無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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地獄門

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パティシエの町は様々な種族が行き交う
活気があふれた町だ。
この町には偉そうな態度を取る領主はおらず、
武勇の誉高いネコ獣人族の元戦士長が
町長の役を担っている。

町長は飾りっ気が全くなく、
住む家も貴賓客用の宿の方が
立派な造りに見える程だ。

小さな町だが神殿があり、神が顕現しているという。
一番人気のあるパティシエにそっくりの姿のため、
パティシエの神と呼ばれていたりするそうだ。

 「シヴァ様、ずっと顕現されておられますけど、
  色々と大丈夫なのでしょうか?」

 「蓮、心配はいらぬぞえ。
  私は先の破壊の咎で下級神に降格なのじゃ。
  神気も小さく抑えられておろう。
  周りへの影響も気にする必要がないのじゃ。
  自由気ままに過ごすのじゃ。」

 「シヴァ様、アップルパイ持って来たよ~。
  蓮さんも一緒に食べるっしょ?」

ネコミミのカチューシャをつけた
エプロン姿のパイロが
おやつを神殿に持って来ていた。

 「あ、さっきセブン達が火山地帯のあたりの
  調査に出て行ったよ。」

 「そうか、不死の戦士達の調査じゃな。
  創世の時代の神の戦争に
  関わるものかもしれぬな。」

 「酷い事になってないといいんだけどなぁ。」

そういうとセブン達が飛び立った北東の空を
不安気な顔で見上げるのであった。
  
 

 『ブリュンヒルドさんの話では、
  ロキ神のもう一人の子である
  ヘルの影が感じられるといっていたわね。

  まさかいつの間にかフェンリルを
  討伐していたなんて、
  一歩間違えていたら世界樹すら
  焼かれていたかもしれないような
  危険な相手だったのよ。
  寝ていて助かったと思うべきなのだわ。』


 『いや、そう言われても、森人族からの依頼だと
  大きな魔獣って情報だけだったし。
  まさか、大昔の神の戦争で
  主神すら倒したことがある相手が
  あんな森の中で寝てるとか想像もできないよ。

  まぁ、今はアイテムボックスの中で
  解体されて保存してるから
  世界樹も安泰って事で。』

 『全くあなたは運がいいのか悪いのか。

  あ、火山帯の上空ね。降下開始するわ。』


サラとセブンはフライングユニットで
タンデム飛行し、赤い龍人族がいるという
火山帯の上空から捜索を開始した。

 『生体反応がなさそうだわ。
  認識阻害魔法を使っていそうね。
  範囲を絞ろうにも
  何か目標物があるといいのだけれど。』

 『パッっと見ても見つかりそうにないだろうな。
  出来立ての小さな魔族の国が
  襲われてるって話だから、
  もっと南か西側を探してみようか。』

そんな風に二人は電脳を介して会話をしていると
火の手が上がっているポイントが発見された。

 『南西に300kmの地点だな。
  移動しよう、サラ。』

 『そうね、
  念のためステルスモードを起動するわ。』

不可視化した状態でセンサーが示すポイントへ
ひっそりと移動する二人であった。



 「防壁系の魔法を張り続けろ!!
  戦闘しようと思うな!
  連中はすぐに復活してくるから
  魔力が無駄になる!
  守りに徹しろ!」

 「アンデッド系やもしれぬ、
  浄化魔法を広範囲にかけるんだ!」

静かに歩み寄る黒い炎を纏った戦士達が
興したばかりの小さな魔族の国に
襲いかかって来ていた。

攻撃魔法で倒しても、すぐに元に戻った状態になって
行軍を止められそうにない。

その行軍は外壁の1kmほど先にできた
黒い穴から始まっていた。

 「あの黒い穴をどうにかできないのか?
  ダンジョンではないのだろう?
  土魔法で埋めれないのか?」

 「ダメだ、土が全部飲み込まれる感じで
  埋められそうにない。
  あの感じだと、空間魔法のアイテムボックスから
  出て来ているような感じだ。
  術者本人以外にどうにもできないと思う。」

 「そう言わずに続けてみてくれ。
  カミュール様には応援要請をしている。
  持ち堪えるんだ、なんとしても」

防戦一方の魔族の戦士達は魔力切れの限界を
不安に思いながらも必死になって凌いでいた。


 「この地獄門が開く限り、
  この世はあの世と混ざり合うのだ。
  不死の戦士達よ、時間は有り余っている。
  じっくりと侵略するのだ。

  この世をこのヘル様が作り変えてやる。」

黒い穴の中から恨みのこもった低い声が
溢れ出ていた。
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