異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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ノエルの背中

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「そうね。とにかく止めなきゃいけない。そうじゃなければ奴らの思い通りになってしまうわ」

 ノエルはそう言いながら拳を強く握りしめる。
 何としてでも止めなければならないことがこの瞬間にも進んでいた。
 すぐにでも動き出そうと倉野が一歩踏み出した瞬間、身体中に電撃のような痛みが走る。

「うぐっ・・・・・・痛っ」
「どうしたのよ、クラノ。もしかしてフォルテとの戦いで?」
「いえ、大丈夫です。今はこんな痛みに負けてる場合じゃないですから」

 そう答えた倉野は再び歩き出そうとした。だが、体はいうことを聞かず、バランスを崩してその場に倒れる。
 驚きながらノエルは倉野に手を差し伸べた。

「クラノ!」
「いてて、大丈夫ですよ。ちょっと力が抜けただけですから」

 ノエルの手に掴まりながらそう微笑みながら答える倉野。だが、その内心は困惑でいっぱいであった。
 数々の戦いで様々な痛みに耐えてきた倉野はスキル苦痛体勢を手に入れており、強い痛みを感じにくいようになっている。もちろん痛みというものは体が発信する重要な危険信号のため、完全に消えるわけではない。痛みによって動けないというような場面がなくなる、痛みに耐えた状態でも動くことができるというようなスキルであった。
 つまり、痛みで動けなくなるようなダメージを負っていても、苦痛が軽減されているおかげで動くことができるということなのだが、それには副作用がある。
 自分で思っている以上にダメージを負っているという状況が発生してしまうのだ。
 現在、倉野はある程度の痛みを感じている。だがそれは体が動けなくなるほどではない。
 しかし、実際には痛みで気絶してもおかしくないほどのダメージを負っていた。そのような状況で体が動くわけがない。
 自分の体がいうことを聞かず、一歩を踏み出せない倉野は奥歯を噛み締めた。

「くそっ、何でこんなときに・・・・・・動け・・・・・・動けよ」

 情けない。そんな感情が心の中に広がっていく。
 そんな倉野にノエルが声をかけた。

「やっぱり、ダメージを負っていたようね。無理もないわ。相手はオランディ最強の剣士・・・・・・仕方ないわね。私が背負っていくから背中に乗りなさい」
「いや、男前すぎませんかノエルさん」
「失礼ね。レディに向かって男前なんて。いいからさっさと乗りなさい」

 そう言いながらノエルは倉野に背を向ける。
 その瞬間だった。倉野の頭の中にイスベルグの声が響いた。

「何か忘れていないか」
「え?」

 思わず疑問の声を吐き出す倉野。
 何があったのか、とノエルは振り返り首を傾げていた。
 ノエルには聞こえないイスベルグの声がそのまま話を進める。

「忘れているのか。お前には頼りになるパートナーがいるだろう。そいつがいるからこそ私はお前の体で無茶ができたと言ってもいい」
「パートナー?」

 聞き返しながら倉野は無意識に自分の鞄に触れた。
 それは体が答えを教えてくれたのかもしれない。

「クー!」

 倉野の鞄からはこの世界で一番長い時間を共に過ごしたパートナーが顔を出していた。
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