620 / 729
連載
中学二年生が考えたような二つ名
しおりを挟む
二人にしか分からない空気が、確かにそこには存在した。
レオポルトは分かっている。エクレールがバレンドットの王として優先しなければならないものがあることを。自分の命よりも近親者よりも、国としての存在、未来、そして民を守らなければならない。
特に獣人の国ビスタで大使を務めていたレオポルトには痛いほどわかる。
その上でエクレールの判断には納得できなかった。
そんなレオポルトの感情を察したエクレールは、目の前の男を血煙の獅子と再認識して、言葉を返したのである。
「国王としては正しい判断なのでしょうな。しかし、エクレール王・・・・・・貴方の判断には重要な情報が欠けています」
レオポルトがそう言い放つと、エクレールは顕著に顔をしかめた。
「そのような殺気を放っておきながら、まだ話を続けるというのか。レオポルトよ」
「そのようなものを放ったつもりはありませんが、既にお返しした命ですので。今更、何も恐れるものはありませんよ。私、いえ、ワシはここから先の話を聞き入れてもらいたいだけです」
真剣な表情で言い返すレオポルト。
するとエクレールは諦めたかのようにため息をついた。
「人の本質は変わらぬ、ということか。赤爪、王牙、眼殺、味方からは勝利をもたらす剣と呼ばれ、敵からは死神と恐れられるような男だろう。様々な二つ名を持つお前が、意志を貫こうとすれば殺気が放たれるのは当然。そこまでして話したいこととはなんだ」
真剣な話だと分かっていても倉野は心の中で、中学二年生の頃を思い出しいたたまれない感情を覚える。
凄まじい二つ名だな。絶対、闇とか光とかって言葉を使いたがる人がつけた二つ名だろ、なんて思いながら話の続きに集中した。
「ワシの二つ名などもう過ぎた話です。今は『ピース・リンク』の一員、ノエルの仲間として話をしていることをご理解ください。ノエルの望みはこの国を救うこと・・・・・・ワシらの望みも同じくです」
「レオポルト」
エクレールは呆れを通り越し、疲れたような表情で頭を抱え名前を呼んだ。
そんな心労を理解し、レオポルトは「なんでしょう」と返す。
「聞き慣れぬ言葉、知らぬ情報の連続で理解が追いつかないのだが、ひとまず要点だけを確認しよう。お前は・・・・・・いや、そこにいる三人を含めお前たちはこの国を救いたいと願っているのか?」
問いかけられたレオポルトは倉野、レイン、リオネの順に目を合わせてから四人同時に頷く。
「はい」
四重で返ってきた言葉。
それによってようやく心を落ち着かせたのか、エクレールは足を組んで座り、国王の威厳など気にしない様子で口を開く。
「聞こう。私に欠けている重要な情報とは何だ」
レオポルトは分かっている。エクレールがバレンドットの王として優先しなければならないものがあることを。自分の命よりも近親者よりも、国としての存在、未来、そして民を守らなければならない。
特に獣人の国ビスタで大使を務めていたレオポルトには痛いほどわかる。
その上でエクレールの判断には納得できなかった。
そんなレオポルトの感情を察したエクレールは、目の前の男を血煙の獅子と再認識して、言葉を返したのである。
「国王としては正しい判断なのでしょうな。しかし、エクレール王・・・・・・貴方の判断には重要な情報が欠けています」
レオポルトがそう言い放つと、エクレールは顕著に顔をしかめた。
「そのような殺気を放っておきながら、まだ話を続けるというのか。レオポルトよ」
「そのようなものを放ったつもりはありませんが、既にお返しした命ですので。今更、何も恐れるものはありませんよ。私、いえ、ワシはここから先の話を聞き入れてもらいたいだけです」
真剣な表情で言い返すレオポルト。
するとエクレールは諦めたかのようにため息をついた。
「人の本質は変わらぬ、ということか。赤爪、王牙、眼殺、味方からは勝利をもたらす剣と呼ばれ、敵からは死神と恐れられるような男だろう。様々な二つ名を持つお前が、意志を貫こうとすれば殺気が放たれるのは当然。そこまでして話したいこととはなんだ」
真剣な話だと分かっていても倉野は心の中で、中学二年生の頃を思い出しいたたまれない感情を覚える。
凄まじい二つ名だな。絶対、闇とか光とかって言葉を使いたがる人がつけた二つ名だろ、なんて思いながら話の続きに集中した。
「ワシの二つ名などもう過ぎた話です。今は『ピース・リンク』の一員、ノエルの仲間として話をしていることをご理解ください。ノエルの望みはこの国を救うこと・・・・・・ワシらの望みも同じくです」
「レオポルト」
エクレールは呆れを通り越し、疲れたような表情で頭を抱え名前を呼んだ。
そんな心労を理解し、レオポルトは「なんでしょう」と返す。
「聞き慣れぬ言葉、知らぬ情報の連続で理解が追いつかないのだが、ひとまず要点だけを確認しよう。お前は・・・・・・いや、そこにいる三人を含めお前たちはこの国を救いたいと願っているのか?」
問いかけられたレオポルトは倉野、レイン、リオネの順に目を合わせてから四人同時に頷く。
「はい」
四重で返ってきた言葉。
それによってようやく心を落ち着かせたのか、エクレールは足を組んで座り、国王の威厳など気にしない様子で口を開く。
「聞こう。私に欠けている重要な情報とは何だ」
0
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。