真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第二章

愛と復讐⑦

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「……え?」



……次のページの内容を見た瞬間。力が抜けた手から手帳がストン、と音を立てて床に落ちた。



「…、」




これ、どういう事…?

その内容を信じられず片手で頭を抱え、少し考えるものの、答えは見つからない。

床に落とした手帳を拾い上げようと、椅子から立ち上がった時だった。




コンコン、



「っ!」



部屋の扉がノックされ、拾い上げようとして屈んだ姿勢のまま身体が硬直した。

何となく、気配で分かる。

…恐らく、この扉の向こう側に居るのはギンさんだ。

声を聞いていないのに彼だと分かるのは、正式に番になったからなのだろう。

会いたい気持ちと、心の準備がまだ出来ていないという状況が食い違い、返事をするのにも時間が掛かった。




「雅姫?」

「…、」




名前を呼ばれても返事が出来ず、ふと床に落ちたままの手帳を見やる。

読み終わったら返して欲しいと言われた手帳は、本当に今返すべきなのか…。この事実を本人に問うのにも相当の勇気がいる。

どうしよう…。

会いたい。

抱き締めて欲しいのに、どうしたらいいのか…。





「…ギンさん、」

「っ、良かった…、反応がないから心配した、今入って大丈夫か…?」

「う、うん…」






無視をし続けることも出来ず、扉の向こう側に居るギンさんに返事をすると、彼は酷く安心したように言葉を発した。

ギンさん、ごめんなさい…。

心の中で謝りながら床に落ちたままの手帳を手でベッドの下に隠し、見えないようにその場で座り込んだ後、部屋の扉がゆっくり開いた。





「朝から一人にしてすまなかった。少しやらなければならない事があったんだ、」





部屋に入って来たのは黒いスーツ姿のギンさんで、その身体からはお線香とお花の匂いがした。

何か、あったのだろうか…?

そう疑問を抱いた時、日記やメモに記されていた内容を思い出し、ゴクリと息を呑む。

ギンさんのお父さんとお兄さんは、もうこの世には居ない…。

それに、さっき読んだページに書いてあった事が本当なら、お母さんも…。

けれど、その内容はあまりにも悲惨すぎて、口にするのも恐ろしい。





「…お墓、参り?」

「…ああ。」





恐る恐る聞くと、彼は私を真っ直ぐ見つめて頷いた。

彼は、朝から家族のお墓に行ったのだ。

あれだけ酷い仕打ちを受けたのにも関わらず、お墓参りに行くなんて…。

一体、なんの意図があるのだろうか…?





「…泣いたのか?」






モヤモヤと考えていた時。近くで声がして、ハッと顔を上げれば、いつの間にかギンさんが側まで来ていて。

つい、優しく頬を撫でていた手を凝視してしまった。




「どうした、何かあったのか?」

「…、」

「寂しかったか…?」

「…っ、」




けれど優しく撫でられている内に、会いたかったという思いが溢れ出し、私は彼に夢中で抱き付いた。

会いたかった…。

ギンさんが私を本当に迎え入れようとしてくれた事実を知った為、もうこの気持ちに迷いはない。

すると、数秒経たずにギンさんも両手で抱き締め返してくれた。

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