真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第一章

αへの恨み ①

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そう呪いを込めて確かに目を閉じ、死を待っていたはずだったのに。私は何故か知らない檻の中心で目覚める事となった。



「ここ、は…、」



暗い檻の中とはいえ、寒くはない。身体も何故か温まっていて、キョロキョロとして辺りを探っていると、何処かで扉の開く音がした。



コツリ、

コツリ、


こちらに向かって来るような靴の音がして振り返ると、そこには執事の姿をした男が立っていて。キョトンとしながらもその男を見つめる。

一体誰なのだろうか。

黒髪で片眼鏡をかけている執事服の男は、品定めをするような目で私を眺め、軽く息を吐く。





「…あ、の…、」

「おや、この奴隷Ωは喋れるのですね。」





ここは何処なのかと聞こうとしたその時、男は不思議そうに首を傾げながら私の言葉を遮った挙句、見下し発言をしたのだ。

初対面でこんな風に無礼な人は初めてだと思い、カチンときて眉を寄せると…。


コツリ、

コツリ、



「…これはこれはご主人様、」

「ああ。どうだ、新しい玩具の具合は…、」

「ええ、どうやらこの奴隷は口を聞けるようでして」

「それはそうだろう。コイツは貴族から捨てられた元姫様だ。健康でなければ困るだろう…?」




また奥からもう一つの足音が聞こえてきて、傍に立っていた執事服の男が素早く反応して、声を掛けた。

遠くから響いて来たのは獣と似た息遣いと、唸り声のように低いバリトンボイス。

その相手がテレビでしか見た事がない獣人だと気が付いたのは、あまり遅くなかった。




「…なかなか良い顔をしている。だが、まだ育ってはいないようだな。女にしてやらないとか…。」

「ご主人様が自ら手ほどきをなさると…?」

「ああ。それもいいだろう。」




少し経ち、檻の近くに現れたのは艶やかな黒毛を持つ、豹の獣人で。滑らかに尻尾を動かして私を見下ろしたその獣人は尖った歯を見せ、笑う。

二人が話している内容は少なくとも私を褒めるものではないと分かり、不安を感じていた。

褒めるというよりも、命の危険を感じる。

これから何をされるのかも理解が出来ていない歳で、檻の中に入ってきた獣人をただ見上げる。




「…Ωよ。名は、なんと言う?」

「…、言い、たくありません、」




顎を掬われ聞かれた事に顔を背けて拒否すると、パンと頬を叩かれた。

ギラリと射抜いた金色の目が、私を捕らえて離さない。

痛いけれど、レッスンが上手く出来なくて鞭打ちされた時よりはマシだ。




「…名は?」

「…」




獣人にもう一度名前を聞かれ、叩かれた頬が痛む中、頭の中で考える。

きっと貴族から捨てられたと分かっている時点で、名字は知れているだろうけれど、この口で自分の本名は教えたくない。

そう感じた時、頭の中に一つの名前が過ぎる。

それは、元の家にあった絵本の中の主人公。







「…ルビー、」

「ほう、お前の名はルビー…、そうだな?」

「はい…。」





物語に出てくるルビーは、可哀想な女の子。

でも最後は王子様が迎えに来て、幸せになれるお話。

だけど、この照らし合わせが後に私を苦しめる事になるなんて…。

この時の私は、思いもしなかったんだ。





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