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エピローグ
異世界転生してやろう!
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私は投稿確認の文字をタップした。
私が二年前から投稿し始めた【魔王自ら勇者を育成してやろう!】も明日幕を閉じる。
感慨深いものだ。
描き始めた頃は完結させようと思って書いてなかった。
どうせ直ぐに飽きるのだからと手の赴くままに書いた。
この話は私の夢が元になっている。
夢では私が魔王だった。
自分のことを『我が輩』とか呼ぶイタいキャラで、周りの人を振り回す身勝手な奴だった。
その周りの人だってそうだ。
コレールはずっとビクビクしていて、ボースハイトは自己中心的で、グロルは裏表が激しくて。
みんな見ていてイライラした。
でも、私は夢を繰り返し見ているうちに彼らに愛着を持つようになった。
この夢を忘れたくないと思った私は、文章にして残すことにした。
最近では手軽に自作小説を投稿出来ることを知っていたため、私は書き出した彼らの話を投稿し始めたのだ。
エタる──途中で書くのをやめる前提で書き始めたが、それは杞憂だった。
私は無事最後まで夢を見て、小説を完結させた。
□
私は有名なチェーン店のレストランの行列に並んでいた。
暇だった私はスマホで【魔王自ら勇者を育成してやろう!】のアクセス数をチェックした。
大体ゼロが並んでいるが、作者としては気になるから仕方ない。
「ウィナ……」
後ろからそんな独り言が聞こえた。
ウィナはアクセス数をチェックした作品の主人公の名前だ。
画面を見られたと思った私は咄嗟に画面を閉じ、振り返る。
後ろに並んでいた眼鏡の青年とバチッと目が合った。
「す、すみません。の、覗くつもりは、なかったんですけど……」
青年は口ごもりながら目を泳がせる。
今私が開いていたのはアクセス数が見れるページだった。
『ウィナ』という単語は書かれていないはず。
まさか、数少ない読者の一人?
というか、アクセス数を見ていたところを見られたってことは、私が作者だとバレたかもしれない。
私は恥ずかしくなって顔がだんだん熱くなってきた。
「貴女も、読んでるんですか? その小説」
「え?」
「奇遇ですね!」
もしかして、彼は私を作者だと思ってないんだろうか。
ただの一読者としてしか見られていないのなら好都合だ。
「面白いですよね~」と当たり障りない返答をして、会話を終わらせよう。
「これ、読んでるって、周りには言いづらくて」
青年は頬をぽりぽりと掻く。
なろう系小説は、ど素人が書いてるから内容もピンキリだ。
偏見がある人がいても仕方がない。
まあ、私はキリの方なんだけども。
「あの、良かったら、なんですけど──この後、語りません?」
「……え?」
□
読者の青年は注文したスパゲッティセットにも手をつけず、語りに語った。
まあ、私の書いた小説の感想を語るものだから、身体がくすぐったくて仕方がなかった。
飲み物を飲んで気を紛らわせつつ、青年の話を聞く。
「ウィナは、あの後、どうなったのかな……」
一通り語った後、青年はそう漏らした。
「あの後も何も。あれで完結したじゃないですか」
魔王が心血を注いだ魔法で世界の魔族を根絶した。
それで終わりだ。
その先はない。
私もあの夢の続きは全く見ない。
「俺は、あれで終わりなんて、嫌です!」
最終回を認めたくない気持ちはとてもわかる。
私も終わるのが嫌で、最終回を未だに見れていない作品がいくつもある。
私にもそんな熱狂的なファンがついてくれていたんだな、なんて嬉しく思ってしまった。
「──相席、良いですか?」
スーツの若い男性が手に紅茶を持って、話に入ってきた。
店内をちらっと見やれば空席が直ぐに見つかった。
なのに相席なんてどういうつもりなんだろうか。
「どうします?」と私は読者の青年に声をかける。
青年は男性を見て固まっていた。
「……お知り合いですか?」
「い、いや……」
「デートのお邪魔だったかな? 興味深い話が聞こえてきたから、つい」
男性は私の隣に座った。
許可も出してないのになんて自己中心的な人なんだろう。
早くここから離れたい。
「ウィナの話をしてたよね?」
「え!」
まさかこの男性も読者だったのだろうか?
この広い日本で、知名度のない私の作品を読んでる人が、このレストランに二人もいたと?
そんな偶然あるはずがない。
私、何か詐欺に引っかかっているのでは……?
「お前は何処まで覚えてるの?」
スーツの男性が何を言っているのかわからなかった。
ほとほと困り果てていると眼鏡の青年が代わりに答える。
「多分、ほぼ全て」
「羨ましい。僕は後半しか覚えてなかったな」
話についていけなくて、私は勇気を出して言ってみる。
「あの、お邪魔なら私は帰ります」
スーツの男性はニッコリと笑って「駄目」と言った。
「お前は覚えてないの?」
「な、何をですか」
「前世」
「はあ?」
前世なんてなろう系の話か?
