真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第一章

Ωの脱出計画 ④

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「お前に初仕事だ。」





初めての仕事をする日。私はロビーにあるソファに腰を掛けているロウにこう言われた。

革靴を纏った足を揺らしながらこちらを見る獣から放たれたそれに、全身が凍りつく。

ここに来てから、まだ二ヶ月程度しか経っていなかった私にとってそれは恐怖以外、何でもなくて。12歳という若さで客を取らされるこの世の異常さに背筋が粟立ち、吐き気を催した。





「相手は獣人のα。身分は……」

「…」




あまりのショックさに、続けて放たれたロウの言葉も耳に入って来なかった。

相手の素性なんて、どうでもいい。

身分なんて聞いたって、私の得にもならない。でも獣人のαが私のお客様になった事だけは分かっていて、ひたすらに頭の中で絶望を繰り返す。

いろはを教えて貰っていたとしても、初仕事だと全て忘れてしまいそうだ。

それよりも、ただ、私は逃げたくて。

自分がこの世界にいる事への拒絶が酷く、吐きそうで。






「ルビー、顔色が良くないな。」

「…、」

「色々、教えてやっただろう。それをそのまま繰り返せばいい。」

「…、」






スカートを握り締める私を見たロウはそう言って不器用に頭を撫でる。

初めてされた行為に動揺して彼を見上げると、今度は安心をさせる為なのか、優しく抱き締められた。

トクン、トクン、と近くに感じる鼓動。だけど、少しも安心出来ないのは、私が彼を嫌っているから。

不愉快にしか思えないこの状況を周りの人間は普通の表情で見ている。








「…気持ちが固まったようだな。この部屋に客はいる。さあ、行ってこい。」

「…」





ぐっ、と涙を堪えて表情を変えると、ロウの身体が離れて手に何かを握らされた。

それは、ヒートを無理やり起こす事が出来る注射器と、この建物の中にある部屋の鍵だった。

トン、と背中を押された衝撃で前のめりになり、その力を利用して足を進める。

やるしかない。

そう、悟った。

どうせ逃れられない運命なら、今ここでやるしかないんだ、と。







「…どうも、気に入らないな。」

「ロウ様?」

「…なんでもない。各自の持ち場に戻れ」








歩き出した私に、一匹の黒豹が苦虫を噛み潰したような表情を向けていたとは知らずに……。


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