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桔梗家と鬼神家
第25話 涙
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「あう…………」
「まったく…………」
何故か私は、雅様にデコピンされてしまいました。
な、なぜ!?
「あらあら」
「美月…………」
周りの人も驚いている様子です。
私も、何が起きたのか一瞬、分かりませんでした。
な、なに? なんだったの?
「目の色は遺伝だ。先ほども言っただろう」
あっ。
た、確か、父様のお母様も私と同じ赤い瞳だったと言っていた。
「久光の母は、赤い瞳と異質な存在で、あまりよく思われていなかった。だが、持っていた明るい性格と学んできた知識、桔梗家と婚約して力を授かり国のために動いた結果、不吉な娘とは言われず、逆に桔梗家が納める国は増え、今の地位を手に入れることが出来た。違うか?」
雅様が確認するように父様を見る。
首を横に振り「その通りです」と、肯定した。
「だから、瞳が赤いからと言って、周りが不幸になるなど断じてありえん。周りの者は、自分で不幸を招いているだけだ。その苛立ちを、誰かにぶつけたかった、それが異質な存在である美月が都合良かったのだろう」
腕を組み、鼻を鳴らす雅様。
隣では、うんうんと頷いている響さん。
「ですが、私にはまだ力が現れていません。普通なら、もう現れていてもおかしくないはずです。それは、不吉だからでは……?」
「それは、美月の気持ちと連動していると思っている」
「気持ち、ですか?」
聞くと、雅様は渋々と言った感じで教えてくれた。
「そうだ。今まで縛り付けられた環境にいた美月は、自分自身を押さえつけているのでは無いかと思っている。だから、現れては欲しくないが、時間の問題だろう」
時間の、問題……。
「なんせ、俺様が美月を愛している。鬼神家の者達も美月を気に入っている。誰も貴様を縛らん、自由に羽ばたけるのだからな」
言い切る雅様ですが、なぜか難しい顔を浮かべ「でも、やはり力が芽生えてしまえば危険が……し、しかし……」と、ブツブツ呟き始めてしまった。
雅様の今の言葉に、目じりが熱くなる。
そんな事、家族にも言われたことはない。
いつも蔑まされ、いいように利用されていたから。
居場所なんて、畳の一室だけ。味方は、外注してくださった本と――――このような環境に送り出してくれた父様だけ。
そう思っていた。
まさか、私にそんなお声をかけてくださるなんて。
何も出来ない私を受け入れてくれて、愛してくれて。
何も知らない世間知らずな私を――……
――――ポタッ
「えっ」
「あらぁ」
「み、美月? お前、泣いているのか?」
父様に指摘された通り、もう我慢できなかった。
目から涙が零れ、畳を濡らしてしまう。
「ヒクッ、す、すいません。すい、ません……」
早く涙を抑えなければ。早く、泣き止まなければ。
そう思っているのに、涙は零れ落ちるばかり。
これ以上情けない姿を見せないようにしないと。
これ以上、迷惑をかけてはいけないのに……。
「──謝るな。今は、泣け」
雅様が私を抱き寄せ、逞しい腕に包まれる。
雅様の心音が鼓膜を揺らす。優しい温もりが、私を包み込む。
これでは、涙を抑えられませんよ、雅様――……
※
父様の立場は、家族内では弱い。
…………いや、立場は一番上のはずなんだけど、父様が気弱で母様と美晴姉様の言いなりだから何も言えないのだ。
それも踏まえて、今回の件は雅様に一任する事となった。
それでも、父様は裏で動くことは可能だと言ったため、新しい情報が入り次第雅様に伝えることとなった。
雅様は、三ツ境国の勢力についてと、桔梗家について今まで以上に調べると言って部屋に閉じこもってしまった。
私も何かしたいけれど、何故か最近体が重く、夜は変な夢を見るから寝れずに寝不足。
女中さんにそれを察せられてしまい、鍛錬と勉学は半分の時間と言われてしまったのだ。
それも、私がわがままを言ってのこと。
女中さんは、完全なる休暇をさせようと説得してきたのです。
でも、それは私の存在価値すら奪うこととなる。それだけは、絶対に嫌だ。
それを伝えると、渋々半分の時間だけならと許してくださったのだ。
今は、もう勉学も鍛錬も終わり、休憩の時間。寝不足だからか、眠い。復習したかったけれど、これでは集中できない。
「ふわぁ…………」
少し、お昼寝をしましょう。
でも、また怖い夢を見てしまったらどうしよう。
最近、雅様が死んでしまう夢ばかりを見てしまう。
でも、不思議なのが、今までは周りも分からない闇だったのに、徐々にはっきりしてきたような気がする。
雅様を殺してしまう人物も、女性と言うことはわかった。
でも、誰だかまではわからない。
これは、何かの暗示なのかな。
わからない。けど、もう、眠くて仕方がない。
布団の中に入ると、すぐに瞼が落ちてきた。
お願い、もう、雅様を殺さないで。
私の大事な人なの、お願い。夢でもなんでも、やめてください――……
「まったく…………」
何故か私は、雅様にデコピンされてしまいました。
な、なぜ!?
