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雷神編
10.あんたの思い通りになるはずだ
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雷神はなんと言っていいかわからずに、フェルナンドの顔を見つめる。そのフェルナンドは眉を潜め、悲痛な面持ちで言った。
「嬉しい気持ちはあるんだ。アリシアが普通の女の子のように、お前に恋をしてくれて。……だがこの家の主としては、アリシアにはストレイアの将と結婚して、世継ぎを産んでほしいと思ってる」
そこまで聞いて、雷神は頷いた。彼の言いたいことがわかったのだ。
まるで男を目指すかのように成長したアリシア。自分の納得行く地位に上り詰めるまで、結婚など考えもしなさそうな娘が、フェルナンドには不安の種だったのだろう。
彼からすれば、アリシアがトップに上り詰めるより、早く結婚して世継ぎを産んでほしいに違いない。
だが残念ながら、アリシアが好きになった人物はストレイアの将ではなく、トレジャーハンターだった。
「別に、アリシアが望むんであれば、相手がストレイアの将じゃなくても構わないんだ」
「大丈夫だ、フェルナンド。俺はアリシアに手を出すつもりはない」
否定される前に、雷神は自らそう切り出した。
「やはり、お前はこの地に留まる気はない……そういうことだな」
「そうだ。それに、俺はアリシアにそういう感情は抱いてないからな」
自身の言葉なのに、胸に棘が刺さるのを感じる。
もう一年もすれば、この近辺の遺跡は調べ終えるだろう。そうすれば、この地に留まる意味はない。
フェルナンドが危惧しているのはそこだ。もしこの地にいると宣言するなら、フェルナンドも喜んで迎え入れてくれたに違いないだろう。
雷神は、この家に婿として迎え入れられる姿を想像して、首を振った。
コムリコッツの古代遺跡は世界各地に散らばっている。一生かかっても周りきれるかわからないのだ。コムリコッツの謎を、秘術を、すべてを知り尽くしたい。
そこまで考えて、雷神は自嘲した。友人を殺した秘術を、まだそこまで追い求めている自分に。いや、だからこそ雷神は、友人の死を無駄にしないためにこだわるのかもしれないが。
「心配しなくていい。俺はあと一年で出て行くことになるし、そうすればアリシアもそのうち職場恋愛でもするだろう。いずれはあんたの思い通りになるはずだ」
「来年のアシニアースにはいないのか。そう宣言されると寂しいなぁ。もうちょっと、ここにいる気はないのか?」
「フェルナンド、俺を追い出したいのかそうじゃないのか、どっちだ」
「いやー、はっはっは! もちろん、俺達の家族としていてくれる分には、一向に構わないんだがな!」
それは、アリシアの兄という立場として、家にいてほしいということだろう。
(家族──兄、か)
しかしアリシアが兄として見られないなら、雷神は邪魔な存在でしかない。深みにはまる前に、早くここを出た方がいいかもしれない。
雷神は、アリシアの微笑みとキスを思い返して、それを押し潰すように目を瞑った。
「……すまんな、ロクロウ」
フェルナンドから謝罪の言葉が紡がれ、雷神は口の端を吊り上げた。
「なにを謝る? アリシアやあんたたちがどんな考えを持っていようと、俺の行動は変わらない」
「……そうか。なら、いいんだ」
その後、フェルナンドは溜め息を吐きそうになったのか、豪快に笑っていた。
雷神は悲しい笑い声を聞きながら、本一冊分軽くなった荷物を持って、その場を離れた。
「嬉しい気持ちはあるんだ。アリシアが普通の女の子のように、お前に恋をしてくれて。……だがこの家の主としては、アリシアにはストレイアの将と結婚して、世継ぎを産んでほしいと思ってる」
そこまで聞いて、雷神は頷いた。彼の言いたいことがわかったのだ。
まるで男を目指すかのように成長したアリシア。自分の納得行く地位に上り詰めるまで、結婚など考えもしなさそうな娘が、フェルナンドには不安の種だったのだろう。
彼からすれば、アリシアがトップに上り詰めるより、早く結婚して世継ぎを産んでほしいに違いない。
だが残念ながら、アリシアが好きになった人物はストレイアの将ではなく、トレジャーハンターだった。
「別に、アリシアが望むんであれば、相手がストレイアの将じゃなくても構わないんだ」
「大丈夫だ、フェルナンド。俺はアリシアに手を出すつもりはない」
否定される前に、雷神は自らそう切り出した。
「やはり、お前はこの地に留まる気はない……そういうことだな」
「そうだ。それに、俺はアリシアにそういう感情は抱いてないからな」
自身の言葉なのに、胸に棘が刺さるのを感じる。
もう一年もすれば、この近辺の遺跡は調べ終えるだろう。そうすれば、この地に留まる意味はない。
フェルナンドが危惧しているのはそこだ。もしこの地にいると宣言するなら、フェルナンドも喜んで迎え入れてくれたに違いないだろう。
雷神は、この家に婿として迎え入れられる姿を想像して、首を振った。
コムリコッツの古代遺跡は世界各地に散らばっている。一生かかっても周りきれるかわからないのだ。コムリコッツの謎を、秘術を、すべてを知り尽くしたい。
そこまで考えて、雷神は自嘲した。友人を殺した秘術を、まだそこまで追い求めている自分に。いや、だからこそ雷神は、友人の死を無駄にしないためにこだわるのかもしれないが。
「心配しなくていい。俺はあと一年で出て行くことになるし、そうすればアリシアもそのうち職場恋愛でもするだろう。いずれはあんたの思い通りになるはずだ」
「来年のアシニアースにはいないのか。そう宣言されると寂しいなぁ。もうちょっと、ここにいる気はないのか?」
「フェルナンド、俺を追い出したいのかそうじゃないのか、どっちだ」
「いやー、はっはっは! もちろん、俺達の家族としていてくれる分には、一向に構わないんだがな!」
それは、アリシアの兄という立場として、家にいてほしいということだろう。
(家族──兄、か)
しかしアリシアが兄として見られないなら、雷神は邪魔な存在でしかない。深みにはまる前に、早くここを出た方がいいかもしれない。
雷神は、アリシアの微笑みとキスを思い返して、それを押し潰すように目を瞑った。
「……すまんな、ロクロウ」
フェルナンドから謝罪の言葉が紡がれ、雷神は口の端を吊り上げた。
「なにを謝る? アリシアやあんたたちがどんな考えを持っていようと、俺の行動は変わらない」
「……そうか。なら、いいんだ」
その後、フェルナンドは溜め息を吐きそうになったのか、豪快に笑っていた。
雷神は悲しい笑い声を聞きながら、本一冊分軽くなった荷物を持って、その場を離れた。
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