プチ自給自足生活始めたら 何故か異世界の町に繋がった?

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異世界では薬草士、元の世界でネット古物商?

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俺の家の前で不動産会社のお姉さんが立ち尽くしている。
完全に固まっている。

今ならまだなかったことにして戻れるかもしれない。
そう思った途端、何を思ったのかシルバが
ロアンヌさんの腕の中から飛び出して
全力で駆け寄っていってしまった。・・・。

キャーとか言う悲鳴も聞こえる気がする。
天を仰いだ。もう無理だ、終わった。
言い訳が思いつかない。いいや、諦めるな!
考えろ、考えるんだ!
俺の引きこもり生活のために今こそ本気を出すんだ。
閃いた!よし、これで行こう!
・・・日本式の最上級のお詫びとお願いの姿勢だ。

もうちょっと近寄ったら地面に座るかなと思っていたら、

 「キャー、かーわいーーー!
  モフモフ最高ーーーっ!!」

・・・あれっ?
何かすっごい喜ばれてるんだけど?
いいのか?いいんだよな?良さそうだ!
異世界のことを話すのなら、今しかない!
この流れで勢いに乗せて全部ぶちまけてしまおう!

 「あ、不動産会社のお姉さん、
  実はですね、この子とかこちらのお姉さんとか
  こっちの女の子も異世界の人たちで・・」
 「ちょっと、鞍馬君!!
  あなた、変なお金手に入れたでしょ?
  あれはどう言うことか説明してもらわないと
  非常に不味い事になるわよ!!

  あー、この子かーわいーー!
  もうちょっと抱っこさせてね。
  エネルギー充填中~。癒されるぅ~。」

お姉さんは俺の言葉を聴き終える前に、一方的に話すと
シルバを抱きしめてエネルギーの補給を始めてしまった。
ロアンヌさんは分かるわ~、って言って頷いているけど
ココはほぇ~と言いつつ少し引き気味だ。

 「あ、あのですね?お姉さん・・」

 「その前に自己紹介させてくれる?
  って言うか、会ってからずっとだけど、
  工事の間も最後まで、私の名前一度も
  呼んでもらえた事ないんだけど
  まさか覚えてないんじゃないでしょうね?

  その顔は・・・はぁ、まあいいわ。
  私はあなたの趣味じゃなかったみたいね。

  さて、改めまして、
  初めまして、私はこちらの鞍馬君の家と
  税金などの維持費用の管理を任されております、
  貴船不動産の貴船さつきと申します。

  今度ともよろしくお付き合いのほど
  お願いいたします。」

 「あら、とても丁寧な挨拶ですわね。
  人族の貴族の方かしら。
  
  初めまして。
  私はカケル君と同じガルダホルンの
  冒険者ギルド所属で冒険者兼受付担当の
  ロアンヌと申しますわ。
  鬼人族ですので、力仕事もできますわ。
  こちらこそよろしくお願いしますわ。」

 「ココもカケルと同じ冒険者ギルド所属なのにゃ。
  討伐は苦手なのにゃ、薬草採取をして
  お金を稼いでいるのにゃ。
  ネコ獣人族だけど仲良くしてくれたら
  嬉しいのにゃ。」

ロアンヌさんは今までになく上品な挨拶を・・
はっ!殺気が!!い、いえ、いつも通りの挨拶をして
ココは少し緊張した感じで挨拶をしている。

 「えっと、貴船さん?
  あの、実はですね、・・というか、
  ここでは何ですね、家の中で話しましょうか。
  
  家に上がってもらっていいですか?」

 「そうね、お邪魔させてもらうわ。」

指紋認証で鍵を開けて、家の中に入ると
キッチンの前のテーブルに5人で腰掛けて
話をすることにした。
4人がけなのでシルバは俺の膝の上で
ちょこんとお座りしている。いい子だ。

家に入ってからすぐに、俺は自分で飲みたいのもあって
冷蔵庫からペットボトルのお茶を出した。
ココとシルバは開け方を知らないだろうから、
キャップを外してから渡した。

そこからはお姉さん、貴船さんに
さっきの草原の先にある異世界の話をした。

温かい感じのする壁があること、その先には
魔物の出る山が続いていること、その先に
ガルダホルンという洋風の町があること。
途中でギルドカードとそこから取り出せる
金貨、銀貨、銅貨を見せたり、亜空間収納や、
製薬のスキルを使って見せたりした。

途中で色々と驚きながらも、スキルの話の最後あたりは、
目を輝かせて聞いてくれていた。

 「うん、良く分かったわ。
  これだけの証拠を見せられて、
  信じない方がどうかしてるわ。

  もっと聞きたい事と、頼みたい事が出来たけど、
  先にここに来た要件を済ませましょう。

  結論から言うわ。
  鞍馬君、あなたはうちの会社のグループの  
  ネット古物商に勤務していることにしてくれないかな?
  そうしてくれると、万事上手く済ませる事が出来るの。
  いいかしら?いい感じね?

