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第一章
血の味を知った者②
しおりを挟む触れる寸前にあった手を一旦戻し、扉を見つめながら半歩後ろに遠ざかる。
この先には、何があるのだろう。
そもそも、獣をこんな場所に閉じ込めて彼は一体何をしているというのだろうーー…?
ギンさんの弱みに繋がるものなら、今後の復讐にも役立つかもしれない。
「…ふふっ。」
不穏な空気が漂う不気味な地下で、小さな笑い声が響き渡る。
殺し方を考えてみると、鼻が利く彼を毒殺する事は奇跡が起きない限り難しい。
私は密かにそう考えた。
それなら…。彼を騙した後に扉の奥に隠された獣を使い、不意を突いて殺せば良いのではないか。
恐らくこんな場所に閉じ込められた獣は彼に対して恨みや怒りを抱いているだろう。
ギンさんに対して恨みを抱いているのは私も同じ。こんな細腕ではトドメを刺すところまで持っていけないだろうから。
ならば、この先にいる獣にギンさんを瀕死に追い込んでもらえばいいとーー。
私はグッ、と口角を吊り上げ、目を半月のように歪ませながら扉を見た。
…そう。私がこの時感じたのは、扉の先にあるものに対する恐怖ではなく。子供の頃によく抱いた冒険心に近い感情である。
ああ、完璧だ。
最初にギンさんを殺して、次にロウを殺せば…。
残る最後は、私を捨てた“あの家”の者だけだーーーー。
何処までも愚かな私は頭の中で復讐する自分を思い浮かべ、ニタリと笑う。
「……ガルルルッ…、」
この先にいる獣が、何なのかも知らずに。
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