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アリシア編
24.私がいてもお邪魔ねぇ
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次にアリシアがアンナに会えたのは、オルト軍学校が冬季休暇に入ってからのことだ。
年明けにようやく休暇が取れたアリシアが玄関に入ると、そこには見たこともない男の靴が置いてあった。
娘に会えると喜び勇んで帰ってきたアリシアは、リビングの扉を勢いよく開けると、すでに帰ってきているアンナに向かって声を張り上げる。
「ばばーーん! 新年おめでとー!! ……あら、グレイ」
なぜかそこには見上げるほど大きくなったグレイが立っていた。ずっと会っていなかったが、その優しげな瞳と金髪ですぐにわかった。
一瞬驚いたものの、最終的にはやはりそうなったのかとアリシアはニヤリと笑う。
「ようやく来たのね。遅かったじゃない」
「ようやく来ました。おめでとうございます」
「お帰りなさい、母さん。新年おめでとう」
ぴたりと寄り添って立つ二人を見て、アリシアは顔を綻ばせた。
「おーおー、二人とも、大人びた顔しちゃって。うふふ。玄関の靴、誰かと思ってたのよ。あなたで安心したわ、グレイ」
アンナの冬季休暇の前半はもう終わっている。
普段は誰も住んでいないこの家がピカピカに磨かれているということは、しばらく二人はこの家で過ごしたのだろう。
「で、あなたたちいつ結婚するの?」
「ぷっ」
そう聞くと、「言うと思った」と二人が仲睦まじく顔を寄せ合って笑っている。どうやらすでにプロポーズはされていて、アンナも大人になった時には結婚したい旨を伝えてくれた。
「母さん、私、グレイと結婚するわ」
そう言った娘の笑顔が眩しくて。少し鼻の奥がツンとする。
(若いっていいわね……。でも、これは私がいてもお邪魔ねぇ)
アリシアはみんなで昼食を食べている時に、ふと思い立った。せっかくの休暇だ。コムリコッツの遺跡に行ってみよう、と。
それを二人に伝えて帰る用意をしていると、アンナが少し寂しそうに声を上げた。
「ほんとにもう行っちゃうの?」
「ええ。どのみち休みは二日しかなかったのよ。あなたもめでたくパートナーを得たし、私も一日、好きに過ごさせてもらおうかしらね。前から興味あったのよ、コムリコッツの遺跡」
「母さん、遺跡は初めてなんだから、遺跡の中で迷わないでよね……」
失礼ねー、とアリシアは腰に手を当てた。アンナにはなぜか、たまに子ども扱いされることがある。アンナの方が、子どもであるにも関わらず。
アリシアは心配そうにこちらを見てくるアンナとグレイを見て、ビシッと言ってやった。
「あなたたち、オルト軍学校の隊舎暮らしよね。本当は今すぐにって言いたいところだけど、十八になったらさっさと結婚して、ここで一緒に暮らすといいわ。家は誰も住んでないと傷んじゃうし、母さん、この家は売りたくないのよ」
「いいの? ここなら軍の施設も王宮も近いし、すごく助かるけれど」
「もちろんよ。たまに邪魔なのが帰ってくるけど、それでよければね」
「邪魔だなんて。しばらく家を建てる金なんかないし、助かります」
アンナとグレイは顔を見合わせて喜んでいる。そんな顔を見られると、アリシアも嬉しい。
もう再興させる気はないとはいえ、ここはたくさんの思い出が詰まった大切な家だ。
「じゃあまたね。二人とも、元気でやりなさい。グレイ、アンナのこと、頼んだわよ」
「もちろん」
その返事を聞いて、アリシアの心はどこか浮かれたまま、用意をするために王宮に与えられた一室に戻ってきた。
遺跡に行くための荷物をうきうきと詰めていると、当たり前のようにジャンが入ってくる。そして荷造りしているアリシアを見て、少し首を傾げた。
「筆頭、家に帰ったんじゃ?」
「それが、アンナはパートナーと一緒にいるもんだから、邪魔したくなくて戻ってきちゃったわ」
「パートナーって……彼氏?」
