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約束
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しおりを挟む「私は諦めませんよ」
そう言って微笑んだセシルの顔が瞼の裏に焼き付いている。
あれから何度セシルから求婚されたであろうか。
あれから何度セシルと笑いあったであろうか。
……あれから何十年経ったであろうか…
ベッドに横たわり微笑む老人の男性。
お互いにもうすぐだと分かっている。
「嘘つきめ」
あの頃と変わらぬ顔で意地悪く笑う私
「長生きしたと思うけどなぁ」
困ったように笑うシワシワの顔。
だけどもあの頃と同じ様に眉を下げて笑う
「我の方が長生きだったのう」
「そうだね」
クスクスと笑う私達。
窓から夜空を見上げて
「そなたの夜空のような髪も白くなってしまったな」
ふふっと私が笑うと
「あなたと同じ色でしょ?」
と笑う老人。
「ふふっそうじゃな」
私は微笑み老人の手をとる。
窓の外を見ると丁度、夜が明け陽の光が射し込んでくる
穏やかな笑みを浮かべて冷たくなった老人を見つめ
私は涙を一筋流した。
決して結ばれる事は無かったが、セシルは深く愛してくれた。
大きな愛で包んでくれた。
その愛に答えられない、答えてはいけないこの想いをセシルも解ってくれていた。
言えなかった……言いたかった
「愛してるわセシル」
冷たくなったセシルの唇にキスを落とす。
セシルは王になるはずだったのに愛している人が居ると弟のシエルに王位を譲り、独身を貫いた。
なんと深い愛情だったのだろう。
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