移動している最中に、俺は逆らえない何かに目を瞑らされてしまった。
意識の外で美乃梨と誰かが会話しているような感じだったが、何を喋っているのかは理解出来ない。
脳が暗く閉ざされるような感じがして、また記憶が途切れた。
次に目を覚ました場所は、自分の病室だった。
さっきよりは随分と意識はマシになっている。体はまだ動かないし、動いちゃダメなんだが。
「美乃梨……」
「あ、晃。起きた?」
「うん……まだちょっとぼんやりしてる感じはするけど、大丈夫」
「三時までは動いちゃダメだって。足を立てるのも禁止ね。六時からは体を横にしても良いって」
事前に説明を受けてはいたけど、やっぱり全く動けない時間があるのは苦痛だな。
お尻のところに穴が空けられているから、自分の体重で止血するために動いてはいけないそうだ。
「うーん、なんかトイレに行きたくなってきたな」
「え、本当に? 尿道カテーテルが入ってて、ベッドの下に尿が溜まってるよ? 」
そういえば、動けないから尿道カテーテルで過ごすか尿瓶にとってもらうか、どっちが良いかと聞かれたんだっけか。
手術中には尿道カテーテルを入れなきゃいけなかったから、そのまま付けておいて貰った方が楽だと思った。トイレに行きたくなる度に看護師さんを呼んで、お世話してもらうのは嫌だったしな。
尿道カテーテルは気にならないという人が多数なんだろうが、俺は何故か常に尿意がある感じだ。
でも尿瓶にする方がイヤだから、このまま我慢しよう。
ふと見ると、手に取った点滴のルートへ、血液が落とされていた。これは俺自身の、事前に採取していた血液だろう。
「骨髄液は、もう渡したのかな」
「私は会ってないけど、手紙と一緒に持って行って貰ったって坂下さんが言ってたわ。形岡県は遠いから、届くのは夕方くらいでしょうね。明日の移植日には間に合うわよ」
「うん」
どうか俺の骨髄液が、無事に少年の元に届きますように。
少しするとその坂下さんがやってきて、労いと礼の言葉をくれる。患者側のコーディネーターと看護師に、間違いなく骨髄液と手紙を託したと言ってもらえてホッとした。
その人達と話をしたかったな。少年がどんな子か、どんな状況なのかを聞いてはいけないから、会わせては貰えなかったんだろうけど。
少しすると担当の先生も回って来てくれて、お尻に四箇所の穴を開けて採取したと教えてくれた。場合によっては六箇所開けると言っていたけど、四箇所で済んだみたいだ。
まぁそれは表面上の話で、骨には何十箇所も挿して骨髄液を取っているわけだが。どっちもそのうち回復するらしいから問題はない。
喉が少し痛いというと、人工呼吸器をつけたせいだから、しばらくすれば治ると言われた。
「先生、水を飲みたいんですが……」
「水分は、二時になってから一口飲んでみましょう。それで気分悪くならなければ、その三十分後に少し量を増やして飲んでみます。問題なければ、三時から普通に飲んで貰って構いませんよ」
うわぁ、ちゃんと飲めるのは順調に行って今から二時間後か……。
飲めないと思うと、余計に喉が渇く気がするから不思議だ。点滴もしているし、水分が足りなくなる事はないはずなんだが。まぁなるべく気にしないように努めよう。
今のところ手足の痺れはなさそうだと伝えると、先生はホッとした様子で病室を去って行った。坂下さんにも、もう大丈夫だからと伝えて帰ってもらう。
美乃梨は帰る前に、スマホや雑誌を枕元に用意してくれた。
「じゃあ私も帰るけど、何かあったらすぐに電話してね」
「分かった、ありがとう美乃梨」
「ううん、お疲れ様、晃。ゆっくり体を休めてね」
俺に後遺症等が認められなくて、安心したんだろう。美乃梨は来る時とは全く違った足取りで家へと帰って行った。
しかし、動けないというのは予想以上に大変だな。体勢を変えられないのはしんどいし、喉の乾きもやっぱり気になる。
動けないし、水も飲めないのならいっその事、眠って時間を過ごしてしまった方がマシそうだ。
ちょうど良い具合に、雑誌を読んでいたら少し眠くなってきた。朝のうちにあれだけ眠っていたのに、まだ麻酔がまだ残っているのかな。それとも眠気と麻酔は関係ないんだろうか。
俺はバサッと雑誌を枕の隣に置くと、また目を瞑った。
さっきまではブラックアウトって感じだったけど、今度は夢を見たからただの睡眠だったんだろうな。
