プチ自給自足生活始めたら 何故か異世界の町に繋がった?

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武器に込められた想い

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異世界の街に入ってからの貴船さんの
ハイテンションぶりは酷かった。
今はギルドの受付でイケメンエルフの
カイルさんに詰め寄っている。

貴船さんの後ろに立つロアンヌさんの
揺らめくオーラに怯えているカイルさんが
何だかかわいそうだなと思ったけど、
巻き込まれるのは嫌なので見ない事にした。

薬草類の納品を先にしたいので、ココと
一緒にウサ耳のお姉さんの列に並んだ。
ちょっと期待して、前の人との会話に
聞き耳を立ててみたけど、
残念なことに語尾にぴょんはついていなかった。
ごく普通の話し方をするお姉さんだった。

 「あなたがカケルさんね?
  私はここで受付と鑑定の仕事をしている
  ネイルよ。よろしくね。

  昨日、ロアンヌ姉さんから色々珍しいものを
  分けて貰えたのよ。
  カケルさんのおかげで色々と快適になったわ。
  これからもロアンヌ姉さんのお買い物に
  協力よろしくお願いね。

  今日は薬草と丸薬の納品ね。ありがとう。
  丸薬は常に不足しているから特に助かるわ。
  じゃあ、預かっておくから、また後で入金に寄ってね。」

 「はい、こちらこそよろしくお願いします。
  あの、ちなみに何でロアンヌ姉さんと
  呼ばれてるんですか?」

 「私とロアンヌ姉さんは同じ孤児院育ちなの。
  いつもロアンヌ姉さんによくして貰っていたから、
  今でも、ううん、これからも私には姉さんなの。
  私ともお友達になってもらえると嬉しいな。」

 「えっ、いえいえ、俺なんかで良ければ、こちらこそです。
  俺のこと聞いて知ってる感じですか?
  だったら、また一緒に遊びに来てもらっていいですよ。
  大歓迎です。」

 「ほんと!嬉しいな。またロアンヌ姉さんと相談しておくわね。
  でも、私たち二人して一緒に休めないから。」

 「そうだったんだ。
  そうだ、もう一人の薬草採取専門の子と一緒に、
  この街で家を借りようと思ってるんで、
  住み始めたら遊びに来て下さい。」

 「あら、この街に拠点を持ってくれるの?
  嬉しいわ。

  なら、ここでも冒険者用の拠点になる家なら斡旋しているわ。
  あっちの食堂ホールの左奥のボードに、
  家の条件が書いてある紙が貼ってあるから、
  気になるのがあったら何枚か持ってきてくれると、
  専門の案内の人が一緒についていって見せてくれるわ。

  カケル君なら北門の近くの方がいいかもね。」

 「ありがとうございます。
  ちょっと行くところがあるので
  後でまた物件の紙も持って来ます。」

親切なネイルさんにペコリと挨拶をして、
ギルドを出たところで待っていた、
ココと貴船さんに合流した。

貴船さんの胸に抱かれてシルバがうとうとしていた。
お礼を言って、貴船さんからシルバを引き取って、
武器屋さんに向かった。

武器屋さんに入ると貴船さんは真剣な表情で
色々な武器や防具類を見ていった。
ココがあれこれと小柄な店員さんにお願いして、
貴船さん用の獲物を出してもらっていた。
先の刃の形状が色々違うのがあって、見ただけで、
切られたりしたら痛そうな感じがした。
その中で一際目立つのがあった。
何かの木の箱に入った、すごく高そうな感じがするものだった。

 「これは、この形は静型の薙刀だわ。
  何だろう、すごく惹かれる感じがするわ。

  すみません、これ持たせてもらってもいいですか?」

店員さんはちょっと考える感じになって、
変な言い方をした。

 「持つのはいいけど、自分をしっかりと持ってから
  覚悟をして持ってね。
  その武器には誰かの想いが強く込められているの。」

 「想い?呪いとかではなくて?
  どんなことになるんですか?」

 「命に別状はないわ。
  でも、そうね、持ってみるといいわ。
  これを渡しておくわ。」

店員さんは小さなハンカチのような布を
貴船さんの前のテーブルの上に置いた。

 「えっ?
  ありがたく使わせていただきます?

  では、ちょっと持ち上げて
  見せていただきますね。」

布に変な感じを受けながらも、
貴船さんは箱の中から薙刀を持ち上げた。
  
 「・・・」

貴船さんは俯いて静かに涙を流していた。
ものすごく疲れたような悲しい顔をして。

何か胸を裂かれるような想いが流れ込んできたそうだ。

 「それを手にしたらみんなそうなるわ。
  刃の部分の反りが少ないのもあって
  討伐向きの武器としては
  お勧めできないのよね。

  何か曰くがありそうなんだけど、
  鑑定にもかけられないのよ。
  買ってもらえるなら有難いけど。」

俺はスキルで何とかできるかもしれないと思い
買ってみることにした。

 「じゃあ、俺が買います。
  他にも見せてもらっていいですか。」

 「助かるわ、他にも買ってくれるなら
  値引きしてあげる。」

それから貴船さんは西洋風の甲冑一式や、
綺麗な宝飾のついた宝剣のように見えるものを数振り、
壁に飾っても良さそうな大振りの丸盾を数枚選んでくれたので、
まとめて購入した。
お値段は何と金貨80枚と高級外車が買えそうな額だった。
一度に売れるものではないから、
客引き用の意味合いもあるそうだ。