「うーん、もう婚約者みたいなものよね。時が過ぎるのは早いわねぇ」
「婚約者……やるな、アンナ」
「ロクロウの娘ですもの!」
アリシアはえっへんと胸を張って答えた。私の娘、と答えられないところが少し情けなくはあったが。
年明けにようやく休暇が取れたアリシアが玄関に入ると、そこには見たこともない男の靴が置いてあった。
娘に会えると喜び勇んで帰ってきたアリシアは、リビングの扉を勢いよく開けると、すでに帰ってきているアンナに向かって声を張り上げる。
「ばばーーん! 新年おめでとー!! ……あら、グレイ」
なぜかそこには見上げるほど大きくなったグレイが立っていた。ずっと会っていなかったが、その優しげな瞳と金髪ですぐにわかった。
一瞬驚いたものの、最終的にはやはりそうなったのかとアリシアはニヤリと笑う。
「ようやく来たのね。遅かったじゃない」
「ようやく来ました。おめでとうございます」
「お帰りなさい、母さん。新年おめでとう」
ぴたりと寄り添って立つ二人を見て、アリシアは顔を綻ばせた。
「おーおー、二人とも、大人びた顔しちゃって。うふふ。玄関の靴、誰かと思ってたのよ。あなたで安心したわ、グレイ」
アンナの冬季休暇の前半はもう終わっている。
普段は誰も住んでいないこの家がピカピカに磨かれているということは、しばらく二人はこの家で過ごしたのだろう。
「で、あなたたちいつ結婚するの?」
「ぷっ」
そう聞くと、「言うと思った」と二人が仲睦まじく顔を寄せ合って笑っている。どうやらすでにプロポーズはされていて、アンナも大人になった時には結婚したい旨を伝えてくれた。
「母さん、私、グレイと結婚するわ」
そう言った娘の笑顔が眩しくて。少し鼻の奥がツンとする。
(若いっていいわね……。でも、これは私がいてもお邪魔ねぇ)
アリシアはみんなで昼食を食べている時に、ふと思い立った。せっかくの休暇だ。コムリコッツの遺跡に行ってみよう、と。
それを二人に伝えて帰る用意をしていると、アンナが少し寂しそうに声を上げた。
「ほんとにもう行っちゃうの?」
「ええ。どのみち休みは二日しかなかったのよ。あなたもめでたくパートナーを得たし、私も一日、好きに過ごさせてもらおうかしらね。前から興味あったのよ、コムリコッツの遺跡」
「母さん、遺跡は初めてなんだから、遺跡の中で迷わないでよね……」
失礼ねー、とアリシアは腰に手を当てた。アンナにはなぜか、たまに子ども扱いされることがある。アンナの方が、子どもであるにも関わらず。
アリシアは心配そうにこちらを見てくるアンナとグレイを見て、ビシッと言ってやった。
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「いいの? ここなら軍の施設も王宮も近いし、すごく助かるけれど」
「もちろんよ。たまに邪魔なのが帰ってくるけど、それでよければね」
「邪魔だなんて。しばらく家を建てる金なんかないし、助かります」
アンナとグレイは顔を見合わせて喜んでいる。そんな顔を見られると、アリシアも嬉しい。
もう再興させる気はないとはいえ、ここはたくさんの思い出が詰まった大切な家だ。
「じゃあまたね。二人とも、元気でやりなさい。グレイ、アンナのこと、頼んだわよ」
「もちろん」
その返事を聞いて、アリシアの心はどこか浮かれたまま、用意をするために王宮に与えられた一室に戻ってきた。
遺跡に行くための荷物をうきうきと詰めていると、当たり前のようにジャンが入ってくる。そして荷造りしているアリシアを見て、少し首を傾げた。
「筆頭、家に帰ったんじゃ?」
「それが、アンナはパートナーと一緒にいるもんだから、邪魔したくなくて戻ってきちゃったわ」
「パートナーって……彼氏?」
「うーん、もう婚約者みたいなものよね。時が過ぎるのは早いわねぇ」
「婚約者……やるな、アンナ」
「ロクロウの娘ですもの!」
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