無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

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揺れる世界 光と闇と

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世界樹の森。
その巨木の周りで精霊達が慌ただしく
あちらこちらと飛び回っている。

 『ヒカリノ セイレイ ヤミノ セイレイ
  アラソウ カナシイ カナシイ』

 『ヒカリ アレバ ヤミ アル
  アラソウ マチガイ』

 『ヒカリノ テンガ カツカ
  ヤミノ チガ カツカ
  ドチラモ サケルカ
  サケレバ コノセカイ キエル』

天の女神イシュタル、天使の光の力を持つものと、
地の女神エレシュキガル、悪魔の闇の力を持つものが
戦うことになって精霊達にも影響が出ているようだ。

過去を見れば、イシュタルは闇の世界に乗り込んで
エレシュキガルに敗北している。
又、ルシファーは天使達の猛攻を受けて
冥界に落とされている。

今回の戦いは地上で行われるため、
イシュタルに有利となれば、ルシファーが
天使達にまた敗北する確率が高いように見える。

ここで異界からの援軍、メフィストが加わり、
拮抗する可能性が想定される。

拠点の中で、戦術解析を行なっているセブンは
そんな予想を立てた。

天使達はかなりの大軍でやってくる 
とルシファーは言っていた。
元天使の戦士長を部下達が
総力を上げて叩きにくる予想だ。

さらに悪い情報があった。
セブンの契約精霊から、天使達は
光の精霊を集めて精霊魔法を使う気のようだ。
一歩間違えばこの大地が裂けて
世界が滅ぶかも知れないほどの
やばい魔法だそうだ。

ルシファー、メフィストに
バグドローン経由で話したが、
こちらは闇の精霊を使う気はないとのことだ。

それでは闇の勢力が押される感じがする。

ハーデスはカイのバーでカクテルを煽りながら、
冥界の神の立場では手は貸せない
と冷淡に言い放っていた。

そうなると、やるしかないか 
と覚悟を決めるセブンだった。

その横顔をチラッとみたハーデスは、
クイッとカクテルを空けて、
セブンの肩を軽く叩いて
気楽に頑張りたまえ
と声をかけて帰っていった。


整備も兼ねて電脳兵専用調整ポッドに
入ったセブンに、スクルドが声をかけてきた。

 『光と闇の争いは過去から続く
  長く終わりのないものなのよ。
  今回はどちらにも味方せずに
  中立でいて欲しんだけど。

  その様子だと難しそうね。。。
  このままこのポッドの中で
  争いが終わるまで
  閉じ込めることもできるのよ。

  はぁ、壊してでも出て行きそうね。
  
  武人も罪な男ね。
  エレシュキガル神のこと
  好きになっているんでしょ?

  ダメよ、あの女神様は。
  遊びでなくなってしまえば。
  貴方も冥界から戻れなくなるのよ。
  そうなりたくなかったら、
  隙を見せないようにもっと気をつけてね。』

 (サラ達にも説教されたけど、
  隙を見せてるって訳じゃなくて、
  何となく避けられない、避けたくないって
  思ってしまって顔を背けられないんだよな。)

いつも伝わってくるのは寂しさだからかもしれない。

 『それは武人が受け止めるものではないわ。
  今は夫であるネルガル神の務めなのだわ。
  人妻に気を許してはダメよ。いいわね?』

ため息をつきながら調整ポッドを出たセブンを、
サラ、カイ、パイロ、カーラ、ブリュンヒルドが
待ち構えていた。

 「ん?ブリュンヒルドさんまで?」

 「世界を二つに分けるほどの戦いだ。
  どちらの勢力にも加担はできぬが
  近場で見ておくことも鍛錬なのでな。
  現地まで一緒に行かせてもらうぞ。

  見ていて身体がうずいたら、
  カーラと訓練をするかもしれぬがな。
  
  珍しくカーラがそうしたいと
  言ってきたのでな。」

 「お師匠様、それは言わない約束なのです!
  んんっ、天と地の戦いを最前列で
  見るだけなのです。
  (何かあればフライングユニットに
   リンクして貴方を守るのです。)」

 「見学だけにしてはフル装備なのは
  訓練用ってことか。
  わかったよ、一緒に行こうか。

  サラ、カイ、パイロは
  待っててくれ。

  正直に言うと、
  エレシュキガルさんの力になりたいんだ。」

何かを言おうと口を開きかけていた3人は
その言葉を聞いて口を噤んだ。

パイロは一度俯き、キリッとした顔を作って
セブンに向いて声を出した。
 
 「あたいも行く!
  セブンにだけ危ないことさせたくないから。
  足手まといにはならないから、お願い。」

目を潤ませて嘆願するパイロを見て
セブンは拒絶の言葉を飲み込み、肯くしかなかった。
静かにパイロの方に手をかけた。

(オーバーロードモード誘発起動!)

パイロの体が痙攣し、ゆっくりと頽れていく。

 「ど う し て ・・・」

潤んだ瞳から涙をこぼしながら
パイロがシステムダウンを起こした。
セブンはそのまま調整ポッドに横たえ、
12時間の調整モードを起動させてロックした。

 「悪いな、パイロ。
  恨んでくれていい。
  お前はここで戦士じゃない
  生き方を続けてくれ。」

 「どうしても行くのね?
  私もいくと言ったら、
  同じように眠らされるのかしら?」

 「サラもカイも傭兵の武装は
  装備出来ないボディだろ。
  この村に被害が出ないと限らない、
  残って守っていて欲しい。」

 「お断りだわ。
  私はもう待つのは嫌なの。
  フライングユニットにはあと一人乗れるわ。
  お願い一緒に連れて行って。
  一人にしないで。」

 「ごめんね、サラ。
  その残りの一席はボクが予約済みなんだ。」

 「クロ!どうして貴方がいくの?
  まさか、あの神器を使うつもりなの?」

 「違うよ、あれは天の勢力には使えないよ。
  精霊達を連れ戻しに行くんだ。
  精霊魔法を使わせないためにね。」

 「サラ様、
  私達はホバーユニットで参りましょう。
  サラ様のお力も必要になる可能性も想定されます。

  よろしいですね、セブン様。」

 「ホバーって。。でも、何でカイまで?」

 「分かりませんか?
  セブン様が心配だからです。
  私も貴方の側にいたいという思いがあります。
  いい加減自己犠牲の戦闘スタイルを変えてください。
  心配して待つもののことを考えてください。
  だから、離れたくありません。
  サラ様と共に向かいます。
  時間がかかりますので、私達はもう出ますので、
  これで失礼を。
  そう、これは、おまじないです。」

カイは早口でそう一気に言い終えると、
セブンに抱きつき軽くキスをした。

さっと離れると、呆然としているサラの手を取って
拠点の外で待機状態のホバーユニットに乗り込んで
急加速をかけて発進して行った。

 「やるものじゃな。
  セブンも酷いことをするのじゃな。
  パイロが起きたら私が慰めておくぞえ。
  戻ったらパイロの願いを一つ聞いてやっておくれ。」

 「分かりました、シヴァ様。
  パイロをお願いします。」

拠点の2階から2機のフライングユニットが
ロフテッド軌道で飛び立って行った。

 「さて、ハーデス。
  そこにおるのじゃろう?
  そなたはどうするのじゃ?」

 「さすがですね、シヴァ神様。
  今回は私の出番はありません。
  もっと適役がおられますゆえ。」

 「ほぉ、そうかえ。
  では拮抗した戦いになりそうじゃな。」

シヴァの額の第3の目が金色の輝きを放っていた。
まるでエールを送っているような力強さで。
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