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02.クリストフ様と歩いています。
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天気もよく、暖かな昼下がりの光が、クリストフをキラキラと輝かせている。
そんな憧れの彼が今、スヴィの隣で歩いている。
かああぁああああっっこいいいいいいい!!
クリストフ様、かっこ良すぎるーー!!
身悶えしそうになるのをなんとか押し殺し、それでもやはりチラチラと顔を何度も確認してしまった。
なんという整った顔立ち。そして引き締まった体型と、ほどよい筋力。
普段接している筋骨隆々なだけの騎士たちとはわけが違う。同じ男とは思えないほどのこうごうしさ。
神だ。もうクリストフは神に違いない。
神は普段、何をしているのだろうか。
「タピオヴァラ商会には、どのような御用で行かれるんですか?」
これくらいの世間話なら構わないだろうと、スヴィはドキドキしながら話しかけた。するとクリストフは嫌な顔ひとつせず答えてくれる。
「仕事ですよ。僕はランディスから来たんですが、実家が昔ながらの家具職人でして。うちの商品をタピオヴァラ商会さんが気に入ってくださり、商談に入るところなんです」
劇団タントールの団員は、実はプロではない。昼間は他に仕事を持っている人たちの集まりなのだ。いわゆるセミプロというやつである。
スヴィが前に勤めていたディノークス騎士隊の班長も、騎士の傍ら劇団タントールの太陽組で舞台に立っていた。その班長を冷やかしてやろうと、同僚と一緒に行った演目で、主役を張っていたクリストフに釘付けになってしまったのだ。
「なるほどなるほど、家具職人さんなんですね」
「技術はもっぱら兄が受け継いでまして、僕は営業のようなものです」
この顔と物腰で営業にこられたら、きっと誰だってイチコロだろう。
スヴィも、十万ジェイアの家具だろうが、百万ジェイアの家具だろうが、借金してでも買ってしまうに違いない。
彼の家の家具を買えば、もっとお近づきになれるだろうか。
「あの、今度ランディスの街に行く機会があれば、そちらに寄らせてもらいたいなぁ……なんて! いや、もちろん家具を買うためにですよ?!」
「え? あ、ありがとうございます……? でもこちらにお住まいなら、ここで買った方がよろしいかと思いますが。タピオヴァラ商会が仲介してくれると思いますので」
「ですよねー!!」
お近づきになりたいあまり、とんでもないことを口走ってしまった。クリストフは若干引いてしまっているように見える。
バカなことを言ってしまったと後悔していたら、クリストフは優しく目を細めた。
「でも、もしランディスの街に来ることがあれば、タントールという劇場に来てくれたら嬉しいです。僕はそこで舞台俳優をしていまして」
「知っています!! クリストフ様、ですよね!!」
くわっと彼の名前を出すと、クリストフは驚いたように目を丸めた。
「あれ、僕のこと、知ってたんですか?」
そして、照れたように頭を掻きながらキラキラとした笑顔を見せてくれる。
スヴィは鼻血が出そうになるのをグッとこらえて、こくこくと頷いた。
「はい、実は……クリストフ様の大ファンなんです!! あ、握手してくれませんか?!」
「え、本当に? 嬉しいなぁ」
ニコッと音が出そうなほどの太陽の笑みで、手を差し出してくれるクリストフ。
スヴィはその手をガシッと両手で掴み取った。
あああ、クリストフ様と握手を……!!
夢……これは夢?!
「ちょっと君、大丈夫?」
「き、君じゃなくて、スヴィと言います! ぜひ、スヴィとお呼びください!」
「スヴィちゃん?」
小首を傾げるように言われると、一瞬で頭が沸騰するように熱くなった。
クリストフ様が、クリストフ様が、その美声で私の名前を呼んでくれるなんて……!!
「ありがとうございます、ありがとうございます! もう幸せで死にそうです!!」
「いやいや、死なないでよ? 大袈裟だなぁ」
あははと照れ笑う顔に抱きつきたくなる。
騎士が通報されるなんてあってはならないことだから、絶対にしないが。
「あ、もしかしてスヴィちゃんって、公演のたびに観に来てくれてる?」
「はい! クリストフ様の所属している太陽組の公演には、必ず!」
「じゃあ、あの帝都騎士服を着ている観客って、スヴィちゃんだったんだ」
クリストフにそう言われて、今度はスヴィが目を丸める番だった。
薄暗い観客席で、識別してもらえているとは思っていなかった。嬉しくて感激し過ぎて、もう泣きそうだ。
「これからも僕とタントール太陽組をよろしくね、スヴィちゃん」
「はい! これからも絶対に観に行きますーっ!」
「あ、ここだね。タピオヴァラ商会」
気づけば、タピオヴァラと書かれた看板の前まで来ていた。
なんでもっとタピオヴァラ商会は遠くないんだと文句を言いそうになったが、着いてしまったものは仕方ない。
「じゃあ、ありがとう。おかげで時間に間に合ったし、楽しかったよ」
「こちらこそ、憧れのクリストフ様とお話しできて嬉しかったです。あの、次の公演も頑張ってください! 応援、してますっ」
両手に拳を作ってグッと訴えると、クリストフはやはり太陽のような笑顔で手を振り、タピオヴァラ商会の中に入っていった。
そんな憧れの彼が今、スヴィの隣で歩いている。
かああぁああああっっこいいいいいいい!!
