無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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魔族の女王

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巨大大陸の北には、広大な磁鉄鉱の砂漠が
大陸の頭を押さえつけるかのように広がっている。

オアシスを取り囲むように魔族の国の難民のテントが立ち並んでいた。

 (強行軍で移動してきただけに民の数は少なく抑えられたな。
  この周りには水場はここだけだ。
  幸いにもとても十分とは言えん水量だ。
  ここはをやるか。
  一気に数を減らして魔王とやらを抑えるとしよう。
  あの程度で魔王とは片腹痛いわ。)

金髪で褐色の肌の美貌の持ち主は、緑色の瞳の奥に
暗い炎を揺らめかせていた。

立派なつくりのテントの前まで歩みを進めて
死刑宣告をするような冷たい声を放った。


 「魔王様、進言致したいことがあります。」

 「フィアーか、入れ。」

ナイフで切り裂くような鋭い声音が中から帰ってきた。

 「失礼致します。
  
  魔王様、早速ではございますが、申し上げます。  
  私に風魔法の使い手をお貸し頂ければ、
  あのオアシスの水量を増やして御覧に入れます。

  今のままでは数日と持ちません。
  早急に増やす必要がございます。
  危険は伴いますが、水は確実に手に入る算段でございます。」

魔族でも見ない褐色の肌の美女の緑の瞳を見据える、
銀髪からのぞく真っ赤な瞳が少し細まった。

 「うむ、危険を伴うか。
  滅びを待つよりはマシだな。
  思うようにやって見せよ。」

犠牲も辞さずという雰囲気を纏わせることに慣れているかの如く
冷ややかに即断したのは、人族の勇者に国を追われた魔族国の女王、
魔王カミュール・ジルバその人であった。
  
 「ご英断に感謝致します。では、早速手配にかかります。」

そう言い放つと颯爽と外に飛び出していった。

 (私もこのような体になっておらねば民のために一働き出来たものを。
  忌々しい。あの勇者どもの魔法障壁もミスリルの防具も貫通する攻撃で
  両足を失ってから身動きままならぬようになったわらわを
  臣下の者たちは見捨てることなく、このような辺境まで
  共に逃げ延びて来たまでは良かったのだがな。

  わらわのように動けぬものをここに捨て置き、西の龍神のお山の麓を
  目指して移動するよう命じるならこの手の結果を見てからにしよう。

  この怪我を負った時もフィアーの風魔法がなければ、
  勇者どもにいいようにされておっただろう。
  多少の犠牲はあろうとも一度滅んだ国の民だ、
  こんなところで皆で干からびるよりはよかろう。

  魔族に人族の聖女の様な治療魔法使いがおればいいのだが、
  まず望めん話だな。
  かの聖女とやらも急に草原に現れた 渡り人 と聞く。
  ないものは致し方なしだな。

  また傷が疼き出したか。少し休むとしよう。)

カミュールは欠損した足の痛みに脂汗を浮かべながら
横になって耐えることを選ぶのであった。


オアシスから少し腫れた小高い砂丘の上に魔族の風魔法使いが
輪になって集まっていた。

 「では、先程の説明通りだ、始めるぞ。
  集団風魔法 風の塔  発動開始!!」

輪になったままで魔法使いたちが風魔法を上空目掛けて放ち始めた。
次第に渦巻くように砂を巻き上げ上昇する風が強まっていく。

上空に積乱雲が発生し始めた頃、吹きおろしてくる風を浴びるようになってきた。
徐々に強まり始め、立っているのがやっとになるほどの風が吹きおろし、
氷の礫が降り始めたその時だった。

何処からともなく現れた、小型のワイバーンのようなものが急速に接近し
何か光のようなものを風の渦に打ち込んできた。
途端に氷の礫は降って来なくなり、吹きおろす風が弱くなっていった。