残念ながら、私の書いた【魔王自ら勇者を育成してやろう!】は異世界転生ものじゃない。
「本当に帰らせて下さい」
男性は意地の悪そうに笑って動いてくれない。
青年もおろおろしてるだけで頼りない。
「ちょっと!」
そこにランドセルを背負った少年が現れた。
店の外ではチラホラと小学生が歩いている。
もうそんな時間になっていたのか。
「その人、嫌がってるじゃないですか! 解放してあげて下さい!」
小学生はとても緊張した面持ちだった。
怖いのに勇気を出してくれたのだろう。
なんて良い子なんだ、と思っていたら小学生はニカっとと笑った。
「……なーんてな。久しぶり、お前ら!」
小学生は私の手を掴んでぶんぶんと上下に振った。
「ええと、どちら様……?」
「グロルだよ、グロル! 前世で仲間だっただろ!」
小学生はグロルのように大きく口を開けて笑う。
私は思考が止まってしまった。
グロルって……グロル?
私の夢に出て来た……?
「いやー、意外と見りゃわかるもんだなあ。ウィナの魔法の効果か?」
「グロルグロル」
眼鏡の青年がグロルと名乗る少年の肩を叩く。
「ウィナは、前世の記憶が、ないみたいで……」
「え、コレール、それマジ?」
「そうだよ。今、ウィナちゃんは見知らぬ人がフレンドリーに話しかけて前世とか言い始めたからヤバい人認定してるとこだよ」
「ぼ、ボース、わかっててやってたのか……」
コレール、ボースハイト、グロル。
何度も聞いて、何度も口にした名前。
なんで目の前の男達がその名前で呼び合うんだ。
あれは夢の中の話のはず……。
「は、話についていけないんですが……?」
おどおどとしながら青年は言った。
「し、信じて貰えないかもしれないんですけど、俺の前世は【魔王自ら勇者を育成しよう!】のコレールなんですよ」
くすくすと笑いながら男性は言った。
「僕の前世はボースハイト」
ランドセルを背負った少年は言った。
「俺の前世はグロル!」
「貴女の前世はウィナのはずです。俺だけじゃなく、ボースもグロルも、直感的にそう思ったんだから、間違いない、と思う」
あの夢は私の前世?
「色々言いたいことがあるんだ」
「前世ではよくも約束を破ってくれたね」
「これから覚悟しとけよ」
私の夢はあれで終わり。
私の現実はここから始まるらしい。
私が二年前から投稿し始めた【魔王自ら勇者を育成してやろう!】も明日幕を閉じる。
感慨深いものだ。
描き始めた頃は完結させようと思って書いてなかった。
どうせ直ぐに飽きるのだからと手の赴くままに書いた。
この話は私の夢が元になっている。
夢では私が魔王だった。
自分のことを『我が輩』とか呼ぶイタいキャラで、周りの人を振り回す身勝手な奴だった。
その周りの人だってそうだ。
コレールはずっとビクビクしていて、ボースハイトは自己中心的で、グロルは裏表が激しくて。
みんな見ていてイライラした。
でも、私は夢を繰り返し見ているうちに彼らに愛着を持つようになった。
この夢を忘れたくないと思った私は、文章にして残すことにした。
最近では手軽に自作小説を投稿出来ることを知っていたため、私は書き出した彼らの話を投稿し始めたのだ。
エタる──途中で書くのをやめる前提で書き始めたが、それは杞憂だった。
私は無事最後まで夢を見て、小説を完結させた。
□
私は有名なチェーン店のレストランの行列に並んでいた。
暇だった私はスマホで【魔王自ら勇者を育成してやろう!】のアクセス数をチェックした。
大体ゼロが並んでいるが、作者としては気になるから仕方ない。
「ウィナ……」
後ろからそんな独り言が聞こえた。
ウィナはアクセス数をチェックした作品の主人公の名前だ。
画面を見られたと思った私は咄嗟に画面を閉じ、振り返る。
後ろに並んでいた眼鏡の青年とバチッと目が合った。
「す、すみません。の、覗くつもりは、なかったんですけど……」
青年は口ごもりながら目を泳がせる。
今私が開いていたのはアクセス数が見れるページだった。
『ウィナ』という単語は書かれていないはず。
まさか、数少ない読者の一人?
