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一陽来復
「「気のせい」」
銀籠と銀に提案してから、本当に三日後に準備を整え優輝は森へやってきた。
「ぜぇ、はぁ……。時間がかかって、っ、しまい。すいまっ、せん。準備が、はぁ、整いました」
「いや、早すぎるぐらいだぞ。しかも、全速力で走ってきたのか? この、雪の中?」
外は燦々と雪が降っており、景色は真っ白。
歩くだけでも大変な道を、優輝はわざわざ走ってきたのか額から汗が流れ、息が荒い。
鼻と頬は赤くなっており、小屋の出入口でへたり込んでいた。
「…………ひとまず、中に入れ」
優輝を小屋の中へ入れ、肩に毛布を掛ける。
囲炉裏の前に移動させ、隣に銀籠、向かいに銀が狼姿で座った。
「はぁ、はぁ…………。すいません、早く知らせたくて、全速力で来たら、はぁ……」
「今は話さず、ゆっくり休め。隙間風などが入り寒いと思うが…………」
「隣に座る銀籠さんから感じる温もりで温かいから大丈夫だよ」
「父上、優輝の頭が今まで以上におかしくなってしまったらしい。この寒さだ、人間である優輝なら意識が朦朧としていても仕方がない。もっと温かくなるものはないか」
「冷静じゃのぉ、銀籠。じゃが、残念。普段から優輝はおかしい、これは正常だ」
腕を組み、銀は二人の会話を軽く受け流さす。
親子の会話を聞く余裕がないほど疲れている優輝は、銀籠の声だけを耳に入れ、自分が心配されているという気持ちで癒されていた。
「幸せ…………」
「…………確かにいつも以上に頭がおかしいやもしれぬな。早急に何とかしなければならんかもしれぬ」
「我もそう思う」
冷たい瞳で見られ続けている優輝は、やっと体力が回復し大きく息を吐いた。
「はぁぁあ、何とか回復してきました。今だから理解出来るけど、さっきから結構酷いこと言ってませんでしたか?」
「「気のせい」」
銀籠と銀は顔を逸らし、声を合わせる。
優輝はジィっと二人を見るが、これ以上は何も返ってこない事を察すると再度気を取り直すため咳払いをする。
「まぁ、いいです。それより、俺はもう行けますが、銀籠さん達は行けますか?」
優輝の問いかけに二人は顔を見合せ、頷く。
「我らも大丈夫だ。それなら、行こう」
「やったー!」
この中で一番喜んだのは、他の誰でもない優輝自身だった。
※
優輝と共に、銀と銀籠は九重家に来た。
自然に囲まれている和風建築の寮。
だが、今は冬。緑は散り、紅葉の時期も過ぎ去り、今は銀世界を作り出していた。
寮の出入り口には開成と神楽、夕凪が立っている。
最初、銀籠は息を飲み体をこわばらせたが、優輝が背中をさすり安心させたため、問題は無い。
「大丈夫、あの人達は大丈夫だよ」
「…………あぁ」
眉を下げ不安そうに出入り口にいる三人を見た。
彼の様子に、神楽はふんっと息を鳴らし、夕凪はくすくすと笑う。
開成が銀に手招きをしたため、「先に行っている」と伝え二人から離れ三人へと近づいた。
「前に話は聞いていたが、まさか現実になるとは思っていなかったぞ。本当にお前の息子は大丈夫なのか?」
「銀籠は優輝がいれば特に問題は無い。学校に行っている時や陰陽師としての仕事をしている時は邪魔しないように部屋を準備してもらえると助かる。それより、そちらさんは大丈夫か? 式神以外で、陰陽寮にあやかしを入れるなど聞いたことないじゃろ?」
「確かにそうだ、聞いたことない。だが、問題ないぞ、ワシらの陰陽寮の場合は特に」
九重家はあやかしだろうと、人間に被害を与えないのならこちらからも何もしない。
そんな、九重家のやり方をよく思っていないところはもちろんある。だが、九重家は陰陽寮のトップとして君臨し続ける事が出来ていた。
その理由は簡単、実力が高いからだ。
九重家に住むすべての陰陽師は技量が高く、力だけで上に立っている。
だから、良くは思っていないが、手を出す事が出来ないでいた。
それらを思い出し、銀は「あー、そうか」と変に納得した。
「…………確かに銀籠も不安だが、隣に立つ女性についても不安なんじゃが?」
「なぜ私を見るのですか銀さん。私は特に何もしませんが?」
「なんだか怪しいんじゃよなぁ、嫉妬の炎が見えるぞ?」
「なっ! 嫉妬なんてしてない!!」
神楽が顔を赤くしながら銀に向かって叫ぶ。
夕凪はくすくすと笑い、宥めるように神楽の頭を撫でた。
「銀様、私も時々ここへ来ようかと思っていましたが、銀籠さんがいるのでしたら数は減らした方がよろしいのでしょうか?」
「駄目、私が許さない。毎日遊びに来て」
夕凪の申し出に神楽がいち早く反応、目をキッと吊り上げ言った。
「優輝の姉がそう言っているのだ、ワシらの事は気にせんでいいぞ。わしらが今回、居候させてもらう側なのじゃから」
「そう、わかりました。では、もうそろそろ後ろのお二人を迎え入れましょう」
後ろを向くと、二人は目を丸くしながら四人の話が終わるのを大人しく待っていた。
こういう所は二人とも素直なため、その場から動かず見上げているだけ。
