人間にトラウマを植え付けられた半妖が陰陽師に恋をする

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
9 / 48
秋晴れ

「絶対に俺が銀籠さんを嫌いになる事はない」

 銀と話した次の日から、優輝は毎日学校帰りは森に行き、銀籠と話をする時間を作っていた。

 学校が休みでも、必ず同じ時間に森へと向かい話をする。

 最初は木を三本分離していたのだが、毎日毎日優輝が会いに行くため、銀籠は彼に対してのみ、徐々に距離を縮める事が出来てきた。

 今ではまだお互いが触れることは出来ないが、お互いに手を伸ばせば届く距離まで縮めることが出来た。

「今日は何の話をしようか。あ、姉さんが怒った話でもする?」

「また、何をしたのだ…………」

「ただ、日ごろの行いがいいかだけの問題なんだよ? 俺は特に何もしていない。なのに、今日ここに来る前にたんこぶ作らされたの、酷いと思わない?」

「また、姉さんは課金をしていたのか?」

「うん」

「…………ぬしは?」

「無課金。あ、ちなみに無理のない課金じゃなくて、本当に一切お金をかけていないよ」

「だから怒ったのだろう…………」

「怒られても困るんだけど」 

「確かにそうだが…………」

 納得いかないというように、叩かれた頭を摩っている優輝を見て、銀籠はやれやれと肩を落とす。

「そういえば、今日は薪を背負っていないね。今日はいらないの?」

「いや、今日は早めに終わらせ小屋に置いて来た。どうせ、今日も来ると思っていたからな」

「それはつまり、待っていてくれたという事でいいのかな?」

 今の言葉で優輝は目を輝かせ、銀籠を見つめた。

 自身の失言に気づき、銀籠は赤面。
 大きな声を上げてしまった。

「目を輝かせるな! そうではない!!」

 自身の顔を隠すようによそを向き、唇を尖らせる。
 優輝は口元に手を置き、幸せそうにくすくすと笑った。

「待っていてくれてありがとう。毎日来たかいがあったよ」

「だから、そうではない!! 勘違いするな!!」

「はいはい」

 歯を食いしばり唸る銀籠を見て、優輝はケラケラ笑う。

 むむむっと、銀色の瞳で睨むが、優輝にとってはご褒美。無言でスマホを持ち、カメラを構えた。

「むっ!! それはカメラと呼ばれる物を構えておるだろう! 前回はまんまとやられてしまったが、今回は事前に防いでやるぞ! 今すぐスマホを下ろすのだ!」

「あー、ばれちゃった。残念、残念。なら、カメラではなく肉眼で銀籠さんを心ゆくまで収めようかな。あ、でも心ゆくまでだと一生ここに居ないといけないな。学校辞めないと」

