異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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神の怒りと世界への復讐

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「確かに僕はエスエ帝国側に立って考えてしまっています。けれど、ここに守りたいものがあるんです。だから僕は」

 そこまで倉野が話した瞬間、ノエルは口角を上げて言葉を挟んだ。

「止めやしないわよ。ただ、その兵器と戦うっていうのなら相手のことをもっと知ってからにしなさい。戦場で迷わないためにもね。それが済んだら、私に背中を預けなさい」
「ノエルさん・・・・・・」
「あら、私の背中じゃあ不安かしら?」

 言いながらノエルは自分の剣を強く握る。そう、倉野は反国家組織の兵器さえ破壊してしまえばこの戦いが終わるという答えを出していたのだ。
 いや、誰にでも思いつく簡単な方法かもしれない。だがそれを実行できる者などいないのだった。倉野を除いて。

「ありがとうございます」

 倉野が礼を言うと会話を聞いていたレイチェルが会話に追いつき、慌てて言葉を挟む。

「まさか、反国家組織と戦おうと考えているんですか。いくらクラノ様でも町を消し飛ばすような兵器と戦うだなんて・・・・・・」

 心配するレイチェルに倉野が微笑みかけた。

「ここで悩んでたって何も守れませんからね。この国には守りたいものが多すぎるんです」

 話しながら倉野はこの世界に転移してきてからのことを思い返す。レイチェルやリオネはもちろん、エスエ帝国で出会った全ての者の顔が鮮明に浮かんだ。
 このまま反国家組織とエスエ帝国が戦ったとしても、要求通りエスエ帝国がなくなったとしてもこれまでの生活は送れないだろう。
 戦争事態を回避するには兵器を破壊するしかないのだ。
 それが出来るのはエスエ帝国に属しておらず、単体で強大な戦力になり得る倉野だけである。
 倉野の言葉を聞いたレイチェルは視線をノエルに送った。

「それにノエルさんまで・・・・・・」
「どうせここで待っててもそのうち反国家組織は攻めてくるわ。指を咥えているのは趣味じゃないのよ。ほらクラノ、さっさと反国家組織について調べてしまいましょ」

 ノエルにそう言われた倉野は頷きスキル説明を発動させる。

「スキル説明発動。エスエ帝国に攻撃を仕掛けている反国家組織について」

 いつも通り表示された文字を倉野が読み上げた。

 反国家組織。組織名はネメシス。神の怒りを意味している。
 団長であるジルトール・パニッシュメントによって組織された集団。ジルトールは国家間の戦争に巻き込まれ妻と幼い娘を失っており、国という単位がなくなれば世界から戦争が消えると信じている。
 ネメシスは戦争によって親兄弟や愛する者を失った者の集団だ。全員が同じ志のもとに集まっているため団結力は強い。また、目的のためには手段を選ばず、どれほどの犠牲が出ようとも止まることはない。
 自分たちの行動によって出た犠牲は平和への礎と考えており、それによって自分たちと同じような境遇になる者が現れるだろうことも想定している。そんな恨みを全て引き受けるという覚悟もしている。
 全ては世界への復讐。
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