無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

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異界の王の復活

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巨大大陸のほとんどが真っ赤な血のような
夕焼けに染め上がったその日のことであった。

大陸の北部に広がる不毛の砂漠地帯に
独特の形をした人工物が現れた。
その人工物は高さが150m近くあった。
勾配43度の真正ピラミッドにしか見えない形状であった。


闇の中に小さな光が蠢いている。
その小さな光は少しずつ纏まり始めた。
楕円形の輪の形を作り、ゆっくりと回転を始めた。
回転がどんどん早くなってゆくにつれ、
光が強くなっていった。

一際強く輝いた時、その輪の中に蠢く紋様が浮かび出した。
その紋様もそれぞれが楕円軌道で回転を始めた。
すると、楕円の光跡は元の楕円から外側に飛び出して
立体的な回転を始めた。

それぞれの楕円内を蠢く光が何かの形を描きながら
蠢いているのが分かり始めた時、細身のミイラの輪郭が
はっきりと見えるようになるほど明るくなっていた。

蠢いていた楕円の紋様がミイラの体の表面に張り付くように
一体化した時、ミイラであった遺体は急に膨張を始め、
包んでいた布が散り散りに弾け飛び、
布の下から人らしい肉体が現れた。

突然、その肉体の目がかっと見開かれた。
むっくりと上半身を起こすと大きな声を張り上げた。

 「余の眠りを妨げる者は誰か!?」

その問いに答える者はおらず、
そのものの足元あたりに黒い獣のようなものが
控えているだけだった。


魔族の新しい国が神龍の山の北側に広がっていた。
女王カミュールは美麗な顔立ちのままで、
柳眉を逆立て、険しい面持ちをしていた。

 「砂漠の中に人工の山が現れただと?
  気に入らぬな。
  調査隊を編成し、至急差し向けよ。」

念のため、サラたちにも伝えておくか。
 
 「バグドローンよ、サラに伝言がある。

  砂漠の中に四角錐の石で出来た山が現れた。
  これより調査に向かう。
  情報があれば頂きたい。

  頼んだぞ、バグドローンよ。」

カミュールが服の襟についている
テントウムシ型のドローンに
そう話しかけた。


パティシエの街では、このところ音楽や絵画といった
文化が発展し始めていた。

発端はサラやパイロが始めたピアノやバイオリン、
油絵や水彩画教室だ。
街の子供達だけでなく大人にも人気が出て、
急速に広まっていった。

ブリュンヒルドが教えるダンスや、
冒険者向けの武術道場も出来ていた。

神殿の横には蓮が開いた抹茶のお店ができており、
静かなブームが広がり始めていた。

神殿の中でシヴァ神が教える本物すぎるヨガ教室は
各地の神官が受講する人気ぶりだ。
神だけに人間離れしすぎた軟体ぶりに
ドン引きしてしまいそうになるのは
体の硬い作者だけかもしれない。

セブンはカイの開いたカウンターバーに入り浸ることが多く、
開店準備中のカイに箒で掃き出されている事もあった。

この店は隠れた人気スポットになっており、
お忍びでもきてはいけない神々がよく来て
浮世離れした空間になっていたりする。

今日もエレシュキガルがセブンの隣で少しもたれ掛かりながら
酸味の効いたカクテルを味わっていた。

 「まだ誰にも手を出さないのは意気地なしにも
  限度があると思うのだけれど、どうしてなのかしら?

  まさか、あなた未経験なのかしら?」

 「あー、またその話かぁ。
  まぁ、そうだな。
  前の世界だと、長い間童貞だと
  魔法使いになれるらしいとか
  言ってたような気がするよ。

  うん、この三百年くらいは童貞だな。
  ついてなかったし。」

 「ついてるとかついてないの問題なのかしら?
  気持ちの問題だと思うのだけれど。
  女の扱いに慣れてないなら、
  教えてあげてもいいのだけれど。」

その危険な囁きにカクテルを作っていたカイが
強めの咳払いをして牽制した。

 「あら、ここにも思い人がいたようね。
  あなた、モテるじゃない。
  ほんともったいないのだわ。
  ネルガルがいなかったら
  本気で落としにかかっているわよ。
  少しは自覚した方がいいわね。」

 「なんの自覚やら。
  奥様はそろそろキツめのお酒をお控えになって
  お迎えが来るまでに酔いを覚まされた方が
  いいと思いますけど。」

 「いやなのだわ。
  非日常の空間にいる時くらいハメを外したいと
  思うのだけれど。こんな風に。」

そういうが早いか、エレシュキガルがセブンに濃厚なキスをした。

カランっという軽やかな鐘の音を立てて、
最悪のタイミングでサラが店に入ってきた。

狭いバーなので、店に入るとすぐ目の前にカウンターがあり、
濃厚なキスシーンを瞼に焼き付けられるほどだ。

抱きついて離れないエレシュキガルの肩を持って
揺さぶりながら動揺するセブンの電子眼には
表情をなくしたサラの顔が映り込んでいた。

その後、上機嫌になったエレシュキガルが闇から帰っていった。
店には頬に紅葉模様をつけたセブンが項垂れており、
その横でサラが強めの酒を煽っている姿があったのだそうだ。
サラはあまりの衝撃でここにきた目的が吹っ飛んで、
飲まずにおれなくなったようだ。

浮気はいけないのですよ、セブン。。


その間にも北部に現れたピラミッドでは
不死者の戦士達が復活した王を称え、
帝国の再興を唱えているのであった。
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