「なっ、何を言っておる!! わ、わかった!! わかったから!! むむむ……。い、一枚なら良いぞ……」

 頬を膨らませ、銀籠はぷんぷんと怒りながら顔を背ける。

 あららっと、眉を下げながらも優輝は怒っている銀籠を一枚、カメラに収めた。

「なっ!! なぜ今撮ったのだ!!」

「かわいかったから」

「かっ!? 可愛くなどない!」

 何でも正直に話す優輝に、銀籠はもうたじたじ。言葉では怒っているものの、表情はどこか楽しんでいた。

 すると、銀籠の後ろから狼姿の銀が姿を現した。


 二人の時間は大体一時間。
 これ以上だと、優輝が学校の宿題や陰陽師としての術の維持をするための修行時間がなくなる。

 それを指摘しつつ、子供のように不貞腐れる優輝を、いつも銀は無理やり帰らせていた。

 今日も銀が来たことで、優輝は落ち込み、唇を尖らせ不貞腐れる。

「なんか、優輝の反応を見るたび、悲しいのじゃが…………」

「いえ、銀さんとも会えて嬉しいのですが、来たという事はもう帰らなければいけない時間なんだと思って……」

 スマホの時間を見ると、森に来てから確かに一時間経っていた。

 優輝は眉を下げ、最後にと銀籠を見つめる。
 ジィっと見られ、銀籠はいたたまれなくなり、そそくさと居なくなってしまった。

「あっ! 銀籠さん…………」

「残念だったのぉ」

「本当に残念です。では、また明日も来ます」

「待っておる」

 銀は去って行く優輝を見送り、肩を竦めつつ銀籠の元へと歩き出した。

 ※

 屋敷に戻った優輝は気だるげに「ただいま」と玄関を潜り、自室へと歩く。

 途中、女中が出迎え、荷物や上着を渡す。
 廊下を歩いていると、前方から神楽が向かってきた。

「優輝、お帰り。毎日毎日飽きないねぇ」

「飽きないよ。いつもいつも、新しい表情を見せてくれるんだ。今では普通にお話も出来る。まだ自分から話してはくれないけど、話題があれば盛り上がるんだよ。本当に楽しい」

「ふーん」

 微笑みながら、優輝は銀籠について話す。

 今まではどんなに可愛くて綺麗な女性が寄ってきても、今みたいな優しい表情は浮かべる事はなかった。

 それを知っている神楽は、意外という顔を浮かべつつ、、話を聞いている。

「本当に、銀籠さんの事が好きなんだね」

「当たり前なこと言わないで」

「でも、いいの? 銀籠さんはあやかし。生きている世界が違うんだよ? お互い絶対苦労するし、銀籠さんは人が嫌いだから、迷惑に思われてない?」

 神楽の言葉に、優輝は今まで浮かべていた笑みは消した。
 目を伏せ、ぼそぼそと話し出す。

「うん、わかっているよ。俺と銀籠さんでは生きている時間、生活リズム、考え、感じ方。すべてが違う。銀籠さんの父親である銀さんにも、同じようなことを言われた」

 横に垂らしている手で自身の裾を掴み、顔を俯かせる。
 一度言葉を切った優輝の、次の言葉を神楽は何も言わずに待った。

「――――それでも、俺は銀籠さんに一目ぼれしたんだ。今はまだ知らないことが多いし、感覚の違いに戸惑う事もあると思う。大変で、辛い時も必ずある。それでも、絶対に俺が銀籠さんを嫌いになる事はない」

 再度、顔を上げると、水色の瞳には覚悟の炎がメラメラと燃え上がっていた。

 一瞬、神楽の身体が震え、それと同時に鳥肌が立つ。
 口角が上がり、目を細め微笑んだ。

「…………なら、必ず落としてきなさいよ。それで、私に紹介する時は必ず、貴方の恋人………いや、夫? 妻? として、紹介しなさいね」

 優輝の肩を叩き、親指を立てウインクした。

「うん、ありがとう、姉さん」

「当たり前でしょ! 私は貴方のお姉さんだからさ! 大好きな弟の幸せは、私の幸せ。頑張りなさい! 応援してるから!」

 神楽がウィンクをして、優輝の背中を押しこの話は終わる。

 直ぐに自室へと足を進めた優輝の後ろ姿を見て、神楽は浮かべていた笑みを消し、振っていた手を下ろした。

「────これをチャンスと思うのは、本当に最低よね……私……」
感想 2

あなたにおすすめの小説

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

恋をあきらめた美人上司、年下部下に“推し”認定されて逃げ場がない~「主任が笑うと、世界が綺麗になるんです」…やめて、好きになっちゃうから!

中岡 始
BL
30歳、広告代理店の主任・安藤理玖。 仕事は真面目に、私生活は質素に。美人系と言われても、恋愛はもう卒業した。 ──そう、あの過去の失恋以来、自分の心は二度と動かないと決めていた。 そんな理玖の前に現れたのは、地方支社から異動してきた新入部下、中村大樹(25)。 高身長、高スペック、爽やかイケメン……だけど妙に距離が近い。 「主任って、本当に綺麗ですね」 「僕だけが気づいてるって、ちょっと嬉しいんです」 冗談でしょ。部下だし、年下だし── なのに、毎日まっすぐに“推し活”みたいな視線で見つめられて、 いつの間にか平穏だったはずの心がざわつきはじめる。 手が触れたとき、雨の日の相合い傘、 ふと見せる優しい笑顔── 「安藤主任が笑ってくれれば、それでいいんです」 「でも…もし、少しでも僕を見てくれるなら──もっと、近づきたい」 これは恋?それともただの憧れ? 諦めたはずの心が、また熱を持ちはじめる。

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。