「それもそうだな。優輝、もう来ても良い。半妖も連れてこい」
やっと来ても良いと言われたため、優輝は銀籠の手を取り、転ばないように歩き始めた。
「ぜぇ、はぁ……。時間がかかって、っ、しまい。すいまっ、せん。準備が、はぁ、整いました」
「いや、早すぎるぐらいだぞ。しかも、全速力で走ってきたのか? この、雪の中?」
外は燦々と雪が降っており、景色は真っ白。
歩くだけでも大変な道を、優輝はわざわざ走ってきたのか額から汗が流れ、息が荒い。
鼻と頬は赤くなっており、小屋の出入口でへたり込んでいた。
「…………ひとまず、中に入れ」
優輝を小屋の中へ入れ、肩に毛布を掛ける。
囲炉裏の前に移動させ、隣に銀籠、向かいに銀が狼姿で座った。
「はぁ、はぁ…………。すいません、早く知らせたくて、全速力で来たら、はぁ……」
「今は話さず、ゆっくり休め。隙間風などが入り寒いと思うが…………」
「隣に座る銀籠さんから感じる温もりで温かいから大丈夫だよ」
「父上、優輝の頭が今まで以上におかしくなってしまったらしい。この寒さだ、人間である優輝なら意識が朦朧としていても仕方がない。もっと温かくなるものはないか」
「冷静じゃのぉ、銀籠。じゃが、残念。普段から優輝はおかしい、これは正常だ」
腕を組み、銀は二人の会話を軽く受け流さす。
親子の会話を聞く余裕がないほど疲れている優輝は、銀籠の声だけを耳に入れ、自分が心配されているという気持ちで癒されていた。
「幸せ…………」
「…………確かにいつも以上に頭がおかしいやもしれぬな。早急に何とかしなければならんかもしれぬ」
「我もそう思う」
冷たい瞳で見られ続けている優輝は、やっと体力が回復し大きく息を吐いた。
「はぁぁあ、何とか回復してきました。今だから理解出来るけど、さっきから結構酷いこと言ってませんでしたか?」
「「気のせい」」
銀籠と銀は顔を逸らし、声を合わせる。
優輝はジィっと二人を見るが、これ以上は何も返ってこない事を察すると再度気を取り直すため咳払いをする。
「まぁ、いいです。それより、俺はもう行けますが、銀籠さん達は行けますか?」
優輝の問いかけに二人は顔を見合せ、頷く。
「我らも大丈夫だ。それなら、行こう」
「やったー!」
この中で一番喜んだのは、他の誰でもない優輝自身だった。
※
優輝と共に、銀と銀籠は九重家に来た。
自然に囲まれている和風建築の寮。
だが、今は冬。緑は散り、紅葉の時期も過ぎ去り、今は銀世界を作り出していた。
寮の出入り口には開成と神楽、夕凪が立っている。
最初、銀籠は息を飲み体をこわばらせたが、優輝が背中をさすり安心させたため、問題は無い。
「大丈夫、あの人達は大丈夫だよ」
「…………あぁ」
眉を下げ不安そうに出入り口にいる三人を見た。
彼の様子に、神楽はふんっと息を鳴らし、夕凪はくすくすと笑う。
開成が銀に手招きをしたため、「先に行っている」と伝え二人から離れ三人へと近づいた。
「前に話は聞いていたが、まさか現実になるとは思っていなかったぞ。本当にお前の息子は大丈夫なのか?」
「銀籠は優輝がいれば特に問題は無い。学校に行っている時や陰陽師としての仕事をしている時は邪魔しないように部屋を準備してもらえると助かる。それより、そちらさんは大丈夫か? 式神以外で、陰陽寮にあやかしを入れるなど聞いたことないじゃろ?」
「確かにそうだ、聞いたことない。だが、問題ないぞ、ワシらの陰陽寮の場合は特に」
九重家はあやかしだろうと、人間に被害を与えないのならこちらからも何もしない。
そんな、九重家のやり方をよく思っていないところはもちろんある。だが、九重家は陰陽寮のトップとして君臨し続ける事が出来ていた。
その理由は簡単、実力が高いからだ。
九重家に住むすべての陰陽師は技量が高く、力だけで上に立っている。
だから、良くは思っていないが、手を出す事が出来ないでいた。
それらを思い出し、銀は「あー、そうか」と変に納得した。
「…………確かに銀籠も不安だが、隣に立つ女性についても不安なんじゃが?」
「なぜ私を見るのですか銀さん。私は特に何もしませんが?」
「なんだか怪しいんじゃよなぁ、嫉妬の炎が見えるぞ?」
「なっ! 嫉妬なんてしてない!!」
神楽が顔を赤くしながら銀に向かって叫ぶ。
夕凪はくすくすと笑い、宥めるように神楽の頭を撫でた。
「銀様、私も時々ここへ来ようかと思っていましたが、銀籠さんがいるのでしたら数は減らした方がよろしいのでしょうか?」
「駄目、私が許さない。毎日遊びに来て」
夕凪の申し出に神楽がいち早く反応、目をキッと吊り上げ言った。
「優輝の姉がそう言っているのだ、ワシらの事は気にせんでいいぞ。わしらが今回、居候させてもらう側なのじゃから」
「そう、わかりました。では、もうそろそろ後ろのお二人を迎え入れましょう」
後ろを向くと、二人は目を丸くしながら四人の話が終わるのを大人しく待っていた。
こういう所は二人とも素直なため、その場から動かず見上げているだけ。
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