水芭蕉

尊命

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約束

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拘束されている女は2人の騎士に引き摺られていき、
入れ違いの様に慌てて駆けてくる王と思われる男と大勢の騎士達
全ての者が跪き頭を垂れた
「この度は、息子を、セシルを助けて頂き、ありがとうございます。」
人の王は静かに目を伏せそう言った。


「よい。我は別にこの子供を助けた訳では無い。たまたま池を見つけて休息を取っていたらそなた等が騒ぎ出し、あの女が池に唾を吐いたから制裁のついででこの子供を拾っただけじゃ。」
そう言いながらシュルシュルと手の中にココを戻し、
ほれ。と近くにいた騎士に子供を渡すと背中を叩く。
ゲボっと飲んでいた水を吐かし、背を摩る。
すると目を覚ました子供は周りを見渡し、私を視界に映すと「ぁっ...ありがとうございます」と言葉を続けたが、一瞬眉を寄せた。しかし一瞬の事ですぐに表情を戻す。
「...なんじゃ」
「...」
「何か言いたいのであろう?」
「っ」
「言わないで後悔する覚悟があるならば何も聞かん。だがな、本心を隠すつもりなら一瞬でも顔に出さないことじゃな。ほれ、言うてみよ」
「、す、水神様はっ」
「セシルっ!」
何か言おうとした子供を王が止めるが、
「よい。申せ」
その制止を私が制止する。

「......水神様は、何故何もかもっ朽ちてしまってからお姿を現したのですかっ!!街には水が無く脱水で亡くなる者がたくさんおりました!雨が降らないからっ作物が育たなくて餓死する者もおりますっ!そのせいで暴動も起きておりますっ何故!どうして!こんなに無慈悲な事をっ!!あなた様は神でしょうっ!!たくさんの者があなた様に祈りを捧げました!なんでっ今になってっ、もっと、もっと早くっ...」
顔を歪ませ悲痛に呟く子供。


「...いつの世も、人は勝手だのう。」


「っ!!」
鋭い目をこちらに向ける子供。


「分からぬ者たちだのう...我は今まで何もして来なかった。
天地の恵みも災いもこの地が呼吸してるだけの事。
人間の為に神が動いてくれると何故思う?
人に出来ぬ事が神の役割だと何故思う?
自分の手で出来ぬ事を何故他人が出来ると思う?
何故望む?
そなた達は神が怒ると災いが起きると言うが、そう信じた神に何故怒る?
何故そなた達は神を崇めながら神を意のままに操ろうとする?
なんと傲慢なのじゃろう?
神たちがそなた達のその邪な気持ちに気付かないと何故思う?
そんな邪な気持ちの者を何故救ってくれると思うのじゃ。
我には不思議でならんよ。お前達人間が。」
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