 「おのれ邪魔立てするな!」

フィアーは柳眉を逆立てて激高し、特大のファイアボールを
小型ワイバーンに向けて放ったのだった。


 「アブねっ!
  カーラ、あの輪の近くで降ろしてくれ。
  降ろしたらすぐにステルスモードで待機しててくれ」


電脳兵のセブンは、フライングユニットからパージされ
砂漠の上にふわっと降り立った。

 「あのーすいません、暴風が吹き荒れそうだったので、
  つい邪魔しちゃいました。申し訳ないです。

  あ、俺こう見えてメタルゴーレムなんです。
  こんな感じで。」

そう言って両腕のスペースチタンブレードを展開してみせるのであった。

 (な、何だあれは!?
  あんなもの我がアトランティス帝国でもみたことがないぞ。

  メタルゴーレムだと?そんなに流暢に会話をするゴーレムなど
  どうやって構築しているのだ?どこの国のゴーレムだ?

  マズいぞ、こんなタイミングで急に現れたのも妙だ。
  魔力探知にまるで反応しないなどあり得んだろう。
  ここは様子見だな。)

 「何という馬鹿なことをしてくれたのだ貴様は!
  我らは水不足を補うために雨を降らそうとしていたのだ。
  暴風が吹くのは承知の上でだ。
  どうしてくれるのだ?
  おかげでもう一度やろうにも魔力が残っておらんのだ。
  まず、責任をとってもらおうか。」

フィアーがそう言い放つと、セブンは首の後ろの襟首をかきながら

 「それは悪かった。じゃあ責任取って雨降らせるよ。
  あのオアシスのところだけでいいかな?ちょっと威力強すぎて
  テント壊すと思うんで。 いいですか? じゃ、やりまーす。」

セブンはオアシスの上空に範囲を絞って、劇雨魔法を行使した。

 「天空の瀑布」

ぼそっとつぶやくと、途端にオアシス上空に黒い雲が沸き立ち、
砂を弾き飛ばす勢いで、豪音と共に砂漠を潤し始めた。

しばらくすると、雨はやみ、雲も消え去っていた。
オアシスはテントのすぐ近くまで水を貯え、煌めく水面が
とても眩しく感じた。


 「これは何事であるか?
  フィアー、その者は何者か?」

輿にのった魔王カミュールが、いつの間にか輪の外から見下ろしていた。

 「これは魔王様、魔法はこの者の邪魔立てで不発に終わってしまいました。
  しかしながら、この者の水魔法でオアシスを満たすことが出来ました。
  自分ではメタルゴーレムと名乗る人族の気配のする怪しいものです。
  これより取り調べますので、後程ご報告に上がります。
  
  おい、連れて行くぞ。貴様おとなしくついてこい!」

 「フィアー、話はわらわも直接聞かせてもらうとしよう。
  ここで良い。
  さて、メタルゴーレムとやら、自身の来歴を語れるか?」

 「これはこれは魔王様、お初にお目にかかります。
  私は今はネコ獣人族の村で護衛の任についております、
  メタルゴーレムのセブンと申します。
  来歴となると、私はこの世界では 渡り人 という存在になります。
  女神様に召喚されたこことは異なる世界の機械兵士でございます。
  このように顔の表面のみは人族に似せておりますが、
  中身はすべて機械の兵器でございます。
  
  皆様の魔法のお邪魔をしたお詫びがてら、
  魔王様のお怪我の方の治療もさせて頂ければと思います。
  よろしいでしょうか?」

 「女神様の遣わされた渡り人と申すか。
  では、あの水魔法は女神様の加護のお力か?
  治療できると申すならやってみるがいい。
  欠損を治せる魔法など聖女くらいにしかできん芸当だ。」

 「は、では早速。
  完全回復。」

そうセブンが言い放つと、カミュールの周りにダイヤモンドダストのきらめきが
舞い踊り、霧散すると、驚愕に目を見開くカミュールの姿があった。

 「何と!まこと女神様の加護のお力であったか。
  面白い、セブンとやら、わらわのテントにて詳しく話を聞かせてもらおうか。」

女神の加護の力に感嘆し、興味を持ったカミュールは
セブンを真っ赤な瞳で見据えるのであった。

 (ヤベ、俺この人何か苦手だわ。帰りてぇ~)   
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