売れた分が手元に日本円として帰ってくるので
まぁいいかなと思った。

銀貨2枚分の小振りな盾をココが買っていた。
このくらいのサイズでも需要があるだろうからという
貴船さんのおすすめで。

全部を一度に運ぶのは無理そうだったけど、
店員さんはまとめて担ぎ上げていた。
お姉さんは、
 ドワーフ族だからこのくらい普通ですよ
と涼しい顔で言っていた。
両腕の力こぶが全然普通じゃなかったけど。。

とりあえず、ギルドで預かってもらうので
ということにしてギルドの解体場まで運んでくれた。

お礼にリュックの中から出すふりをして、
亜空間収納から小さな缶に入ったクッキーを手渡すと、
不思議な入れ物ね、ありがとうと言うとニコニコ顔で
お店に戻っていった。

さて、俺たち以外の人の気配がないことを
探知のスキルで確認して、スキルを使うことにした。
武器全部にまとめてかけてみることにした。

 (浄化回復)

何かが一瞬ふわっと立ち上ってきて、
俺の体の周りをぐるっと回って消えていった感じがした。
何かすごく懐かしいような悲しいような切ない気持ちが残っていた。
この想いがあの薙刀に残っていたものなんだろうなと思った。
きっと成仏できたんじゃないかなと思って、
目を閉じて冥福を祈ることにした。

その後、貴船さんにあの薙刀を
もう一度持ってもらったら、
何も感じなくなっていたようで、
嬉しそうに振り回し始めていた。
すごい速さで振っている。正確には加速していく感じだ。
空気を切るかまいたちができそうな振り方だなと思った。

 (ピロン
  真空斬りのスキルを付与できます。
  装備にスキルの付与をしますか?)

また、新しいスキルと思ったら、
付与ってなんだろう?ステータスから見てみると、
行使者が認める装備に特定のスキルを付与できるそうだ。
装備に付与されたスキルは、
その装備を使うものが使えるそうだ。
やってみるかな。
 
 (装備:白拍子の薙刀 に
  真空斬りのスキルが付与されました。)

 「わっ!!何今の声?何かスキルが付与されたって?
  来た?私にもスキルがきたの?」

 「あー、何かごめんなさい。
  その薙刀にスキルを付与できたみたいなんです。
  貴船さんじゃなくてごめんなさい。」

 「えー、ちょっとがっかりだわ。
  私もスキル欲しいなぁ。」

 「あ、でもその薙刀って雨乞いの舞とかを奉納する
  白拍子さんが使ってたものみたいですよ。

  あ、そうか。共有獲得できれば
  貴船さんもスキル獲得できるかも。
  俺もこの薙刀を触らせてもらっていいですか?」
  
 「そうだったわ、ロアンヌさんが言ってたわね。
  すごく強くて無双できそうなスキルがいいな。」

 「いやいや、異世界で何をする気なんですか?
  あっちの世界で売れそうな武器とか防具の
  仕入れに専念された方がいいと思いますけど。
  
  大体、この薙刀って雨乞いとかの神事に
  使われてたんじゃないかと思うから、
  討伐には使ってあげない方がいいと思うんですよ。」

そうだよな、薙刀だって戦闘用の武器として
打たれたものじゃなくて祭器のために打たれたものなら、
困っている人たちに恵みの雨をもたらす祭器本来の使い方が
嬉しいはずだよな。

 (ピロン
  祈雨の舞のスキルを獲得しました。
  共有獲得が可能です。
  共有しますか?)

きました、これなら喜ばれるいいスキルですね。
はいを選択してやり遂げた感に浸ろう。

 「あ、わっ!
  また、声が聞こえた!
  今度は共有スキル?
  これね?

  やった!ステータスが見れるわ!
  これで勝ったわ!

  ・・・あれっ?
  鞍馬君・・・雨が降るスキルって何?
  どうやって勝つの?」

 「いやだから、一体何と戦おうとしてるんですか?
  ちょっと戦いから離れて、ゆったりゆるゆると
  生きていくスキルの方が絶対いいですよ。

  いやー、いいスキルだった。
  今日はもうお腹いっぱいだな。

  さて、買う物買ったことだし、
  次はココの家兼俺と一緒に薬草研究できる拠点探しだな。」

貴船さんの全身からコレジャナイ感が溢れていたけど、
そっとしておいてあげようと思って離れようとしたら、
ガシッと肩を掴まれた。

買った武器の点検兼ねて私の薙刀の稽古に付き合って
とかいい笑顔しながら言われても、
ワンサイドゲームにしかならないから!
みるも無残に打ちのめされる未来が確定しているから!
稽古にもならないから見つめないでください。

恐ろしげなオーラを放っていた貴船さんを置いて、
ココとシルバを連れて物件情報がはってあるボードへ足を向けた。
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