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参戦するレオポルト
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声と共に倉野の近くを通り過ぎたのはまるで岩のように大きな体である。大地を踏みつけ、空気を斬り裂くように走り抜けていった。
その背中を見送りながら倉野は安心感を感じる。頼りがいのある背中、暖かさと強さを兼ね備えた背中だった。
「女の顔を踏みつけることが貴様の正義だというのならば、ワシが真っ向から否定してやる!」
そう叫びながらエイターに渾身の拳を叩きつける血煙の獅子。ノエルの窮地を助けたのはレオポルトである。
帝都から少し離れた港オーリオにいるはずのレオポルトがそこにいた。
レオポルトの拳を受けたエイターは声を上げることなく大剣ごと飛ばされ、先ほどのノエルのように地面に叩きつけられる。
レオポルトの出現に動揺したのかネメシス団員たちの魔法が解除され、体の自由を取り戻したノエルは起き上がりながら自分を助けた男の名前を呼んだ。
「レオポルト・・・・・・・さん」
「遅くなったな、ノエル・マスタング」
「どうしてここにいるのよ。オーリオにいたはずじゃあ」
「ああ、だが近くの町が反国家組織ネメシスに吹き飛ばされたと聞いてな。お前さんたちが戦うのではないかと思い駆けつけた」
言いながらレオポルトはノエルに手を差し伸ばす。レオポルトの手を取り立ち上がりながらノエルがこう聞き返した。
「私たちが戦うって、何でわかったの?」
「そんなことはお前さんが一番わかっているはずだろ。誰かの危険を見逃せない男がそこにいる。エスエ帝国に知り合いの多いクラノが見捨てるなんて選択をすると思うか?」
「そりゃそうね。正直助かったわ。でも良いの? 他国の大使がエスエ帝国の危機に顔を突っ込んで」
「ワシが助けに来たのはお前さんらだ。それにエスエ帝国に恩を売るのも悪くなかろう」
そんな会話を繰り広げる二人の姿を見て一安心する倉野。
「レオポルトさん・・・・・・ありがとうございます」
そう呟きながら倉野はブレッドとの戦いを再開した。だが、いまだに突破口は見当たらない。どうすれば動きを止められるのか。一瞬たりとも気を抜けない状況でスキルを発動する隙もない。
倉野が攻撃と回避を繰り返している中、動きがあったのはノエル側だった。
レオポルトの攻撃を受けたエイターは立ち上がり、剣を構える。
「その風貌・・・・・・血煙の獅子レオポルトだな。ビスタ国の伝説が何故ここに・・・・・・いや、理由などどうでもいい。大切なのは我らの道を阻む者だという事実一点」
エイターはそう話してから後方のネメシス団員たちに視線を送った。
「相手は血煙の獅子だ。全勢力を持って迎え撃て!」
そんな指示を受けたネメシス団員たちは一斉にそれぞれの武器を構え、レオポルトに向かっていく。
一気に大量の敵意を向けられたレオポルトは心なしか少し楽しそうに口角をあげた。
「ふっ、多勢を相手にするのは久しぶりだな。血が滾り、心が震えているぞ。願わくばがっかりさせてくれるなよ」
その背中を見送りながら倉野は安心感を感じる。頼りがいのある背中、暖かさと強さを兼ね備えた背中だった。
「女の顔を踏みつけることが貴様の正義だというのならば、ワシが真っ向から否定してやる!」
そう叫びながらエイターに渾身の拳を叩きつける血煙の獅子。ノエルの窮地を助けたのはレオポルトである。
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レオポルトの拳を受けたエイターは声を上げることなく大剣ごと飛ばされ、先ほどのノエルのように地面に叩きつけられる。
レオポルトの出現に動揺したのかネメシス団員たちの魔法が解除され、体の自由を取り戻したノエルは起き上がりながら自分を助けた男の名前を呼んだ。
「レオポルト・・・・・・・さん」
「遅くなったな、ノエル・マスタング」
「どうしてここにいるのよ。オーリオにいたはずじゃあ」
「ああ、だが近くの町が反国家組織ネメシスに吹き飛ばされたと聞いてな。お前さんたちが戦うのではないかと思い駆けつけた」
言いながらレオポルトはノエルに手を差し伸ばす。レオポルトの手を取り立ち上がりながらノエルがこう聞き返した。
「私たちが戦うって、何でわかったの?」
「そんなことはお前さんが一番わかっているはずだろ。誰かの危険を見逃せない男がそこにいる。エスエ帝国に知り合いの多いクラノが見捨てるなんて選択をすると思うか?」
「そりゃそうね。正直助かったわ。でも良いの? 他国の大使がエスエ帝国の危機に顔を突っ込んで」
「ワシが助けに来たのはお前さんらだ。それにエスエ帝国に恩を売るのも悪くなかろう」
そんな会話を繰り広げる二人の姿を見て一安心する倉野。
「レオポルトさん・・・・・・ありがとうございます」
そう呟きながら倉野はブレッドとの戦いを再開した。だが、いまだに突破口は見当たらない。どうすれば動きを止められるのか。一瞬たりとも気を抜けない状況でスキルを発動する隙もない。
倉野が攻撃と回避を繰り返している中、動きがあったのはノエル側だった。
レオポルトの攻撃を受けたエイターは立ち上がり、剣を構える。
「その風貌・・・・・・血煙の獅子レオポルトだな。ビスタ国の伝説が何故ここに・・・・・・いや、理由などどうでもいい。大切なのは我らの道を阻む者だという事実一点」
エイターはそう話してから後方のネメシス団員たちに視線を送った。
「相手は血煙の獅子だ。全勢力を持って迎え撃て!」
そんな指示を受けたネメシス団員たちは一斉にそれぞれの武器を構え、レオポルトに向かっていく。
一気に大量の敵意を向けられたレオポルトは心なしか少し楽しそうに口角をあげた。
「ふっ、多勢を相手にするのは久しぶりだな。血が滾り、心が震えているぞ。願わくばがっかりさせてくれるなよ」
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