真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第二章

夢と現実の狭間②

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「…ほらほら、見て。この間ケーキも作ったの。
いちごがたっぷり乗ってて、ホイップも沢山使ったあま~いケーキ。」

「…、」

「ここに居たら、毎日美味しいスイーツとご飯が沢山食べられるわよ…?」





どうやら時雨さんはかなり家庭的らしい。

歯を食いしばって我慢をしていると携帯で撮った料理を見せて追い討ちを掛けられ、お腹がぐぅ~と音を立て、主張をする。

見せられたケーキの写真も凄く美味しそうで、危うく誘惑に負けそうになる。

駄目、ここで負けたら…。

餌付けされてギンさんが来るまで居座る事になる。





「ルビーちゃん、あーん」

「…っ、」




そう思い、良い匂いのする料理から目を逸らそうとしていた時だった。

天津飯をスプーンに掬った時雨さんに声を掛けられ、パカッと口を開けてしまう。

あ、しまっ…




「んっ、ぐぐ、」

「は~い、」




ハッとした時にはもう遅く、口の中には熱々の天津飯が入れられていた。

はふ、はふとしながらそれを咀嚼していると、逃がすまいと次のひと口も用意されていて。時雨さんを見ると、変わらず笑顔を浮かべている。

お、鬼だ…。



「どう?美味しいかしら」

「…」



その微笑みすらも今は悪魔に見えてしょうがない。

そういえば腕が使えない時、こんな風にギンさんに食べさせて貰ったっけ…。

ギンさんも私が嫌がっているのをお構い無しに笑顔で同じ事してきていた気がする。




「ほら、もっと食べないと…!」

「…、」

「…ルビーちゃん、どうしたの?」




ボーッと天津飯を見つめている私に、時雨さんが首を傾げて不思議そうに声を掛けてきた。

手料理を受け入れる気は全く無かったのに。一度食べさせられたらお腹が空いて空いて、しょうがなくて。口の中に広がった優しい味に涙も止まらなくて。




「うっ、…ううっ、」




気が付いたら涙が溢れていて、私のしゃくり上げる声が部屋に響いた。

きっと今、私は情緒不安定なんだ。

だからこんなにも悲しくて涙が止まらないんだ。

違う、嘘だーー。

本当は、あの人に会うのが怖い。

何を言われるのかが分からないから…。





「…ルビーちゃん、」

「うっうぅ、」

「大丈夫よ。ギンはルビーちゃん一筋だし、アイツに貴方以上に大切な人なんて居ないの。だから絶対に大丈夫よ…。」





時雨さんは硬い胸に私の頭を押し付け、優しい言葉を掛け続ける。

まるでお母さんのような言葉掛けに不安定な心が痛いくらいに反応して、涙の量が増した。

嫌い。

私を騙した時雨さんだって、嫌いなはずなのにーー。

今は自分がよく分からない。

不安定すぎる情緒を自分ではどうにも出来なくて、目の前にある胸板に抱きついて泣き続ける。


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