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絶望or絶望

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「いえ、頭をあげてください。レインさんには助けられましたから」

 言いながら倉野は微笑む。
 するとリヴィエールも釣られるように微笑んだ。

「騎士レインは良き仲間を得たようですね。私も長らく国軍大将をしておりますが、何の見返りもなく命をかけてくれる人間が一体何人いるのかわかりません。それで騎士レイン、こちらの女性は?」

 リヴィエールに問いかけられたレインはノエルの表情を窺いながら紹介する。

「こちらも同じ飛行船に同乗していた者です。彼女はフリーの傭兵をしております。名はノエル、彼女もまた私に協力してくれています」

 そう紹介されたノエルは軽く会釈をした。

「ノエル・マスタングと申します」
「それでは挨拶はこれくらいにしましょうか。それで、お話とは一体?」

 ノエルが名乗り終えたのを確認したリヴィエールは、突然真剣な表情で問いかける。
 空気が一気に張り詰め、避けては通れない出来事が目の前にあるのだと思い出させた。
 一呼吸おいて倉野は口を開く。

「レインさん・・・・・・僕はレインさんを止めにきたんです」
「ど、どういうことだい、クラノ」

 倉野の口から飛び出した言葉に驚くレイン。
 即座に倉野は言葉を続けた。

「ノエルさんから聞きました。第四王子ルシアルさんが屋敷の倒壊に巻き込まれてしまったこと・・・・・・そして、全ての悲劇を終わらせるために王位継承権争いを終わらせたいと」
「ああ、そうだよ。新たな王が決まるまでこの悲しみは続く。ジュウザ様殺害の黒幕がノワール家だと分かっているのだから、残っているルージュ家の血を継いだ王子のどちらかが王になるべきだ」
「それを止めにきたんです」

 倉野はそう言いながらまっすぐレインの目を見つめる。
 それを聞いていたリヴィエールが小さく頷き、言葉を挟んだ。

「なるほど。やはり、私が辿り着いた答えとクラノ殿が出した答えは同じのようですね」
「え?」

 思わず聞き返す倉野。
 しかし、リヴィエールは構わずに話を続けた。

「王位継承権争いを終わらせるために、と騎士レインは残った二つの選択肢から選んだ。どちらが絶望であるか、どちらが希望であるか・・・・・・そう考えたはずです。ジュウザ様殺害の黒幕であるノワール家が王家となれば絶望するしかない。そうでないルージュ家が王家となれば希望がある。しかし、この選択肢は間違っております」

 リヴィエールの言葉を聞いたレインは首を傾げる。

「それはどういうことですか?」
「貴方の選択肢は両方が絶望だったというわけですよ。どちらも毒・・・・・・どちらもこの国を終わらせる終末の鐘なのです」

 まるで言葉をレインの心に植え付けるようにリヴィエールはそう言い放った。
 そんな言葉を聞いたレインはとある答えにたどり着く。

「まさか・・・・・・」
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