というか、アクセス数を見ていたところを見られたってことは、私が作者だとバレたかもしれない。
私は恥ずかしくなって顔がだんだん熱くなってきた。
「貴女も、読んでるんですか? その小説」
「え?」
「奇遇ですね!」
もしかして、彼は私を作者だと思ってないんだろうか。
ただの一読者としてしか見られていないのなら好都合だ。
「面白いですよね~」と当たり障りない返答をして、会話を終わらせよう。
「これ、読んでるって、周りには言いづらくて」
青年は頬をぽりぽりと掻く。
なろう系小説は、ど素人が書いてるから内容もピンキリだ。
偏見がある人がいても仕方がない。
まあ、私はキリの方なんだけども。
「あの、良かったら、なんですけど──この後、語りません?」
「……え?」
□
読者の青年は注文したスパゲッティセットにも手をつけず、語りに語った。
まあ、私の書いた小説の感想を語るものだから、身体がくすぐったくて仕方がなかった。
飲み物を飲んで気を紛らわせつつ、青年の話を聞く。
「ウィナは、あの後、どうなったのかな……」
一通り語った後、青年はそう漏らした。
「あの後も何も。あれで完結したじゃないですか」
魔王が心血を注いだ魔法で世界の魔族を根絶した。
それで終わりだ。
その先はない。
私もあの夢の続きは全く見ない。
「俺は、あれで終わりなんて、嫌です!」
最終回を認めたくない気持ちはとてもわかる。
私も終わるのが嫌で、最終回を未だに見れていない作品がいくつもある。
私にもそんな熱狂的なファンがついてくれていたんだな、なんて嬉しく思ってしまった。
「──相席、良いですか?」
スーツの若い男性が手に紅茶を持って、話に入ってきた。
店内をちらっと見やれば空席が直ぐに見つかった。
なのに相席なんてどういうつもりなんだろうか。
「どうします?」と私は読者の青年に声をかける。
青年は男性を見て固まっていた。
「……お知り合いですか?」
「い、いや……」
「デートのお邪魔だったかな? 興味深い話が聞こえてきたから、つい」
男性は私の隣に座った。
許可も出してないのになんて自己中心的な人なんだろう。
早くここから離れたい。
「ウィナの話をしてたよね?」
「え!」
まさかこの男性も読者だったのだろうか?
この広い日本で、知名度のない私の作品を読んでる人が、このレストランに二人もいたと?
そんな偶然あるはずがない。
私、何か詐欺に引っかかっているのでは……?
「お前は何処まで覚えてるの?」
スーツの男性が何を言っているのかわからなかった。
ほとほと困り果てていると眼鏡の青年が代わりに答える。
「多分、ほぼ全て」
「羨ましい。僕は後半しか覚えてなかったな」
話についていけなくて、私は勇気を出して言ってみる。
「あの、お邪魔なら私は帰ります」
スーツの男性はニッコリと笑って「駄目」と言った。
「お前は覚えてないの?」
「な、何をですか」
「前世」
「はあ?」
前世なんてなろう系の話か?
残念ながら、私の書いた【魔王自ら勇者を育成してやろう!】は異世界転生ものじゃない。
「本当に帰らせて下さい」
男性は意地の悪そうに笑って動いてくれない。
青年もおろおろしてるだけで頼りない。
「ちょっと!」
そこにランドセルを背負った少年が現れた。
店の外ではチラホラと小学生が歩いている。
もうそんな時間になっていたのか。
「その人、嫌がってるじゃないですか! 解放してあげて下さい!」
小学生はとても緊張した面持ちだった。
怖いのに勇気を出してくれたのだろう。
なんて良い子なんだ、と思っていたら小学生はニカっとと笑った。
「……なーんてな。久しぶり、お前ら!」
小学生は私の手を掴んでぶんぶんと上下に振った。
「ええと、どちら様……?」
「グロルだよ、グロル! 前世で仲間だっただろ!」
小学生はグロルのように大きく口を開けて笑う。
私は思考が止まってしまった。
グロルって……グロル?
私の夢に出て来た……?
「いやー、意外と見りゃわかるもんだなあ。ウィナの魔法の効果か?」
「グロルグロル」
眼鏡の青年がグロルと名乗る少年の肩を叩く。
「ウィナは、前世の記憶が、ないみたいで……」
「え、コレール、それマジ?」
「そうだよ。今、ウィナちゃんは見知らぬ人がフレンドリーに話しかけて前世とか言い始めたからヤバい人認定してるとこだよ」
「ぼ、ボース、わかっててやってたのか……」
コレール、ボースハイト、グロル。
何度も聞いて、何度も口にした名前。
なんで目の前の男達がその名前で呼び合うんだ。
あれは夢の中の話のはず……。
「は、話についていけないんですが……?」
おどおどとしながら青年は言った。
「し、信じて貰えないかもしれないんですけど、俺の前世は【魔王自ら勇者を育成しよう!】のコレールなんですよ」
くすくすと笑いながら男性は言った。
「僕の前世はボースハイト」
ランドセルを背負った少年は言った。
「俺の前世はグロル!」
「貴女の前世はウィナのはずです。俺だけじゃなく、ボースもグロルも、直感的にそう思ったんだから、間違いない、と思う」
あの夢は私の前世?
「色々言いたいことがあるんだ」
「前世ではよくも約束を破ってくれたね」
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