目を覚ますと、病室が暗くなっていた。
スマホで時間を確認すると、午後五時を過ぎた所だ。結構寝られたようだな。
三時を過ぎたから足は立てても大丈夫なはず。体勢を変えるのはまだダメだが。
しかしずっと同じ体勢で寝ていると体がバキバキ言い出しそうだ。少し足を曲げると、少しだけ楽になった。早く体を横に向けたい。
今度はバッチリと目を覚ましたけど、病室は暗くて何もできない。かと言って、自分では電気をつける事さえも出来なかった。
雑誌も読めないなぁ……。
どうしようか悩んだけど、ナースコールを押して看護師さんを呼び、電気をつけてもらった。
喉が渇いた事を知らせて、小さな紙コップに一口だけの水を飲ませてもらう。
午後六時になると、俺は早速体勢を変えた。
お尻のあたりというか、腰のあたりというか、その辺に鈍い痛みを感じる。痛み止めを貰って飲み、お茶のペットボトルを冷蔵庫から取り出して枕元に置いてもらった。普段は簡単に出来る事でも、いちいち頼まなきゃいけないのは気が引けるし面倒臭い。寝たきりっていうのも大変なもんなんだな。
尿道カテーテルは、やっぱり入れておいてもらって正解だった。電気をつけてもらうのもペットボトルを取ってもらうのも気を使うのに、排尿の世話までさせたら気を使うどころの騒ぎじゃない。
まぁそれは俺の場合であって、尿道カテーテルが怖い人もいるだろうから、好きな方を選べば良いと思うが。
今日は絶食だから、水分以外は何も取れない。その水分も、水かお茶だけだ。
流石にお腹が空いてきたけど、明日の朝まで我慢だな。
変な時間に寝てしまったのもあって、夜は中々眠れなかった。雑誌を読んでも飽きてきた。他にする事はないし動けないし暇だ。家にいると、何だかんだとやる事があるんだが。
俺はテレビを見たり雑誌を読んだりスマホをいじったりして、時間を潰す。
最後には眠くもないのに無理矢理目を瞑って眠った。
目の前には美乃梨らしき人物がいる。まだ頭がぼんやりしていて、ちゃんと認識できない。
「晃、大丈夫?」
「今……何時……」
「今? 十二時少し前よ。ちゃんと骨髄液は採れたって」
そう言いながら美乃梨はナースコールを押していた。
すぐに看護師が来て、俺の様子を見た後に「大丈夫なようなので、病室に戻りましょう」と言ってベッドを移動させられる。
どうやらここは回復室みたいなところのようだな。
けど移動している最中に、俺は逆らえない何かに目を瞑らされてしまった。
意識の外で美乃梨と誰かが会話しているような感じだったが、何を喋っているのかは理解出来ない。
脳が暗く閉ざされるような感じがして、また記憶が途切れた。
次に目を覚ました場所は、自分の病室だった。
さっきよりは随分と意識はマシになっている。体はまだ動かないし、動いちゃダメなんだが。
「美乃梨……」
「あ、晃。起きた?」
「うん……まだちょっとぼんやりしてる感じはするけど、大丈夫」
「三時までは動いちゃダメだって。足を立てるのも禁止ね。六時からは体を横にしても良いって」
事前に説明を受けてはいたけど、やっぱり全く動けない時間があるのは苦痛だな。
お尻のところに穴が空けられているから、自分の体重で止血するために動いてはいけないそうだ。
「うーん、なんかトイレに行きたくなってきたな」
「え、本当に? 尿道カテーテルが入ってて、ベッドの下に尿が溜まってるよ? 」
そういえば、動けないから尿道カテーテルで過ごすか尿瓶にとってもらうか、どっちが良いかと聞かれたんだっけか。
手術中には尿道カテーテルを入れなきゃいけなかったから、そのまま付けておいて貰った方が楽だと思った。トイレに行きたくなる度に看護師さんを呼んで、お世話してもらうのは嫌だったしな。
尿道カテーテルは気にならないという人が多数なんだろうが、俺は何故か常に尿意がある感じだ。
でも尿瓶にする方がイヤだから、このまま我慢しよう。
ふと見ると、手に取った点滴のルートへ、血液が落とされていた。これは俺自身の、事前に採取していた血液だろう。
「骨髄液は、もう渡したのかな」
「私は会ってないけど、手紙と一緒に持って行って貰ったって坂下さんが言ってたわ。形岡県は遠いから、届くのは夕方くらいでしょうね。明日の移植日には間に合うわよ」
「うん」
どうか俺の骨髄液が、無事に少年の元に届きますように。