  昨日のネットバンクの振り込み金の件が問題なのよ。
  
  そうね、さっきの金貨、建前では古金貨の取引を
  ネット経由でして得た収入ということにしましょう。
  後付けで写真とか証拠をアップしておけば何とかなると思うわ。

  振込先であるガルダホルン冒険者ギルドは、
  相手のバンドルネームということにでもすれば何も問題ないわ。
  問題になるのは収入を得た側の鞍馬君だからね。

  
  うちの会社は京都の方に実家があって、
  そこで古物商も営んでいる店舗が実際にあるの。

  あなたはこの家の住所を古物商の営業所として登録して
  活動しているネット古物商ということにすれば、
  この先収入が続いても、年末調整も全部うちで出来るから
  煩わしい問題が一気に解決するわ。

  でも、そうね、その換金のスキルは出来るだけ
  使わないでくれると有り難いわ。
  ロアンヌさんの口座だけど、ここの支店名を
  お名前を借りてロアンヌ支店ということにして貰えると
  説明がつくのだけど、如何かしら?」

 「あ、俺は面倒な税金とかは全部お任せしたいので、
  全く異論ないです。」

 「私も名前を使ってもらえるのは嬉しいから
  いいのだけれど、換金スキルを使えないのは
  困るわ。ネット通販を気兼ねなく利用したいの。」

そうだよな、現金の日本円に換金できると便利なんだけどな。
そう思ってみたけど、そんなスキルは獲得できないみたいだ。

 「その点も少しは大丈夫かもしれないわ。
  実際にうちの従業員としてお給料を払う必要があるの。
  それをロアンヌさんの口座に振り込むわ。

  それの対価だけど、金貨や銀貨はダメだけど、
  さっき腰にさしてたような武器の類があるじゃない?
  それを実際にネット店舗で売ればいいのよ。
  そうすれば、合法的に日本円が獲得できるわ。」

 「そっか、実際に向こうで売れそうな商品を仕入れてきて
  こっちで本当に売ればいいのか。
  俺の亜空間収納が役に立つな。うんうん。」

 「それは有難いのだけど、いいのかしら?
  さつきさんには、かなり迷惑をかけているように
  思うのだけれど。」

 「大丈夫、私の会社にも利益は少し頂きますし、
  私も仕入れのために異世界に行かせてもらいますので、
  その体験ができるだけでもプライスレスの価値があるわ。」

 「えっ?途中で、魔物とかに襲われたりして危険ですけど?
  本気ですか?俺、守り切れるかどうか自信ないんだけど。」

 「ご心配なく、こう見えて私は薙刀の有段者なので、
  自分の身は守れると思うわ。
  魔物と対峙した経験なんてないから多分だけど。。」

 「あらあら、私も及ばずながら護衛につかせて貰いますわよ。
  一緒に行きましょうね。私達の町を紹介させて欲しいわ。」

薙刀かぁ、武器屋さんであったかなぁと思っていると、
ココとロアンヌさんが薙刀ってどんな武器?って聞いてきた。
ネットで探して形を見せると、二人してグレイブ!と言った。
確かにグレイブなら近い形状のものがあるかもしれない。
ココは武器屋さんの棚にあるのを見た事があるらしいので、
買えそうだ。

とりあえず、必要書類の記入をして無職の俺は
ネット古物商のロアンヌ支店長に就任することになった。
ロアンヌさんだけでなく、ココもネット通販を利用してみたいと
言い出したので、貴船さんの提案で、
ココの仕入れ品の販売額とロアンヌさんのお金を分けて
管理する帳簿をつけることになった。
帳簿があれば、一目瞭然だしいいよな。うんうん。


いつの間にかシルバが俺の膝の上で船を漕いでいた。
奥の4畳半に布団を広げて、その上で少し寝かせてやることにした。
夕方になってきたので、明日異世界に一緒に行く話になったけど、
貴船さんが泊めて欲しいなと言い出した。
ロアンヌさんとココと3人で奥の広間で泊まりたいそうだ。
二人にも同意をもらってとても嬉しそうだった。
女子会をしたいらしい。