クリストフ様、かっこ良すぎるーー!!
身悶えしそうになるのをなんとか押し殺し、それでもやはりチラチラと顔を何度も確認してしまった。
なんという整った顔立ち。そして引き締まった体型と、ほどよい筋力。
普段接している筋骨隆々なだけの騎士たちとはわけが違う。同じ男とは思えないほどのこうごうしさ。
神だ。もうクリストフは神に違いない。
神は普段、何をしているのだろうか。
「タピオヴァラ商会には、どのような御用で行かれるんですか?」
これくらいの世間話なら構わないだろうと、スヴィはドキドキしながら話しかけた。するとクリストフは嫌な顔ひとつせず答えてくれる。
「仕事ですよ。僕はランディスから来たんですが、実家が昔ながらの家具職人でして。うちの商品をタピオヴァラ商会さんが気に入ってくださり、商談に入るところなんです」
劇団タントールの団員は、実はプロではない。昼間は他に仕事を持っている人たちの集まりなのだ。いわゆるセミプロというやつである。
スヴィが前に勤めていたディノークス騎士隊の班長も、騎士の傍ら劇団タントールの太陽組で舞台に立っていた。その班長を冷やかしてやろうと、同僚と一緒に行った演目で、主役を張っていたクリストフに釘付けになってしまったのだ。
「なるほどなるほど、家具職人さんなんですね」
「技術はもっぱら兄が受け継いでまして、僕は営業のようなものです」
この顔と物腰で営業にこられたら、きっと誰だってイチコロだろう。
スヴィも、十万ジェイアの家具だろうが、百万ジェイアの家具だろうが、借金してでも買ってしまうに違いない。
彼の家の家具を買えば、もっとお近づきになれるだろうか。
「あの、今度ランディスの街に行く機会があれば、そちらに寄らせてもらいたいなぁ……なんて! いや、もちろん家具を買うためにですよ?!」
「え? あ、ありがとうございます……? でもこちらにお住まいなら、ここで買った方がよろしいかと思いますが。タピオヴァラ商会が仲介してくれると思いますので」
「ですよねー!!」
お近づきになりたいあまり、とんでもないことを口走ってしまった。クリストフは若干引いてしまっているように見える。
バカなことを言ってしまったと後悔していたら、クリストフは優しく目を細めた。
「でも、もしランディスの街に来ることがあれば、タントールという劇場に来てくれたら嬉しいです。僕はそこで舞台俳優をしていまして」
「知っています!! クリストフ様、ですよね!!」
くわっと彼の名前を出すと、クリストフは驚いたように目を丸めた。
「あれ、僕のこと、知ってたんですか?」
そして、照れたように頭を掻きながらキラキラとした笑顔を見せてくれる。
スヴィは鼻血が出そうになるのをグッとこらえて、こくこくと頷いた。
「はい、実は……クリストフ様の大ファンなんです!! あ、握手してくれませんか?!」
「え、本当に? 嬉しいなぁ」
ニコッと音が出そうなほどの太陽の笑みで、手を差し出してくれるクリストフ。
スヴィはその手をガシッと両手で掴み取った。
あああ、クリストフ様と握手を……!!
夢……これは夢?!
「ちょっと君、大丈夫?」
「き、君じゃなくて、スヴィと言います! ぜひ、スヴィとお呼びください!」
「スヴィちゃん?」
小首を傾げるように言われると、一瞬で頭が沸騰するように熱くなった。
クリストフ様が、クリストフ様が、その美声で私の名前を呼んでくれるなんて……!!
「ありがとうございます、ありがとうございます! もう幸せで死にそうです!!」
「いやいや、死なないでよ? 大袈裟だなぁ」
あははと照れ笑う顔に抱きつきたくなる。
騎士が通報されるなんてあってはならないことだから、絶対にしないが。
「あ、もしかしてスヴィちゃんって、公演のたびに観に来てくれてる?」
「はい! クリストフ様の所属している太陽組の公演には、必ず!」
「じゃあ、あの帝都騎士服を着ている観客って、スヴィちゃんだったんだ」
クリストフにそう言われて、今度はスヴィが目を丸める番だった。
薄暗い観客席で、識別してもらえているとは思っていなかった。嬉しくて感激し過ぎて、もう泣きそうだ。
「これからも僕とタントール太陽組をよろしくね、スヴィちゃん」
「はい! これからも絶対に観に行きますーっ!」
「あ、ここだね。タピオヴァラ商会」
気づけば、タピオヴァラと書かれた看板の前まで来ていた。
なんでもっとタピオヴァラ商会は遠くないんだと文句を言いそうになったが、着いてしまったものは仕方ない。
「じゃあ、ありがとう。おかげで時間に間に合ったし、楽しかったよ」
「こちらこそ、憧れのクリストフ様とお話しできて嬉しかったです。あの、次の公演も頑張ってください! 応援、してますっ」
両手に拳を作ってグッと訴えると、クリストフはやはり太陽のような笑顔で手を振り、タピオヴァラ商会の中に入っていった。
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