異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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氷山の一角

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 どうやら倉野の体は二人の指揮官によって動かされているらしい。
 倉野の意識外でイスベルグが倉野の体を動かすために、フォルテは読むことができなかった。さらに、イスベルグが倉野に魔法の氷を纏わせているのでフォルテの炎の壁を突破することができる。
 倉野がそう分析した瞬間に、フォルテは自らの腹部を押さえながら口を開いた。

「やはりそういうことか。お前の心だけを読んでも意味がない・・・・・・」

 言いながらフォルテは再び剣を構える。
 すぐさま剣に炎を纏わせ、距離を詰めずに剣を振り下ろした。

「氷を纏ったぐらいで調子に乗るな。氷は炎で溶けるだろう。フレイム・ブレイド!」

 そう叫びながらフォルテが剣を振り下ろすと、纏っていた炎が巨大な斬撃の様に倉野目掛けて飛んでくる。

「うわっ、スキル神速はつど」

 慌ててスキル神速を発動しようとする倉野。
 その瞬間にイスベルグの声が頭の中に響いた。

「待て、クラノ。スキル神速を発動すればシンクロ状態が一旦解除されるぞ。フォルテの狙いもそこにある。スキル神速を発動した状態では氷を纏う事は出来ず、相手の魔法を突破できない。さらに解除直後もすぐにはシンクロ状態になれないのだぞ」
「で、でも、この巨大な斬撃を回避するにはスキル神速しか」
「まぁ、落ち着け。舐められたものだな。炎で溶ける氷とは。いいか、右手を前に突き出し、炎を受け止めてみろ」

 イスベルグにそう言われた倉野は恐る恐る右手を前に突き出す。

「ほ、本当に大丈夫ですか、これ」

 目の前に迫りくる炎の塊に恐怖を感じ、問いかける倉野。
 しかしイスベルグは極めて冷静であった。

「まぁ、落ち着け。最悪食らったとしても、ちょっと焦げるくらいだ」
「そんなわけないでしょ。ドラゴン基準で考えないでくださいよ。僕人間っ」

 慌てて反論する倉野だったが、その瞬間に炎の斬撃が右手に触れる。
 一瞬、熱湯に触れたくらいの温度を感じると、次の瞬間には目の前に氷山が出来ていた。

「え、これは・・・・・・」

 驚きのあまり言葉を失う倉野。
 よく見ると氷の中には炎があり、現実とは考えられない現象が起きている。
 その氷山の向こうでフォルテは目を見開き、信じられないという表情を浮かべていた。

「な・・・・・・何が起きた」

 一瞬のうちに自らの炎が氷山に変えられた現実を受け止めきれない様子のフォルテ。
 そんな中、倉野の頭の中にイスベルグの声が響いた。

「クラノ、少しばかり口を借りるぞ」
「く、口ですか?」

 そう聞き返した倉野だったが、許可を出す間も無く、口が勝手に動き始める。

「おい、フォルテとか言ったか。氷を溶かす炎だとか最強だとか、軽々しく名乗るものじゃない。世界は広い・・・・・・あまり図に乗るなよ若造」

 倉野の体を介して放たれた言葉にフォルテは言いようのない寒気を感じた。
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