じゃあ、俺は先に食事の用意をしようかなと思って、
いつもの指一本で済まそうと、冷蔵庫の中のものを漁り出したら、
貴船さんに怪訝な顔をされた。

 「ちょっと待って、鞍馬君。
  あなたまさか異世界から来てくれたお客さんに
  それを出すつもりなの?
  だめよ、ここはこっちの世界の家庭料理を
  味わってもらわないと。」

 「じゃあ、ご飯炊くのでレトルトカレーで。」

 「あり得ないわ!
  せめて作りましょうよ。
  ・・・お鍋とかフライパンはどこにしまってあるの?」

 「・・・ないです。」

 「えっ?本当にないの?
  フライパンなんて基本の料理器具よ?」

 「いや、電子レンジあれば十分なんで。
  大丈夫です。安心してください。」

 「全然大丈夫じゃないし、全く安心できないわ!

  よし、じゃあ、私が食材と一緒に買ってくるわ。
  ・・・となると包丁もまな板も調理器具どころか、
  まともな調味料もないのね?
  ・・・信じられないわ。。

  ちょっと待ってて。三十分くらいで戻るから!」

そう言うと貴船さんは軽自動車で山を下って行った。

俺の通販生活が脅かされそうな嫌な感じがした。
いーやーだー!調理器具使うような料理はイヤダァ!
冷凍食品はどんどん美味しくなっているんだ!
一人で調理するくらいなら、
こっちの方が味も安定しているし絶対いいんだ。

そうだ、調理器具類は貴船さんの持ってきた預かり品だ。
俺が使っちゃいけないものだ、そうだそうだ。
俺には2000Wの電子レンジがある。
頼むぜ相棒と電子レンジをペシペシしている俺の横で
ロアンヌさんとココが通販サイトを見てあれこれと
騒いでいた。



それから1時間弱経った頃、遅くなってごめーんと
言いながら貴船さんが戻ってきた。
大量の荷物を持って。。俺には黒船襲来に見えたよ。

そこからは狭いキッチンがより狭くなった感じがするくらい
忙しくなった。

購入して低温保存収納庫に入れていたお米を取ってきて、
洗ってから圧力IH炊飯器で早炊きを始めて、
貴船さんの指示のもとで、作業補助に専念しましたとも。
俺の家だけど、貴船さんのキッチンな感じになってたよ。

話してしまった秘蔵の串焼きの肉を提供して作った、
極太ネギの入ったお肉のスープと、焼き鮎のゆずおろしと
桜色のお漬物がテーブルに並んだ。
作っている途中でいい匂いがしていたからか、
シルバが目を覚まして周りをうろうろしていた。

ネギだけどシルバもココも問題ない食材だそうだ。
普通のわんこやニャンコとは違うようだ。
一緒に食べられて良かった。


美味しく頂いた後は、お風呂の時間になった。
先に女性陣3人で仲良く入ってもらうことにした。
俺とシルバは貴船さんが買ってきてくれた
水無月っていう和菓子を美味しく頂いていた。
甘くて最高だな。なんだか懐かしい味な気がした。

お風呂はココが毛が浮くのを気にしたようだけど、
これも貴船さんが買ってきてくれたネットの網で
掬えばいいからということで、3人で仲良く浸かったそうだ。
ロアンヌさんのスタイルの良さを二人して羨ましがっていた。
ちょっと想像してドキドキしたのは内緒。

俺とシルバも楽しく入れた。
シルバは洗われるのが嫌じゃないようで、
大人しく洗われてくれた。
頭から背中、尻尾のところまで毛が繋がっていたけれど
お腹周りは全然毛がなかった。
夏場は背中が暑そうだなと思った毛並みだった。

昨日はカイルさんに洗ってもらったそうだ。
怪我をした人の介助もしているみたいで、
洗うのが上手だったと言っていた。
大きめの風呂で二人してぷかーっと浮いて
しばらくのほほんとした時を過ごした。

お風呂から出たら、貴船さんが買ってきたかき氷器で
かき氷を作ってふるまっていた。
俺達もいちご味のシロップと練乳をかけて頂いた。

シルバがキーンとなったと言って少しうめきながらも
スプーンを離さず頑張って溶け切る前に食べていた。

ロアンヌさんとココはかき氷はないけれど、
この水無月に似た甘味がある、食べたことがあると言っていた。
京都の和菓子だけど異世界に似たものがあるとは意外だった。

その理由は、その後何となく分かった。
ロアンヌさんとココが順番に、
俺と貴船さんに色々な異世界の話をする中で、
千年くらい前に魔王を倒して世界に平和をもたらした
誰でも知っているという英雄の話を聞いて分かった。
その英雄の名は、九郎義経。源 義経その人だった。
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