無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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念動力 重力魔法

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世界大会 弓の部の1戦目は北の闇人族対
南の森人族の南北戦であったが、今度は
東の巨人族対西のネコ獣人族の東西戦の図式となった。

体格の差が大きい。
4mを超える巨漢と1.5mにも満たない
小柄な女性の戦いとなる。

戦闘開始と共に巨人族は巨輪を回しながら投げるのではなく、
ごく自然に手の先から滑らせるように放った。

不思議な軌道で飛んでいくのは、
彼らの得意とする念動力を使っているのだろう。
ガーラは両目を閉じて第三の目を金色に輝かせながら、
ネコ獣人族のクーラを狙っている。

そのクーラも両目の金色のタペタムを輝かせると、
接近していた巨輪が吸い込まれるように地面に落ちた。

同時にカッと両眼を見開いたガーラに
凄まじい圧力がのしかかってきていた。
一歩も動けない状況に追い込まれる中、
クーラがいつの間にか放った無数の矢が
ガーラの体を取り囲んでいた。

 「クッ!無念だが、負けだ。
  油断した、戦士としてあるまじきことだ。」

全ての目を閉じて悔しさをにじませるガーラに対して、
全身汗びっしょりになったクーラは息も絶え絶えになっていた。

重力操作の魔法を多用したため魔力が限界だったようだ。

短時間であったが戦闘とは一瞬の油断が命取りになるという
教訓を目の当たりにできた試合となった。


決勝では森人族のグランが放つ不可視の矢を
認識できなかったクーラが当たる寸前まで気付けずに
防戦一方となり、重力魔法の防壁の魔力切れと共に
気絶し、試合終了となった。

 「世界樹の精霊様に頂いた世界樹の枝で作った矢だ。
  これを認識できるものはそうそういないだろう。」

自慢の一品でこの戦いに挑み、見事勝利を手にした
グランは意気揚々と引き上げていった。


そして、いよいよ死者が出てもおかしくない
縛りなしの総合の部が幕を開ける。

北のギルドから異界の剣士卜伝、
南から異界の魔人メフィスト、
西からは獣王ドゥルガー、
東のギルドいや、闇ギルドからハサンという暗殺者が
人気を集めている。

獣人族や魔族、魚人族からも戦士が出ている。
人気を集めている4人は順当に駒を進め、準決勝戦となっていた。

まず、獣王ドゥルガーと剣士卜伝の戦いが始まる。
ここまで両者ともに一気に試合を決める速攻で勝ち進んできている。

ドゥルガーが驚異的な加速で卜伝に迫る。
速さは破壊力に比例する。
その拳から繰り出される衝撃波で相手の体を粉砕してきた。
今もその拳が繰り出されようとしている。

卜伝も腰を据えて抜刀し、剣の刃を放った。
ドゥルガーが拳で打ち砕き、さらに迫る。

卜伝は連続突きを繰り出し始めた。
ドゥルガーがそれをことごとく打ち砕いていく。

と、ドゥルガーの拳が止まった。

 「むっ!無念!一手及ばずか。」

連続突きの一本が体を貫いていたようだ。
その場にドゥルガーが昏倒し勝敗が決した。


闇ギルドのハサンは影魔法と短剣の使い手だ。
自らの影に打ち込んだ短剣が、
相手の影から打ち出され、心臓を的確に貫く
一撃必殺の暗殺術だ。

対メフィスト戦でも同じ技で挑みかかった。
そのはずだったが、メフィストの影から
短剣は飛び出してこなかった。

 「この私に影魔法とは。
  影とは何か考えたことはあるのかね?
  君の短剣の切れ味を味わいたまえ。」

そう言い放つと、メフィストは動いていないが、
メフィストの影は短剣を放つ動作を見せた。
その短剣はハサンの影の首に突き刺さり、
ハサンの実体の首元から破裂するような出血が起こり、
血飛沫を上げながらその場にハサンは頽れた。



ついに決勝が始まる。
先のクフ王軍の侵攻時に協力し共に戦った二人が
互いに願ったように全力で戦える場に立っている。

 「異界の神の力を帯びし無双の剣士殿。
  影すら切り裂く光の刃が私に届くかどうか。
  興味深い、実に興味深い。

  この勝負、ただ勝つだけではもったいないものだ。
  貴公の技を全て受け切ってこそ
  勝ったと言えよう。

  私の影の陣、易々と破れはしない。
  まずは後攻めとさせて貰う。」

 「ふむ、ならば先手をとらせて頂く。
  塚原卜伝、全力で参る!」

影の繭に閉じこもったようなメフィストに
卜伝が今までの戦いより強い輝きを放つ光の刃を
叩きつけていく。
光の刃が影の繭に当たる度に黒い靄が飛び散り、
メフィストの目が細まる。
その目に強い光をたたえながら。

連続突きの型から発せられた光の刃を何度か受けた時、
メフィストの口から血が滲み始めていた。

 「さすが神が選びしものだ。
  見事な剣技だ。後手は悪手だったようだ。」

影の繭が消え失せたと同時にメフィストは血を吐きながら
その場に膝をついた。

無双の剣士は異世界でも無敗の記録を更新したのであった。
全く疲労していないように見える卜伝に
挑んでみたいと思う神々の目が向けられていた。
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