8 / 16
2
しおりを挟む
マシューが声のする方に顔を向けると、角の無い一際大きなトナカイがウインクして言った。
「ハーイ!あたし、ルドルフ4世、すんごい名前でしょ?でもさルドルフって由緒ある名前だけど何かしっくりこないのよぉ。だからルディって呼んでくれる?あんたイケメンじゃない。ま、人間の顔なんてどれも一緒だけどね。それでそれで──」
「待って!えっと、ルディ」
ルドルフ4世と名乗ったトナカイはおしゃべりが大好きなのか、放っておくとずっと話し続けてしまいそうな勢いがあった。
それにマシューは僅かに違和感を感じてもいたので、ルディのお喋りを中断させた。
「そーよールディ!一発で覚えてくれてサンクス!お利口さんね」
ルディは上から目線でまたウインクした。
間を空けるとお喋りが始まってしまう。
「君は雄なの?雌なの? 」
慌てて質問を捻り出す。
「やーねー。そんな野暮な質問」
ルディはブルンと首を振って他のトナカイ達に目配せした。
「ルディは雄でもないし~雌でもな~い ~心は雌で、身体は雄~~最強の~~~~トナカイ~~最強の~~おネエ~~~~」
他のトナカイ達が素敵なハミングで教えてくれる。
普段から練習してるのだろうか。
「そういう訳なの。分かった?マシューちゃん。ルドルフは雄の名前だからしっくりこないのよぉ」
ルディには角がない。
冬期に角が生えているのは雌だから確かに雄だ。
但し、それは目に見える部分に過ぎない。
ハートは雌なのだ。
「最強のトナカイだって?もしかして君はあの、伝説の赤鼻のトナカイ、ルドルフの子孫? 」
「そうよぉーーでも、あたしの鼻は平凡な黒。先祖の威光で輝きたくないわ。あたしにはあたしの強さがある。雄の逞しさと雌の優しさを持つトナカイは間違いなく少数派よ! 」
少数派と言われると確かに貴重な感じがする。
マシューの心が揺れた。
曾祖父のソリを引いたのは赤鼻のトナカイことルドルフ1世だ。
それにしても最強なのに売れ残っているのは何故なのだろう。
「あんた、正直者ね。心の声が丸分かりよ。あたしの勢いとノリに付いていけない臆病者が多いだけ。まあ、スケールが小さいのね」
分かり易く言うとお喋りでハイテンションだから他の合格者達はひいてしまったという事だろう。
マシューは迷った。
「今回が始めてでしょ?サンタやるの。なら、あたしにお任せよ。あたしを選べば今ならコーラス隊もおまけで付いてくるわよ。お得よう」
どうやら、この強烈に個性的なトナカイを選ぶと素敵なハミングを奏でるトナカイ達までセットで付いてくるらしい。
期間限定のように言っているが本当は常にそうなんじゃないのか。
だがマシューはおまけという特典に弱かった。
今、小屋にいるのはルディとコーラス隊で6頭、それ以外のまともで大人しそうなトナカイ達は9頭で合わせて15頭。
ルディとコーラス隊以外の9頭の中から6頭を選ぶ事も出来るが、3頭があぶれる形になってしまう。
「おまけ……」
「おまけよ。おまけ!何故ってあたしは最強のトナカイだから。一頭でホントはソリを引けちゃうの。そこにコーラスまで付いてくるんだから迷う事ないでしょ? 」
グイグイと自分を売り込んでくる。
「最強……」
個性が強すぎる気もするが、一頭でソリを引けるなんて凄い。
彼女、いや彼、彼女か彼に決めるべきなのか。
「迷ってんの?あんた、そういえばマシュー・クローバーって名乗ってたわね。ジョセフの曾孫?なら迷う事ないわ。あたしの父は寡黙で、祖父はあたしと同じでおしゃべりで陽気。初代ルドルフは弱気。弱気なアンタとあたしなら息がピッタリな筈よ」
確かに、マシューは押しに弱かった。
「オーケー。分かった。君に決めたよ」
「Yeah!そうと決まれば自己紹介!名付けてルディの親衛隊!レディファーストHere we go! 」
いきなりラップが始まった。
「始めはサーシャ、助ける者Yo。あなたを助け導く者Yo。サポートじゅうYo。迷っちゃダメYo。見失うな方向。Yoチェケラッチョ」
「お次はレベッカ。固めなチームワーク。あたしは輪を結ぶ調停役!ルールは遵守でプレゼント。素早く届ける聖しこの夜! 」
「俺はルーカス、光を運ぶイル・ドープ
(キテる奴)!ノエルに響かすクールなラップ。希望で道を照らすぜワッツアップ」
「俺はダンカン、褐色の戦士。余裕で利かせるぜタイトなエッジ。クルー(友達)のレペゼン(代表)。ググるなエンジン。迷うな突き進め、止めんなエンジン」
「最後はエイダン、チームのバイブス(情熱)。パワーとエネルギーこそ俺のバイブル!燃やすぜソウル!点すぜキャンドル!いつでも呼べよ。俺はインダハウス(ここにいる)」
「HEY!Yeah!HEY!Yeah!走りは上等!ノリもサイコー!息もピッタリの俺達最強!俺達選べばノーダウト。ルディのクルー、抜群にill(カッコいい)サイコーのskill!ルディはクールでご機嫌なスマイル!今日からお前は俺達のマイメン(ダチ)」
何て多才なトナカイ達だ。
ラップも息が合っている。
何よりも、トナカイのラップを聞くのは生まれて初めてだった。
