【異世界恋愛】あなたを忘れるべきかしら?

長岡更紗

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アリシア編

61.私も出席するの!?

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「ところで、どうして私たちを呼んだの? その子は誰?」

 アンナが当然の疑問を口にし、アリシアはその問いに答える。

「この子はルティー。水の書を習得できた、唯一の子よ」
「ようやく見つかったのね」
「ええ。でも、見ての通りちょっと怯えちゃって……みんなでわいわいと和やかな雰囲気を作ってほしいのよ」
「なるほど。それで堅苦しい言葉はなしってわけね」
「そういうこと」

 ふとルティーを見ると、最初よりは体の震えは治まっていた。フラッシュやアリシアよりも体の大きなグレイには怯えていないようだ。グレイは動物に好かれるという特異体質があるというし、子犬のようなルティーは安心できたのかもしれない。
 アンナはルティーに自己紹介し、積極的に話しかけてくれている。アンナとマックスが中心となって続く会話を、アリシアは少し輪を外れて見ていた。
 しばらくそうしていると静かに執務室の扉が開き、アリシアはそちらに視線を向ける。

「アリシア様」
「ルーシエ。どこに行ってたの?」
「少しこちらへ」

 アリシアは皆にその場を任せて、そっと部屋を出た。廊下を少し歩いたところでルーシエが振り返る。

「今、彼女の家に行って参りました」
「彼女って……ルティー?」
「はい。両親に事情を説明し、入隊の許可も得られました」
「相変わらず仕事が早いわねぇ……その調子で彼女も説得してよ」
「それはアリシア様のお仕事です」
「あなたが説得しても同じじゃない」
「いいえ、それでは彼女が軍入りしても長続きしないでしょう。彼女にとって絶対的な存在が必要なのです」

 自分にとってのレイナルド王だろうかとアリシアは考える。彼女は軍に興味があるようには思えないし、そんな存在になるのは骨が折れそうだ。

「うまくいくかしら」
「色々と彼女のことを調べて参りました。これから私がする提案を、アリシア様がすべて受け入れて下さるだけで万事うまくいきます」
「なにかしら、怖いわね」
「部屋に戻りましょう。そこで説明いたします」

 アリシアはルーシエに、全幅の信頼を置いている。彼に策があるなら、すべてを受け入れるつもりはある。基本的にルーシエは、アリシアが極度に嫌がることはしないのでその辺は安心していいだろう。ただしちょっとした嫌なことなら強引に押し進められる場合もあるので、今回はどうだろうかとドキドキしながら執務室に戻った。
 中に入ると、雰囲気はすでに和やかになっていた。アンナがルティーに話しかけ、マックスがうまく話を聞き出し、ジャンはそれにチャチャを入れ、グレイが笑いながらフォローをしている。
 ルティーにも少し笑顔が見られて安心したが、こちらに気付いた瞬間、彼女の顔が強張ってしまった。それを見てアリシアは苦笑いを浮かべる。

(こんなに怯えられてるのに、絶対的な存在になんてなれるのかしら……)

 自分ではどうしようもないと悟ったアリシアは、すべてをルーシエに任せることにした。そのルーシエが、一歩前に出て話しかける。

「アンナさんとグレイさんもいらしたんですね。お二人にも参加していただきましょうか」
「参加……? 協力できることならなんでもするけど……」
「では三日後にある、シウリス様の成人を祝う宴に出席をお願いいたします」
「宴に? でも、その時私たちは……」

 グレイとアンナは、その宴に警備騎士として参加する予定のはずだ。ドレスにテールコートなど、考えもしていなかっただろう。

「大丈夫です。トラヴァスさんあたりに警備の交代をお願いしましょう。私も補佐しますし、問題はないはずです」
「それはいいんだけど、どうして私たちがそのパーティに?」
「将来的なことも含めて、ですかね。もちろんメインはアリシア様ですが」
「ええ!? 私も出席するの!?」
「当然です」

 アリシアはその宴に参加するようシウリスから言いつかってはいたのだが、辞退していたのだ。若い時分ならまだしも、この年で着飾るのは気が引けて。

「うーん、悪いけど私は……」
「アリシア様」

 鋭く名前を呼んだルーシエが、チラリと視線だけを一瞬ルティーに向けた。アリシアが彼女を確認すると、ルティーは憧れの眼差しでこちらを見ている。先ほどまでの怯えていた目は、すでにどこかに行ってしまっていた。

「……わかった、参加するわ」
「ありがとうございます」
「でも私はアンナのようにパートナーはいないし、どうしようかしらね」
「誰でも好きな人をお連れ下さい。私は警備に入るので行けませんが」

 そう言われて、アリシアは三人の男を見た。

「グレイは連れて行けるわけもないし……マックスは……」
「すみません、筆頭。俺は辞退します」
「結婚したばかりだものね。仕方ないわ。となると……」

 視線の先には、エロビームをこれでもかと発しているジャンの姿。

「俺でよければ行くよ、筆頭」
「……そう? じゃあ、お願いしようかしら」
「決まりですね」

 すかさずルーシエが決定を下し、にっこりと微笑む。そして今度は彼は、ルティーに視線を合わすために膝を折った。

「もしよろしければ、あなたも宴を見にきませんか?」
「……え!! いいんですか!?」
「遠くから見るだけになると思いますが、それでもよければ」
「で、でも私みたいな普通の子どもなんか……」
「ドレスはこちらで用意しましょう。さながら舞台女優が着るような、素晴らしいドレスを」

 ルーシエがそう言うと、ルティーはモゾモゾモゴモゴと手足を動かしながら、「ありがとうございます」と嬉しそうに礼を言っていた。
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