少しするとその坂下さんがやってきて、労いと礼の言葉をくれる。患者側のコーディネーターと看護師に、間違いなく骨髄液と手紙を託したと言ってもらえてホッとした。
その人達と話をしたかったな。少年がどんな子か、どんな状況なのかを聞いてはいけないから、会わせては貰えなかったんだろうけど。
少しすると担当の先生も回って来てくれて、お尻に四箇所の穴を開けて採取したと教えてくれた。場合によっては六箇所開けると言っていたけど、四箇所で済んだみたいだ。
まぁそれは表面上の話で、骨には何十箇所も挿して骨髄液を取っているわけだが。どっちもそのうち回復するらしいから問題はない。
喉が少し痛いというと、人工呼吸器をつけたせいだから、しばらくすれば治ると言われた。
「先生、水を飲みたいんですが……」
「水分は、二時になってから一口飲んでみましょう。それで気分悪くならなければ、その三十分後に少し量を増やして飲んでみます。問題なければ、三時から普通に飲んで貰って構いませんよ」
うわぁ、ちゃんと飲めるのは順調に行って今から二時間後か……。
飲めないと思うと、余計に喉が渇く気がするから不思議だ。点滴もしているし、水分が足りなくなる事はないはずなんだが。まぁなるべく気にしないように努めよう。
今のところ手足の痺れはなさそうだと伝えると、先生はホッとした様子で病室を去って行った。坂下さんにも、もう大丈夫だからと伝えて帰ってもらう。
美乃梨は帰る前に、スマホや雑誌を枕元に用意してくれた。
「じゃあ私も帰るけど、何かあったらすぐに電話してね」
「分かった、ありがとう美乃梨」
「ううん、お疲れ様、晃。ゆっくり体を休めてね」
俺に後遺症等が認められなくて、安心したんだろう。美乃梨は来る時とは全く違った足取りで家へと帰って行った。
しかし、動けないというのは予想以上に大変だな。体勢を変えられないのはしんどいし、喉の乾きもやっぱり気になる。
動けないし、水も飲めないのならいっその事、眠って時間を過ごしてしまった方がマシそうだ。
ちょうど良い具合に、雑誌を読んでいたら少し眠くなってきた。朝のうちにあれだけ眠っていたのに、まだ麻酔がまだ残っているのかな。それとも眠気と麻酔は関係ないんだろうか。
俺はバサッと雑誌を枕の隣に置くと、また目を瞑った。
さっきまではブラックアウトって感じだったけど、今度は夢を見たからただの睡眠だったんだろうな。
目を覚ますと、病室が暗くなっていた。
スマホで時間を確認すると、午後五時を過ぎた所だ。結構寝られたようだな。
三時を過ぎたから足は立てても大丈夫なはず。体勢を変えるのはまだダメだが。
しかしずっと同じ体勢で寝ていると体がバキバキ言い出しそうだ。少し足を曲げると、少しだけ楽になった。早く体を横に向けたい。
今度はバッチリと目を覚ましたけど、病室は暗くて何もできない。かと言って、自分では電気をつける事さえも出来なかった。
雑誌も読めないなぁ……。
どうしようか悩んだけど、ナースコールを押して看護師さんを呼び、電気をつけてもらった。
喉が渇いた事を知らせて、小さな紙コップに一口だけの水を飲ませてもらう。
午後六時になると、俺は早速体勢を変えた。
お尻のあたりというか、腰のあたりというか、その辺に鈍い痛みを感じる。痛み止めを貰って飲み、お茶のペットボトルを冷蔵庫から取り出して枕元に置いてもらった。普段は簡単に出来る事でも、いちいち頼まなきゃいけないのは気が引けるし面倒臭い。寝たきりっていうのも大変なもんなんだな。
尿道カテーテルは、やっぱり入れておいてもらって正解だった。電気をつけてもらうのもペットボトルを取ってもらうのも気を使うのに、排尿の世話までさせたら気を使うどころの騒ぎじゃない。
まぁそれは俺の場合であって、尿道カテーテルが怖い人もいるだろうから、好きな方を選べば良いと思うが。
今日は絶食だから、水分以外は何も取れない。その水分も、水かお茶だけだ。
流石にお腹が空いてきたけど、明日の朝まで我慢だな。
変な時間に寝てしまったのもあって、夜は中々眠れなかった。雑誌を読んでも飽きてきた。他にする事はないし動けないし暇だ。家にいると、何だかんだとやる事があるんだが。
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