「ハーイ!あたし、ルドルフ4世、すんごい名前でしょ?でもさルドルフって由緒ある名前だけど何かしっくりこないのよぉ。だからルディって呼んでくれる?あんたイケメンじゃない。ま、人間の顔なんてどれも一緒だけどね。それでそれで──」
「待って!えっと、ルディ」
ルドルフ4世と名乗ったトナカイはおしゃべりが大好きなのか、放っておくとずっと話し続けてしまいそうな勢いがあった。
それにマシューは僅かに違和感を感じてもいたので、ルディのお喋りを中断させた。
「そーよールディ!一発で覚えてくれてサンクス!お利口さんね」
ルディは上から目線でまたウインクした。
間を空けるとお喋りが始まってしまう。
「君は雄なの?雌なの? 」
慌てて質問を捻り出す。
「やーねー。そんな野暮な質問」
ルディはブルンと首を振って他のトナカイ達に目配せした。
「ルディは雄でもないし~雌でもな~い ~心は雌で、身体は雄~~最強の~~~~トナカイ~~最強の~~おネエ~~~~」
他のトナカイ達が素敵なハミングで教えてくれる。
普段から練習してるのだろうか。
「そういう訳なの。分かった?マシューちゃん。ルドルフは雄の名前だからしっくりこないのよぉ」
ルディには角がない。
冬期に角が生えているのは雌だから確かに雄だ。
但し、それは目に見える部分に過ぎない。
ハートは雌なのだ。
「最強のトナカイだって?もしかして君はあの、伝説の赤鼻のトナカイ、ルドルフの子孫? 」
「そうよぉーーでも、あたしの鼻は平凡な黒。先祖の威光で輝きたくないわ。あたしにはあたしの強さがある。雄の逞しさと雌の優しさを持つトナカイは間違いなく少数派よ! 」
少数派と言われると確かに貴重な感じがする。
マシューの心が揺れた。
曾祖父のソリを引いたのは赤鼻のトナカイことルドルフ1世だ。
それにしても最強なのに売れ残っているのは何故なのだろう。
「あんた、正直者ね。心の声が丸分かりよ。あたしの勢いとノリに付いていけない臆病者が多いだけ。まあ、スケールが小さいのね」
分かり易く言うとお喋りでハイテンションだから他の合格者達はひいてしまったという事だろう。
マシューは迷った。
「今回が始めてでしょ?サンタやるの。なら、あたしにお任せよ。あたしを選べば今ならコーラス隊もおまけで付いてくるわよ。お得よう」
どうやら、この強烈に個性的なトナカイを選ぶと素敵なハミングを奏でるトナカイ達までセットで付いてくるらしい。
期間限定のように言っているが本当は常にそうなんじゃないのか。
だがマシューはおまけという特典に弱かった。
今、小屋にいるのはルディとコーラス隊で6頭、それ以外のまともで大人しそうなトナカイ達は9頭で合わせて15頭。
ルディとコーラス隊以外の9頭の中から6頭を選ぶ事も出来るが、3頭があぶれる形になってしまう。
「おまけ……」
「おまけよ。おまけ!何故ってあたしは最強のトナカイだから。一頭でホントはソリを引けちゃうの。そこにコーラスまで付いてくるんだから迷う事ないでしょ? 」
グイグイと自分を売り込んでくる。
「最強……」
個性が強すぎる気もするが、一頭でソリを引けるなんて凄い。
彼女、いや彼、彼女か彼に決めるべきなのか。
「迷ってんの?あんた、そういえばマシュー・クローバーって名乗ってたわね。ジョセフの曾孫?なら迷う事ないわ。あたしの父は寡黙で、祖父はあたしと同じでおしゃべりで陽気。初代ルドルフは弱気。弱気なアンタとあたしなら息がピッタリな筈よ」
確かに、マシューは押しに弱かった。
「オーケー。分かった。君に決めたよ」
「Yeah!そうと決まれば自己紹介!名付けてルディの親衛隊!レディファーストHere we go! 」
いきなりラップが始まった。
「始めはサーシャ、助ける者Yo。あなたを助け導く者Yo。サポートじゅうYo。迷っちゃダメYo。見失うな方向。Yoチェケラッチョ」
「お次はレベッカ。固めなチームワーク。あたしは輪を結ぶ調停役!ルールは遵守でプレゼント。素早く届ける聖しこの夜! 」
「俺はルーカス、光を運ぶイル・ドープ
(キテる奴)!ノエルに響かすクールなラップ。希望で道を照らすぜワッツアップ」
「俺はダンカン、褐色の戦士。余裕で利かせるぜタイトなエッジ。クルー(友達)のレペゼン(代表)。ググるなエンジン。迷うな突き進め、止めんなエンジン」
「最後はエイダン、チームのバイブス(情熱)。パワーとエネルギーこそ俺のバイブル!燃やすぜソウル!点すぜキャンドル!いつでも呼べよ。俺はインダハウス(ここにいる)」
「HEY!Yeah!HEY!Yeah!走りは上等!ノリもサイコー!息もピッタリの俺達最強!俺達選べばノーダウト。ルディのクルー、抜群にill(カッコいい)サイコーのskill!ルディはクールでご機嫌なスマイル!今日からお前は俺達のマイメン(ダチ)」
何て多才なトナカイ達だ。
ラップも息が合っている。
何よりも、トナカイのラップを聞くのは生まれて初めてだった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる