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一陽来復
「陰陽寮で住むという事か?」
狗神の件が片付き、銀籠が素直に気持ちを伝えてからというものの、今だ優輝は距離感に悩んでいた。
「…………優輝よ、今までの距離感はどうした?」
「いえ、お気になさらず。少々心が荒ぶっているだけなので」
優輝はいつものように森へ来て、銀籠も出迎え今は話しているのだが、何故か距離感がおかしい。
いつもは隣同士の木に背中を預け話しているのだが、今は違う。
二人の間に木が三本挟まっており、初めて会った時くらいの距離が開いていた。
銀籠はなぜここまで距離が離れているのかわからず問いかけるが、優輝の返答は曖昧なもの。
何故心が荒ぶっているのか、なんで敬語なのか。
じぃっと優輝を見つめ問いただそうとするも、顔を逸らされている為目すら合わせることが出来ない。
彼の態度にぷぅと頬を膨らませ、銀籠は子供のようにいじけてしまった。
「我と話すのが嫌なのだな、優輝」
「え、そそそそそ、そんなことあるわけないじゃん!! 話したいよ声を聞きたい触れたい抱きしめたいよ!」
「なら、何故そんなに離れているのだ。優輝なら問題なく話せるのだぞ、近づくことだって出来る。我だって、優輝に触れたいぞ……」
「っ! …………ワカッタ」
ゆっくりと近づき、木に背中を預けている銀籠の隣まで移動。
ピタッと止まると、突如両手で顔を抑えた。
「幸せだぁぁぁぁああ」
「今までと何も変わらんがな。それどころか距離が離れているがな」
いつもの距離に戻り、優輝は幸せを嚙みしめている。
銀籠は口元を引き攣らせているが、幸せなのは同じ。口元に手を当てくすくすと笑った。
「まったく、そこまで嬉しいか。我は、そんな大したあやかしではないぞ」
「そう思っているのは銀籠さんだけだよ。銀籠さんは容姿端麗、真面目で優しく、儚く美しい。他にも色々素敵な所はあるけど、聞く?」
「いや、大丈夫だ」
「照れている銀籠さんも可愛くて、いじめたいなぁと思う」
「いじめっ!?」
「あっ」
サッと後ろに下がってしまった銀籠に、しまったと思い優輝は「嘘だよ嘘!」と慌てて弁明。
だが、銀籠は眉間に皺を寄せムムムッと、疑いの目を向ける。
「い、嫌な事はしないよ。ちょっと、照れた顔が見たいなぁ、とか。俺が銀籠さんを慌てさせているなぁ、とか。俺が何かすると、銀籠さんが反応してくれるのが嬉しくて、可愛くて。だから、えっと…………。いじめたいというのは、酷い事をしたいとかではなく、自分を見てくれている銀籠さんを堪能したいという気持ちの裏返しというか……」
照れながらも本心を伝えてくれる優輝に、銀籠もつられて赤くなる。
ここまで素直に言われてしまうと怒るに怒れず、でも何か言ってやらないと気が済まない気持ちもあり、赤い顔を片手で隠しつつも口を開いた。
「え、えっと……。我は、もうそなたのものだぞ? それはいつでも堪能できる。だから、そんな今意識しなくても……ん? 優輝?」
必死に銀籠が伝えていると、優輝は体を固まらせ変な顔を浮かべた。
「………………………………銀籠さん、それ、天然?」
「ん? よくわからんが、気持ちをそのまま伝えているだけだぞ」
「…………誰か助けて、俺の恋人が俺を煽ってくる。可愛い、可愛いよ。煽らないで」
優輝がまたしても顔を隠し何かを言っている。
何が起きたんだろうと首を傾げている銀籠は、優輝が落ち着くのを待つしかできない。
そんな時、燦々と上から白い何かが降ってきた。
「あっ、優輝」
「ん? 何?」
「雪だ。今回のは積もるかもしれぬぞ」
「あ、本当だね」
上を向くと、白い空から雪が降ってきた。
白く輝いている雪は、銀籠の手に触れるとすぐに解けなくなった。
「――――ねぇ、銀籠さん」
「ん? なんだ?」
「銀籠さん、まだ俺以外の人は怖い?」
白い息を吐きながら、優輝は真っすぐ彼を見て問いかけた。
息を飲み、目線を逸らしむむむっと銀籠は考える。
「…………あぁ、さすがに優輝以外の人間はまだ怖い。狗神の時は、必死だったため夕凪に触れる事が出来たが、改めて触れろと言われると、わからぬ」
「そうだよね、ごめん。いきなりそんな事を聞いて。責めている訳じゃないんだ。人が怖いって気持ちも、今後少しずつ克服できればいいと思っているだけ」
「それなら、何故今聞いて来たのだ?」
「これから、森で暮すには大変になるでしょ? 食料も手に入れにくくなるし、寒い。小屋も、今は狗神の件でぼろぼろだから、軽く修繕したとしても隙間風で体が冷えるでしょ? だから、もし銀籠さんが良かったら九重家に来ないかなって思って…………」
「…………っ、え? つまり、我達が九重家の陰陽寮で住むという事か?」
「そういう事」
優輝がそんなことを言うなんて信じられないと、目を大きく開き唖然。
優輝と共に過ごせるのなら願ったり叶ったり。人が沢山居る陰陽寮に行くのは怖いが、優輝がいれば問題はない。
そんな気持ちが銀籠の中には存在する。
だが、気持ちだけで行動してはいけない。
今はもう付き合っているとはいえ、二人の関係はあやかしと陰陽師。
しかも、男性同士。世間体が悪すぎる。
周りの目が刺さるのは銀籠ではなく、陰陽寮に入っている優輝の方だ。
優輝はこれから九重家の当主になるとも決めている。
気持ちばかりを優先して、安易に決めてはならない。
それを伝え、断ろうと銀籠は眉を下げ口を開いたが、それより先に優輝が口を開いてしまい何も伝える事が出来なかった。
「…………優輝よ、今までの距離感はどうした?」
「いえ、お気になさらず。少々心が荒ぶっているだけなので」
優輝はいつものように森へ来て、銀籠も出迎え今は話しているのだが、何故か距離感がおかしい。
いつもは隣同士の木に背中を預け話しているのだが、今は違う。
二人の間に木が三本挟まっており、初めて会った時くらいの距離が開いていた。
銀籠はなぜここまで距離が離れているのかわからず問いかけるが、優輝の返答は曖昧なもの。
何故心が荒ぶっているのか、なんで敬語なのか。
じぃっと優輝を見つめ問いただそうとするも、顔を逸らされている為目すら合わせることが出来ない。
彼の態度にぷぅと頬を膨らませ、銀籠は子供のようにいじけてしまった。
「我と話すのが嫌なのだな、優輝」
「え、そそそそそ、そんなことあるわけないじゃん!! 話したいよ声を聞きたい触れたい抱きしめたいよ!」
「なら、何故そんなに離れているのだ。優輝なら問題なく話せるのだぞ、近づくことだって出来る。我だって、優輝に触れたいぞ……」
「っ! …………ワカッタ」
ゆっくりと近づき、木に背中を預けている銀籠の隣まで移動。
ピタッと止まると、突如両手で顔を抑えた。
「幸せだぁぁぁぁああ」
「今までと何も変わらんがな。それどころか距離が離れているがな」
いつもの距離に戻り、優輝は幸せを嚙みしめている。
銀籠は口元を引き攣らせているが、幸せなのは同じ。口元に手を当てくすくすと笑った。
「まったく、そこまで嬉しいか。我は、そんな大したあやかしではないぞ」
「そう思っているのは銀籠さんだけだよ。銀籠さんは容姿端麗、真面目で優しく、儚く美しい。他にも色々素敵な所はあるけど、聞く?」
「いや、大丈夫だ」
「照れている銀籠さんも可愛くて、いじめたいなぁと思う」
「いじめっ!?」
「あっ」
サッと後ろに下がってしまった銀籠に、しまったと思い優輝は「嘘だよ嘘!」と慌てて弁明。
だが、銀籠は眉間に皺を寄せムムムッと、疑いの目を向ける。
「い、嫌な事はしないよ。ちょっと、照れた顔が見たいなぁ、とか。俺が銀籠さんを慌てさせているなぁ、とか。俺が何かすると、銀籠さんが反応してくれるのが嬉しくて、可愛くて。だから、えっと…………。いじめたいというのは、酷い事をしたいとかではなく、自分を見てくれている銀籠さんを堪能したいという気持ちの裏返しというか……」
照れながらも本心を伝えてくれる優輝に、銀籠もつられて赤くなる。
ここまで素直に言われてしまうと怒るに怒れず、でも何か言ってやらないと気が済まない気持ちもあり、赤い顔を片手で隠しつつも口を開いた。
「え、えっと……。我は、もうそなたのものだぞ? それはいつでも堪能できる。だから、そんな今意識しなくても……ん? 優輝?」
必死に銀籠が伝えていると、優輝は体を固まらせ変な顔を浮かべた。
「………………………………銀籠さん、それ、天然?」
「ん? よくわからんが、気持ちをそのまま伝えているだけだぞ」
「…………誰か助けて、俺の恋人が俺を煽ってくる。可愛い、可愛いよ。煽らないで」
優輝がまたしても顔を隠し何かを言っている。
何が起きたんだろうと首を傾げている銀籠は、優輝が落ち着くのを待つしかできない。
そんな時、燦々と上から白い何かが降ってきた。
「あっ、優輝」
「ん? 何?」
「雪だ。今回のは積もるかもしれぬぞ」
「あ、本当だね」
上を向くと、白い空から雪が降ってきた。
白く輝いている雪は、銀籠の手に触れるとすぐに解けなくなった。
「――――ねぇ、銀籠さん」
「ん? なんだ?」
「銀籠さん、まだ俺以外の人は怖い?」
白い息を吐きながら、優輝は真っすぐ彼を見て問いかけた。
息を飲み、目線を逸らしむむむっと銀籠は考える。
「…………あぁ、さすがに優輝以外の人間はまだ怖い。狗神の時は、必死だったため夕凪に触れる事が出来たが、改めて触れろと言われると、わからぬ」
「そうだよね、ごめん。いきなりそんな事を聞いて。責めている訳じゃないんだ。人が怖いって気持ちも、今後少しずつ克服できればいいと思っているだけ」
「それなら、何故今聞いて来たのだ?」
「これから、森で暮すには大変になるでしょ? 食料も手に入れにくくなるし、寒い。小屋も、今は狗神の件でぼろぼろだから、軽く修繕したとしても隙間風で体が冷えるでしょ? だから、もし銀籠さんが良かったら九重家に来ないかなって思って…………」
「…………っ、え? つまり、我達が九重家の陰陽寮で住むという事か?」
「そういう事」
優輝がそんなことを言うなんて信じられないと、目を大きく開き唖然。
優輝と共に過ごせるのなら願ったり叶ったり。人が沢山居る陰陽寮に行くのは怖いが、優輝がいれば問題はない。
そんな気持ちが銀籠の中には存在する。
だが、気持ちだけで行動してはいけない。
今はもう付き合っているとはいえ、二人の関係はあやかしと陰陽師。
しかも、男性同士。世間体が悪すぎる。
周りの目が刺さるのは銀籠ではなく、陰陽寮に入っている優輝の方だ。
優輝はこれから九重家の当主になるとも決めている。
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