25 / 35
第2章
その24
しおりを挟む
メイとリョウは2人仲良く帰って行った。
俺はその後ろ姿を呆然と見送っていた。
「どういう事?朝倉君!」
物凄い勢いで雪村さんは俺に訊ねてきた。
「……そんなの…俺に聞かれても」
「まぁ、まぁ雪村---落ち着けって。とりあえず、社に戻って終業後に話しようぜ」
吉澤主任は雪村さんを宥めながら、俺や他のメンバー全員に指示を出して帰る準備を始めた。
その事に俺は感謝しながら、とりあえず今は何も考えないようにしようと仕事に集中した。
仕事が終わった後、俺は吉澤主任と雪村さん2人に引っ張られて、会社の近くにある行きつけの居酒屋へとやって来た。
奥の座敷を陣取ってメニューを注文し、酒と食べ物がやってきてから雪村さんが口火を切った。
「で?……何でメイちゃんとリョウが付き合ってる訳?朝倉君、あなた何してたのよ!」
怒った様な呆れた様な口調で言い、雪村さんは俺を見ている。
そんな事言われても……
俺が答えないので、雪村さんはハァーと溜息をついた。
「どうせ、何も言ってないんでしょ?朝倉君、言わないと伝わらないよ?」
「……もう、手遅れですよ」
俺は手にしていたビールを一気に飲み干した。
そんな俺に、主任がぼそっと呟いた。
「---そうかな?手遅れでも言った方が良い事ってないか?お前、後悔しないのか?」
その言葉に俺も雪村さんも、主任の方を見た。
「確かに言った後、気まづくなるかもしれないけど、もしそうなったらそうなったで、諦めもつくだろう?」
確かにそうだけど……
「このまま、2人の仲の良い姿を友達として見続けるか?---それとも玉砕して清々するか?その時は俺達がやけ酒付き合ってやるよ……なぁ?雪村」
主任はそう言うと雪村さんの方を見た。
「そうね……告白してみないとどうなるのか解らないんだから、言ってみれば?玉砕したら私達が奢ってあげる」
玉砕前提なんですか?結局……
俺は少し落ち込んだ。
今日は2人が奢ってくれると言うので、有り難く奢って貰らう事にした
少しだけ上機嫌で帰る途中、俺の携帯が鳴った。
誰だ、今頃……
表示された着信相手の名前を見ると---美樹だった。
「……お前、何時だと思ってんだ?」
「はぁ?電話に出ない兄貴が悪いんでしょ!今日、何回かけてると思ってんの?!」
美樹……お前って、いつも元気だな…
「で、何の用なんだ?」
「あ、そうだ---兄貴!五月ちゃん、家に連れて来てよ」
「無理!」
俺はすかさず答えた。今の状況でメイと一緒に帰れる訳ない。あいつだって、俺と行く理由も義理もないし。
「何で?お母さんに五月ちゃんの話をしたら、すっごく会いたがって、『大樹、連れて帰って来てくれないかしら』って言ってるんだよ」
「母さんに言っておけ---麻生も俺も仕事が忙しくて帰る暇なんてないって」
俺の言葉に美樹は黙りこんでいる。
「……美樹?」
「---解った。お母さんにはそう伝えとく」
不貞腐れた様な声で、美樹はボソボソと返事をすると電話を切った。
俺はフッと溜め息をつくと携帯をしまい、家へ向かって歩き出す。
何か疲れた……とりあえず、明日は休みだしゆっくり眠ろう……
そんな俺の願いは、儚く消える事になる。
俺はその後ろ姿を呆然と見送っていた。
「どういう事?朝倉君!」
物凄い勢いで雪村さんは俺に訊ねてきた。
「……そんなの…俺に聞かれても」
「まぁ、まぁ雪村---落ち着けって。とりあえず、社に戻って終業後に話しようぜ」
吉澤主任は雪村さんを宥めながら、俺や他のメンバー全員に指示を出して帰る準備を始めた。
その事に俺は感謝しながら、とりあえず今は何も考えないようにしようと仕事に集中した。
仕事が終わった後、俺は吉澤主任と雪村さん2人に引っ張られて、会社の近くにある行きつけの居酒屋へとやって来た。
奥の座敷を陣取ってメニューを注文し、酒と食べ物がやってきてから雪村さんが口火を切った。
「で?……何でメイちゃんとリョウが付き合ってる訳?朝倉君、あなた何してたのよ!」
怒った様な呆れた様な口調で言い、雪村さんは俺を見ている。
そんな事言われても……
俺が答えないので、雪村さんはハァーと溜息をついた。
「どうせ、何も言ってないんでしょ?朝倉君、言わないと伝わらないよ?」
「……もう、手遅れですよ」
俺は手にしていたビールを一気に飲み干した。
そんな俺に、主任がぼそっと呟いた。
「---そうかな?手遅れでも言った方が良い事ってないか?お前、後悔しないのか?」
その言葉に俺も雪村さんも、主任の方を見た。
「確かに言った後、気まづくなるかもしれないけど、もしそうなったらそうなったで、諦めもつくだろう?」
確かにそうだけど……
「このまま、2人の仲の良い姿を友達として見続けるか?---それとも玉砕して清々するか?その時は俺達がやけ酒付き合ってやるよ……なぁ?雪村」
主任はそう言うと雪村さんの方を見た。
「そうね……告白してみないとどうなるのか解らないんだから、言ってみれば?玉砕したら私達が奢ってあげる」
玉砕前提なんですか?結局……
俺は少し落ち込んだ。
今日は2人が奢ってくれると言うので、有り難く奢って貰らう事にした
少しだけ上機嫌で帰る途中、俺の携帯が鳴った。
誰だ、今頃……
表示された着信相手の名前を見ると---美樹だった。
「……お前、何時だと思ってんだ?」
「はぁ?電話に出ない兄貴が悪いんでしょ!今日、何回かけてると思ってんの?!」
美樹……お前って、いつも元気だな…
「で、何の用なんだ?」
「あ、そうだ---兄貴!五月ちゃん、家に連れて来てよ」
「無理!」
俺はすかさず答えた。今の状況でメイと一緒に帰れる訳ない。あいつだって、俺と行く理由も義理もないし。
「何で?お母さんに五月ちゃんの話をしたら、すっごく会いたがって、『大樹、連れて帰って来てくれないかしら』って言ってるんだよ」
「母さんに言っておけ---麻生も俺も仕事が忙しくて帰る暇なんてないって」
俺の言葉に美樹は黙りこんでいる。
「……美樹?」
「---解った。お母さんにはそう伝えとく」
不貞腐れた様な声で、美樹はボソボソと返事をすると電話を切った。
俺はフッと溜め息をつくと携帯をしまい、家へ向かって歩き出す。
何か疲れた……とりあえず、明日は休みだしゆっくり眠ろう……
そんな俺の願いは、儚く消える事になる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる