どこまで歴史的史料に基づいて書いてるのか 森蘭丸伝

春野わか

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 極めて短期間で決断されたように見える本能寺の変に駆り立てる動機を多くの人が求め過ぎて、黒幕説にまで発展してしまったのはドラマ的小説的に使える分かりやすい理由を求めてしまうからかなとも感じます。

 要は人の心は人が求めるように単純な答えだけで出来てないって事です。

 実際には長宗我部問題で、織田家での己の立場に不安や不満を感じたからが理由で良いのかもしれません。

 能の不出来に信長が激怒した事件は本当なのですが、蘭丸の仕事も記録されています。

 褒美の金子を幸若さんと梅若さんに渡す役です。
 大した仕事じゃないんですけど、梅若の不出来に激怒した信長は、幸若にもう一回舞うようにと命じます。

 菅屋長頼と長谷川秀一に行かせます。
 ここら辺りに総務か経理かという役割分担の細かさを感じてしまいます。

 ドラマだったら、当に他に人無きが如く全て蘭丸がやってそうですが、彼はやっぱり褒美を与える役な訳ですね。

 そういえば、蘭丸に一万石加増も本当です。
 理由は知りません。
 小説では真面目に実際の石高が足りなかったからという風にしてますが、実際は可愛いかったからかもしれません。
 またかよ....。

 余談ですが、蘭丸が貰った刀は不動行光だけではありません。
 刀を入れる証拠の空箱が残っています。

 何と!二本入りです。
 確かな信長からの折り紙付きだった筈です。

 ネットで調べた限りでは太刀と短刀で、備前友成と相州貞宗のようです。

 実は不動というのは不動明王とかが刀身に彫られてると皆不動と付けられてしまうのか、実は蘭丸が貰った刀は不動行光ではなく、不動明王とかが彫られた相州貞宗作だった可能性が見えてきてしまいました。

 刀に詳しい方のサイトでざっくり見ると享保名物帳は新旧二冊あり、古い方にはただ不動とだけ記載されているとのこと。

 焼失した刀編と損傷のない刀編があるようで、焼失して再刃された『不動』の記録があるのに、享保名物帳の損傷のない刀編に不動行光と載っているらしいです。

 本能寺で燃えた蘭丸所有の『不動』は確かにあるけれども、それが不動行光でなかった可能性も、空箱は語っているのかもしれません。

 もしくは、国宝級の名刀三本セット(太刀、腰刀、短刀)で貰ったのかも分かりませんが。

 どんだけ信長は理由無く蘭丸に物を与えれば気が済むのか!
 
 あっ!理由はきっと可愛ゆいからですね。

 島井宗室が本能寺にいた事を疑問視する声もあるようです。
 もう一人、博多の豪商仲間の神谷宗湛と一緒にいたという説もあったりなかったりです。

 神谷はともかく島井がいなかったとすると、本能寺に集められた茶器は一体?とか、ややこしい事になるのと、島井宗室はいたんじゃないの?と感じたので小説では定説通りで書いてます。

 本能寺に連れて行ったのが小姓衆ばかりで人数少ないから油断していたとか、手薄だったと思われがちな本能寺ですが、あくまでも上洛の道中の警護として考えるなら充分な人数ではないでしょうか。

 信長上洛時には信忠も都にいる事は分かってましたし、信長の馬廻りなどは後から都に入ってきていたようです。

 本能寺が囲まれた後、信忠の元に集まった兵は500から1000くらいいたらしいと考えれば、結構な人数です。

 警護の仕方が分宿という方法であるので、当然の事ながら大軍勢に囲まれる事など想定してなかったんだろうなと思います。

 だって光秀を味方と考えていたら、そこまでの人数必要ないですから。
 結果から見てしまうと、警護に必要な人数とんでもない数になってしまいます。

 明智軍一万以上いたので、それ以上の軍勢引き連れて都入りっておかしいですもんね。

 この小説では一才黒幕説は取ってないですが、光秀の尻を叩いたとしたら斎藤利三でしょうかね。
 長宗我部問題にも深く関わってますし。

 黒幕説を取らなかった理由は、この時代はLINEがないからです。
 後の章で書きますが、怪しい人物は沢山いるけど、犯行が可能な人間は限られてしまうからです。

 何か推理小説の犯人探しみたいで面白いですけど、犯人が光秀なのは歴史的に間違いないので。

 愛宕百韻の連歌が暗号とか。
 面白いですけど.....。

 現実的な条件をすっかり忘れて説ばかり突っ走っているようには感じます。

 本能寺に運び込まれた宝物の中で島井宗室がどさくさ紛れに持ち出した弘法大師真蹟千字文。

 取り合えず、何か持ち出した事は知ってました。
 そして、テレビの再現VTR とかだと、掛け軸になってたりするんです。

 こんな小道具、掛け軸でも屏風でもどっちでも良かったんですが、弘法大師真蹟千字文を調べていたら発見してしまいました。

 秘宝として現存していて、公開された事もあるようです。
 展覧会のポスターがあって、見てきた人の話によると500文字しかないそうです。

 それは、一双の屏風だったからとの事。
 なるほど!確かに掛け軸なら全部持ち出せても、屏風二つ持ち出すのは大変ですもんね。

 おかげで、小説にリアリティが生まれました。

 愛宕百韻の連歌を写した物がいくつかあって、記述ミスか少しずつ内容が異なります。

 花落つる池の流れをせき止めて となっていたり 水上まさる庭の夏山 となっていたり 天が下なる となっていたり。

 取り合えず、光秀の発句に気合いが入っていたとしても、他の連歌師さん達が光秀の企み気付いて、歌に込めたっていうのは、かなり????とは思います。

 企みを彼等にばらす意図が全く理解出来ないし、知ってたら上品に歌に込めて止めようとするとか有り得ないですから。

 光秀の家臣談によれば、一部の重臣達にさえ、ぎりぎりまで謀反の企てを伝えてないんです。

 光秀の顔に「俺、今度信長殺っちゃうよ!」と思いきり書いてあったのかもしれませんが。

 信長上洛時、出迎え無用と追い払い、献上品を受け取らなかったのは本当です。
 大分以前は本能寺の変の前日、公家と茶会をしたと解釈されていたようですが、今はただ茶を出しただけと変わっているようです。

 確かに茶を点てる人間、この日いませんからね。

 日食の話は本当のようです。
 わざわざ、この日を狙って公家を集めたのかと思ってしまいます。
 暦問題だけが話し合われた訳ではないにせよ、40人近い、しかも位高い殿上人が勢揃いしてます。

 はっきりいって会議ですよ

 
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