「あらあら」
「美月…………」
周りの人も驚いている様子です。
私も、何が起きたのか一瞬、分かりませんでした。
な、なに? なんだったの?
「目の色は遺伝だ。先ほども言っただろう」
あっ。
た、確か、父様のお母様も私と同じ赤い瞳だったと言っていた。
「久光の母は、赤い瞳と異質な存在で、あまりよく思われていなかった。だが、持っていた明るい性格と学んできた知識、桔梗家と婚約して力を授かり国のために動いた結果、不吉な娘とは言われず、逆に桔梗家が納める国は増え、今の地位を手に入れることが出来た。違うか?」
雅様が確認するように父様を見る。
首を横に振り「その通りです」と、肯定した。
「だから、瞳が赤いからと言って、周りが不幸になるなど断じてありえん。周りの者は、自分で不幸を招いているだけだ。その苛立ちを、誰かにぶつけたかった、それが異質な存在である美月が都合良かったのだろう」
腕を組み、鼻を鳴らす雅様。
隣では、うんうんと頷いている響さん。
「ですが、私にはまだ力が現れていません。普通なら、もう現れていてもおかしくないはずです。それは、不吉だからでは……?」
「それは、美月の気持ちと連動していると思っている」
「気持ち、ですか?」
聞くと、雅様は渋々と言った感じで教えてくれた。
「そうだ。今まで縛り付けられた環境にいた美月は、自分自身を押さえつけているのでは無いかと思っている。だから、現れては欲しくないが、時間の問題だろう」
時間の、問題……。
「なんせ、俺様が美月を愛している。鬼神家の者達も美月を気に入っている。誰も貴様を縛らん、自由に羽ばたけるのだからな」
言い切る雅様ですが、なぜか難しい顔を浮かべ「でも、やはり力が芽生えてしまえば危険が……し、しかし……」と、ブツブツ呟き始めてしまった。
雅様の今の言葉に、目じりが熱くなる。
そんな事、家族にも言われたことはない。
いつも蔑まされ、いいように利用されていたから。
居場所なんて、畳の一室だけ。味方は、外注してくださった本と――――このような環境に送り出してくれた父様だけ。
そう思っていた。
まさか、私にそんなお声をかけてくださるなんて。
何も出来ない私を受け入れてくれて、愛してくれて。
何も知らない世間知らずな私を――……
――――ポタッ
「えっ」
「あらぁ」
「み、美月? お前、泣いているのか?」
父様に指摘された通り、もう我慢できなかった。
目から涙が零れ、畳を濡らしてしまう。
「ヒクッ、す、すいません。すい、ません……」
早く涙を抑えなければ。早く、泣き止まなければ。
そう思っているのに、涙は零れ落ちるばかり。
これ以上情けない姿を見せないようにしないと。
これ以上、迷惑をかけてはいけないのに……。
「──謝るな。今は、泣け」
雅様が私を抱き寄せ、逞しい腕に包まれる。
雅様の心音が鼓膜を揺らす。優しい温もりが、私を包み込む。
これでは、涙を抑えられませんよ、雅様――……
※
父様の立場は、家族内では弱い。
…………いや、立場は一番上のはずなんだけど、父様が気弱で母様と美晴姉様の言いなりだから何も言えないのだ。
それも踏まえて、今回の件は雅様に一任する事となった。
それでも、父様は裏で動くことは可能だと言ったため、新しい情報が入り次第雅様に伝えることとなった。
雅様は、三ツ境国の勢力についてと、桔梗家について今まで以上に調べると言って部屋に閉じこもってしまった。
私も何かしたいけれど、何故か最近体が重く、夜は変な夢を見るから寝れずに寝不足。
女中さんにそれを察せられてしまい、鍛錬と勉学は半分の時間と言われてしまったのだ。
それも、私がわがままを言ってのこと。
女中さんは、完全なる休暇をさせようと説得してきたのです。
でも、それは私の存在価値すら奪うこととなる。それだけは、絶対に嫌だ。
それを伝えると、渋々半分の時間だけならと許してくださったのだ。
今は、もう勉学も鍛錬も終わり、休憩の時間。寝不足だからか、眠い。復習したかったけれど、これでは集中できない。
「ふわぁ…………」
少し、お昼寝をしましょう。
でも、また怖い夢を見てしまったらどうしよう。
最近、雅様が死んでしまう夢ばかりを見てしまう。
でも、不思議なのが、今までは周りも分からない闇だったのに、徐々にはっきりしてきたような気がする。
雅様を殺してしまう人物も、女性と言うことはわかった。
でも、誰だかまではわからない。
これは、何かの暗示なのかな。
わからない。けど、もう、眠くて仕方がない。
布団の中に入ると、すぐに瞼が落ちてきた。
お願い、もう、雅様を殺さないで。
私の大事な人なの、お願い。夢でもなんでも、やめてください――……
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