異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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問われる覚悟

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 倉野が手にしたのはオランディの王城地下に封印されていた最強の剣クレアシオンだった。
 秘めたる魔力は他のどんな物質よりも大きく、文字通り天地創造という奇跡すらも起こしかねない。そして創造と破壊は表裏一体である。クレアシオンはすべてを破壊する剣でもあった。
 クレアシオンの柄を握った瞬間、倉野は自らの体に異変を感じる。

「ぐっ・・・・・・身体中の力が・・・・・・」

 全身の力をクレアシオンに吸われていた。脱力しその場に膝をつく倉野。
 そんな倉野に容赦無くブレッドの右手が襲いかかる。
 上から叩き潰すように急接近するブレッドの右手は絶望的なまでに大きく、倉野の肝を冷やすには十分だった。

「くそっ、回避しなければっ!」

 自分の足に言い聞かせるように言葉を放つ倉野だったが力の抜けた状態では動きようがない。
 せっかく武器を手に入れたのにここで終わるのか。終わりたくない。勝たなければならないんだ。
 倉野が心の中でそう叫んだ瞬間、クレアシオンが怪しい光を放つ。
 その光が倉野を中心にドーム状に広がり、ブレッドの右手は光に弾かれた。まるで衝撃をそのまま跳ね返したようにブレッドの右手を弾き、ブレッドは後方に仰反る。

「こ、これは・・・・・・結界?」

 周囲を取り巻く光を見渡しながら倉野はそう呟いた。何がどうなっているのかはわからない。だが、初めてブレッドへの直接干渉が成された瞬間である。
 思いもよらぬ現象に驚きの表情を浮かべる倉野にイスベルグが語りかけた。

「それが天地創造の剣クレアシオンの能力だ。強き想いを形にする。今、お前はブレッドの右手を拒絶しただろう? クレアシオンはそれを現実にしただけだ」
「想いを形に・・・・・・でも、このクレアシオンを持っているだけで全身から力が抜けて立っていられなくて」
「言っただろう、相当の覚悟が必要だと。覚悟なき者が触れるとクレアシオンは使用者の寿命を喰らう。今のお前には覚悟が足りないということだな。このままでは全ての寿命を喰らい尽くされ、枯れ果てるぞ」

 イスベルグにそう言われた倉野は実感する。吸い取られているのは全身の力ではなく、生命力だと。確かに自覚できるほど呼吸は浅くなり、血の巡りも悪くなっている。

「覚悟なら・・・・・・してますよ。帝都を守りたい・・・・・・誰も死なせたくないんだ! レインさんもノエルさんもレオポルトさんもレイチェルさんも・・・・・・」
「ネメシスの連中もか?」

 冷たく言い放つイスベルグ。
 図星だった。倉野はこのような戦いの最中にあっても、他人の命を奪いたくないと思っている。元いた世界で命を奪うことがあまりに身近ではなかったということもあるが、この世界に来てから体験したことも倉野にそう思わせていた。
 たとえ敵だとしても相手には相手の正義があり生活があり大切な人がいる。もちろん犯した罪は償わなければならないがそれは国ごとに決まったルールに則るべきだ。独断で命を奪ってはならない。そんな思いが倉野の心の中心に存在する。

「もう一度問おう。ネメシスの連中すら死んで欲しくないと本気で思っているのか? それはお前が罪悪感から逃げているだけではないのか? 戦いとは命を賭けるものだ。お前のような甘い考え方で覚悟があると言えるのか?」
「確かに甘いのかもしれません。綺麗事なのも分かっています。けれど・・・・・・それでも僕は信じたい。殺す以外の解決方法があるって・・・・・・人は分かり合えるんだって」
「まるでガキだな。国ごとの利益や思想、階級制度、人種の隔たり、何よりも個人の欲望・・・・・・そんなものがなくなるとは思えん。それがある限り人は争い合うぞ。何百年、何千年とこの世界を見てきた私には分かる。それでもお前は殺さないというのか。目の前の敵を」

 それはイスベルグからの試練だった。あえて厳しいことを言い倉野の心の底を暴こうとしている。
 体を共有している倉野にはイスベルグの意思が確かに伝わっていた。イスベルグはこう問いかけている。
 殺さないことは殺すことよりも難しい。圧倒的な力がなければ殺さないという選択すらできないだろう。それはまさに修羅の道だ。それを貫き通せるのか、と。その思いは本物なのか、と。
 倉野はその言葉の重さを感じながら、魂から溢れてきた言葉を口に出す。

「殺さない・・・・・・誰も死なせない。それが僕の覚悟だ!」
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