無情の電脳傭兵 異世界で再起動する

graypersona

文字の大きさ
153 / 164

精霊の日(セブンとサラ)

しおりを挟む
精霊の日が終わろうとする夜の湖の周りに
たくさんの光の球が浮かんでいる。

パティシエの街に接する大きな湖は
昨年はほとんど干上がっていたのだが、
電脳兵のセブンの魔法で神気の混ざった
聖なる湖として復活を遂げていた。

セブンは神殿の奥から湖につながる細道を通って
緩やかな波を立てる湖面の音を聞きながら
精霊達の舞を見つめていた。


先ほどまで神殿内でパイロが作ったケーキを頂いていた。
拠点でファーラ、パイロ、カイの3人から告白を受けて
セブンは戸惑いと嬉しさもあって3人の思いを受け止めると
言ったのだったが、彼女達それぞれには受け止め方に差があった。


カイはセブンに嫌われているだろうと思いつつも
勇気を振り絞るパイロ達の姿を見て、思い直し、
告白することにしたのだった。

まさか受け入れて貰えるとは思いもしていなかったカイは
嬉しさもあったが、3人とも受け入れると言う優柔不断さに
ムッとした態度をとってしまった。


パイロはこれまでもそれとなく気持ちを話していたが、
今日こそはと気合を入れてセブンの一番に選ばれたいと思い、
乗り込んできたのだが、まさか3人一緒と言われるとは思わず、
なんでなの?と言う思いが強く最低!と言ってしまったのだった。


ファーラは人族にはウケがよくない事が多い獣人族である事を
気にしている節があり、受け入れてもらえないだろうなと
それでもいいから伝えたい、好意と最初に出会った時に
助けてもらった感謝の気持ちをこめて、
改めて胸に秘めた思いを伝えて帰ろうと思っていたら、
予想に反してセブンが受け止めてくれた事が嬉しくて
泣いてしまったのだった。


そんなファーラを見たセブンは
自分の言い方が悪くて傷つけたのではと心配し、
ファーラが落ち着くまでじっと彼女に寄り添う形になったのだった。

その姿を見たカイとパイロは純粋なファーラに負けた気がして
カイはサラのもとで、パイロは拠点の外で待っていた
シヴァの胸の中で泣いたのだった。

カイの涙には受け入れて貰えたことの嬉しさも混じっていた。
パイロの涙には一番にはなれなかった悔しさと
ファーラの気持ちに負けた敗北感が混じっていた。

それでも、色恋の道の先達であるシヴァから諭され、
落ち着きを取り戻したパイロは、
夜のお茶会にセブン達を神殿に誘い、
大陸一の呼び声高いパティシエの腕を振るったのだった。


 (やっぱ、あたいから見てもファーラさん可愛いよね。
  セブンはあんな感じの子がいいのかな。
  服装からイメチェンしようかな。)

 (これまで散々辛辣な事を言いたい放題してきた私なんて
  嫌われて当然なのに、セブン様はMの素質があるのでしょうか?
  AIとして起動していたプログラムの頃より、はっきりと感情が
  胸の中にあるなんて、不思議な事だと思うのですが。
  これからもずっとお側に支えさせて頂けるのは
  幸せというものなのでしょうか。)

 (今日は頑張って告白して受け入れてもらえて、
  これまで生きてきて最高の日になったのだ。
  あの時パイロさんと一緒に背中を押してくれた
  シヴァ様には感謝の気持ちがいっぱいなのだ。

  パイロさんのスイーツはいつも美味しいな。
  セブンさんはパイロさんのこういう所も好きなのだろうか。
  私も頑張ってみるのだ。)


お茶会がお開きになると、ファーラはフェイズの待つ家に、
カイとパイロは本日休業中となっているカイのバーに移動していった。

神殿に残ったサラとセブンの2人を
シヴァは湖の方へ行ってみると良いと送り出したのだった。
シヴァは念話でサラに素直になるのじゃと一言告げていた。


 「この世界って本当に神秘的で、
  時々自分が今生きているのかどうか
  不安に思うこともあるのだわ。」

 「うん、確かに前の世界じゃ見られない不思議な光景だよな。」

 「ところで、セブン。
  今日はあの3人の思い全てを受け止めると言ったそうだけど、
  3人を同時に、違うわね、平等に愛情を持って接する事が
  あなたに出来るのかしら?

  いずれは誰かを一番に選ぶ時がくるのだわ。
  その時決断する覚悟はあるかしら?

  今はないと思うのだけれど、その時がきたら、
  今度は逃げずにしっかり決める事をお勧めするわ。」

 「うーん、正直、愛情を持って接するというのが
  感覚的に理解できてないんだ。
  3人とも可愛いなとか綺麗だなって思う時があって、
  側にいてくれると嬉しい気持ちになるから
  これがきっと愛情なのかなって思うんだけど、
  どうなんだろ?」

 「うーん、それは・・・判断が難しいわね。
  時間はあるのだからゆっくり自分の気持ちと
  向き合っていけばいいと思うのだわ。」


 「そっか、そうだよな。焦らずじっくりだな。
  そうだ、やっぱり紗良義姉さんと一緒にいると
  一番落ち着くし、なんだろ、ずっと側に居たくなるんだ。
  前に入院してたからかな?
  よくわかんないんだけど、一番落ち着くのは
  紗良義姉さんの側なんだ。」


 「えっ?そ、そうなの。
  ・・・それは、・・・そうね、
  私も自分の気持ちに向き合うべきよね。

  セブン、私もあなたのことが好きなのだわ。
  あなたの為なら何でもするわ、
  だから私もあなたの側に居させてね。
  除け者にしないでね。
  嫌かしら?」


 「えっ、紗良義姉さんまで。。
  うん、俺も気持ちは同じだから
  嫌なんてことあるはずないよ。
  これからもずっと一緒にいて欲しい。」

セブンのその言葉を聞いたサラは
目を潤ませながらセブンの首に抱きつき、
そっと唇を合わせたのだった。

唇を離しても長い時間抱き合ったままの
2人の周りをふわふわと舞う精霊の光は
どこか恥ずかしげな笑顔が浮かんでいるような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...