真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第二章

愛と復讐⑤

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再会した時から、よく泣く人だと思った。

とても綺麗な涙を流して、自身の優しさを表現する人だと思った。

けれど、私がその涙に触れる事は一度もなかった。

あの時はまだギンさんの事をよく思っていなかったから。




「…泣かないで」




ギンさんと同じように私も彼の涙を指先で拭うと、綺麗な顔が切なげに歪み、擦り寄ってくる。

繋がったままもう少し背を伸ばし、彼の頭も撫でると、大きな尻尾が嬉しそうにパタパタと動く。

綺麗な顔は涙を流して切なげなのに尻尾は嬉しさを表していて、とても忙しい人だと思った。




「ごめんなさい…。私の所為で…」




私は部屋が静かになったタイミングで、きっと悪化してしまったであろう彼の右手に触れ、ようやくその言葉を口にした。

けれど、上手く表現が出来ず、いくつか言葉が足りない状態になってしまう。



「……ああ、」



それで伝わったのか、ギンさんは涙で濡れた優しい瞳を私に向け、左手で抱き締めてくれた。

温かい感触を貪るように、私も彼の背中に手を回した。




「…良いんだ。初めから怒ってはいない。それにお前を全て受け止めると言っただろう?」




彼の優しいテノールが鼓膜を刺激して、私の目からさらにドバッと涙が溢れ出す。

彼を突き落とした瞬間から、心の何処かで罪悪感を抱いていた。

それを正当化する事で心を壊さないようにして、自分を保っていた。

今更謝ったところで…。

そう思っていたのに、彼は全てを優しく受け止めてくれる。





「ごめんなさい…っ、うぅ、うわぁっ、突き落としてごめんなさい…っ、」

「…良いんだ、」

「酷い事言っで…っ、ごめっなざ、」

「良いんだ、ルビー、」




一度飛び出した思いは止まらず、何度も彼に同じ事を叫ぶように伝えた。

その度に優しく受け止められて、心が徐々に救われていく。



「…うぅ、」




けれど、現実はそう甘くはなく。優しく抱き締められ、この人に甘えたいという気持ちを抱く中、心の底に存在する悪魔が笑う。



この男はお前を置いて行った。

裏切り者だ。

それなのに信じられると…?
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