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第一章
復讐及び脱出への策略④
しおりを挟む「…ぁ、ぅ、」
目の前の扉をぶち破って現れたのは、あの日よりも美しさが増した灰色の狼だった。
施錠していたはずのそれが目の前に転がってきたのを呆然と見つめながら、冷めない吐息を漏らす。
ああ、見つかってしまった。
そう思うよりも先に動いたのは私の身体だけではなく、彼も同じで。一度瞬きをした後、床に映り込む二つの影がピタリと重なった。
爽やかな香りと共に運ばれてきたその人を夢中になって抱き締める。
会いたかった、と訴えているように全身が反応して、自分の目的も忘れてその胸板に擦り寄った。
けれど、痛いくらいの動悸は治まらず、さらに彼を求め始めている。
「…ルビー。」
「…んっ、んぅ、ゃ、」
まるで私に追い打ちを掛けるようにテノールの声が耳元で囁き、身体が大きく反応を示す。
この腕の中から今すぐにでも逃げなくちゃいけないのに、離れたくない。
離れたらいけないって全身が訴えている。
憎いαの腕の中なのに、この人だけは嫌だと思えない。
「…っ、」
本能に抗えず、ぼやけた頭の中で必死に考えていたら、ひとつの出来事が思い浮かんだ。
そうだった。
この人は私を、置いて行ったんだ。
三年前にこの館で会ったあの日に眠っている私を連れて行ってくれなかった人だ。
あれから毎日ロウに性教育を受けて、私はここまで何人ものの獣やαと交わった。
毎日が辛くて、憂鬱で、そんな運命に私を落とした張本人ではないか。
少しクリアになってきた頭で、大きな発情を起こしている身体に言い聞かせる。
信じてはいけない、この人はαだ。
絶対に、信じてはいけない。
「…っ、」
「…ルビー!!!何をっ、」
ブツッと、音が鳴る。
それはまだ治りかけだった指先を私が思いっきり噛んだ音だった。
冷静を保つ為、痛みを身体に与える事でこの場を乗り切ろうとしたのだ。
指先は凄く痛いし、口の中は血の味がするけれど、これで少しは自制が効くようになった。
「なんてことを…っ、」
「…っ、ぅ、」
「ルビー…っ、」
痛みに顔を歪める私を見た狼は心配そうに声を掛けながら抱き締める力を緩めた。
これなら、抜け出せそう。指は痛いけれど、これのおかげで目の前がハッキリし始めた。
視線が絡めばまた何かが起こる気がするため、目を合わせないようにして、そっと狼の腕に手を掛ける。
「俺から逃げられるとでも…?」
「…っ、」
「やっとお前を迎えに来れたんだ…っ、頼むから逃げるな…っ、」
けれど、狼は私が逃げようとした事に気付いたようで、また抱き締める力を強めてしまう。
その時縋り付くように言われた言葉も信じる事が出来ず、右から左に抜けていく。
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