オンライン・メモリーズ ~VRMMOの世界に閉じ込められた。内気な小学生の女の子が頑張るダークファンタジー~

北条氏成

文字の大きさ
10 / 827

初めてのVRMMO6

「別に謝ることじゃないけど……あ、そうだ!」

 エミルは何かを思い出したようにぱちんと手を合わせると、徐ろに自分のコマンドを操作し始めた。空中で指を動かしている彼女の姿を、星は興味津々な様子で見つめていると、不意にエミルがにっこりと微笑んだ。

「――友達になった記念に、これを貴女にプレゼントするわ!」

 にこにこと微笑んでいる彼女の手には、柄に竜のエンブレムが入った古そうなロングソードが握られていた。

「ありがとうございます。……でも。これ大きい……です」

 不安そうな表情で、エミルの手の中の剣を困惑した表情で星が見つめている。

 星がそう思うのも無理はない。何故なら、その剣は星の身長の半分以上の大きさで、とても小柄な彼女に扱える代物とは到底考えられない。

「そう思うでしょ? でも、筋力補正があるから、今のままでも振るだけならできると思うわ。とりあえず、この剣を持って振ってみて」
「は、はい」

 星は剣を受け取ると、言われた通りにぶんぶんと振ってみた。

「あれ?」

 剣を振っている星は不思議な違和感を感じ、思わず首を傾げる。

「ふふっ。分かった? その長さだと、頑張っても素早く振れないでしょ?」
「は、はい」

 エミルは悪戯に笑うと、不思議そうな顔をしている星に話し掛ける。

「そう。この世界には重さは存在しない。でも一部の例外はある。それが戦闘における個の優位性よ」
「……この、ゆういせい?」

 急に難しい言葉が入ってきて、少し困惑した星が途端に難しい顔をする。
 それも無理はない。普通は個の優位性などという言葉を、小学生である彼女が耳にすることはないと言っても過言ではないのだから。

 エミルはそんな星の様子を楽しんでいる様に、にこにこと微笑んでいた。

「簡単に説明すると……そうねぇ~。星ちゃんはお団子は好き?」
「えっ? は、はい」
「そのお団子を、私は箸。星ちゃんは爪楊枝で食べるとするでしょ? その時に、私と星ちゃんが同時に動いて、同じ場所にあるお団子を取ろうとする。っとお団子はどうなるかしら?」
「えっと……箸より爪楊枝の方が短くて……だから。エミルさんに、取られる?」

 難しい顔をして考え込んでいた星がその質問に自信なさそうに答えると、エミルの顔色を窺うように見上げる。

「うん。正解! 星ちゃんは賢い子ねぇ~」
「えへへ」
 
 エミルに褒められて頭を撫でられ、嬉しそうに微笑む星に向かって再びエミルが説明を始めた。
 
「基本的に武器というものは、長ければ長いほどリーチと重さがある分。攻撃範囲と振り下ろした時の勢いが増して、必然的に攻撃力は高くなるわ。それが優位性――もし。それをそのまま放置してたら、日本人より身長の高い外国人が最強の無法地帯になるでしょ?」
「はい」
「それを阻止するために、このゲームにはバランス調整機能が付いてるの。さっきの筋力補正もそう、レベルによって持てる上限数値が上昇するけど最大値は皆同じ。ちょっとコマンドを開いてもらえる?」

 星はエミルに言われた通りに、覚束ない手付きでコマンドを開く。

 エミルは、星の指が止まったのを確認してから次の言葉を発する。

「――開いたら、オプションのバランス調節を押してみて」

 星は静かに頷き、バランス調節の項目を指で押した。
 その直後、手に持っていたロングソードが短くなり、星の体に合う丁度いい長さに変わった。

 それを確認したエミルにもう一度剣を振ってみるように言われ、その通りに握っていた剣を3回ほど振ってみた。

「……あっ、使いやすい」

 さっきまでの剣に振り回される様な違和感が完全に消え、スムーズに切り返しができるようになっていた。

「でも短くなった分、それがハンデになる。でも、その代わりに、武器攻撃力と攻撃速度に若干のボーナスポイントが付くから、あとは星ちゃん自身の腕でどうとでもなるわ」
「そう、なるかなぁ……」

 一抹の不安を残し、星は自信なさげに苦笑いした。
 元々自分に自信がある性格ではない星にとって、その反応は普通のことだった。しかし、理由はそれだけではない。

 一番はゲーム初心者の小学生が大人に混じって、しかもVRと言う最近流行り出したばかりのゲームジャンルをプレイするには若干の無理があるということだろう。

 彼女自身、そのことに不安を感じているのは言うまでなかった。

「武器や防具のバランス調整はオートで働くようにした方がいいから、下の項目の四角い場所を指で押してチェックを入れておくといいわね」
「あっ、はい」

 上下に剣をブンブンと振っては首を傾げていた星がエミルの言葉に頷くと、オート調整と書かれたところを指で押した。

 エミルは星の様子からオートへの切り替えを終えたのを確認するなり、ラットを横目で見た。 

「こいうのは習うより慣れろって言うからね……ほら、次は星ちゃんの番よ」
「えっ? ちょっと、まだ気持ちの整理が……」

 強引にエミルに「いいからいいから」と背中を押され、敵の前に出た星を捉えた一匹のラットが警戒態勢に入る。
感想 1

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦 そしてそこから繋がる新たな近代史へ