異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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2巻

2-1

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 1


 ビスタは砂と獣人じゅうじんの国と呼ばれており、地球でいえば乾燥帯砂漠さばく気候に似ている。
 降雨量は非常に少なく、森林はほとんど育たない。
 気温は最大で五十度ほどになるが、その暑さよりも夜には氷点下になるという気温差がつらい、とニャルは倉野くらのに語った。
 だが、この世界ではほとんどの者が水魔法で飲み水を生成できるため、水に困ることはないのだという。
 そんな話を聞きながら、倉野はついにビスタに上陸した。


 ◇


「久しぶりの陸地だー!」

 倉野はそう言って地面を踏みしめる。

「楽しそうですね、クラノさん」

 ニャルは楽しそうにしている倉野を見て微笑ほほえんだ。
 遅れて上陸したレオポルトは荷物をかつぎながらニャルに語りかける。

「どうだ、ニャル、なつかしいか」

 暖かい風に、香辛料のような香りが混ざっている。
 これがビスタのにおいか、とニャルはどことなく懐かしい気持ちになった。

「なんとなくですけど懐かしいような気がします。はっきりとは覚えていないですけど」

 そう言ってニャルは空を見上げる。
 懐かしいはずなのに、この国の記憶はなく、家族のことも覚えていない。故郷に帰ってこれて嬉しいはずなのに、どこか寂しい。
 そんな複雑な表情をしていた。

「覚えておらんのも無理はない。だが、記憶になくとも間違いなくお前の故郷だ。少しでも何かを思い出したら言ってくれ」

 レオポルトはそう言いながらニャルをでる。
 ニャルは少し照れくさそうに微笑んだ。
 それから、レオポルトはこれからの予定について、二人に説明した。
 ここは、ビスタの入り口と呼ばれている、ウィベという港町。ウィベからビスタの首都、チェリコに向かい、そこでレオポルトとニャルの養子縁組手続きを行う。
 なお、チェリコまでは、徒歩と魔物が引く車で向かうらしい。
 レオポルトはビスタの特命全権大使なのだから、警備やら護衛やらが待っていて案内してくれるものじゃないか、とも思ったが、レオポルトはそういう特別扱いを嫌がりそうだな、と倉野は納得する。
 とにかく今日中にウィベの次の町ルトに徒歩で行って一泊し、そこからチェリコまで車で向かう、とレオポルトはまとめた。

「さあ、行くとするか」

 レオポルトがそう言うと、港を出発した。
 あとに続く倉野とニャル。
 周り全員が獣人である光景に倉野は少しずつ慣れていく。
 確かに見た目は違うが、相手も同じ人である。
 そこに生活があって、家族がいて、生きている。
 この人たちを差別する風潮なんてなくなればいいのに、そうすれば悲しみは減るのに、と倉野はなんとなく思っていた。
 だが、人種間のゆがみが大きくなり、その中心に倉野が立たされることを、今はまだ誰も知らなかった。


 ◇


 ウィベを出て、半日ほど歩くとルトが見えてきた。
 ルトではこの国では稀少なみずが出るらしく、いわゆるオアシスのような役割を果たしている。
 魔法で水が生成できるとはいえ、生活に必要な水を確保できる場所はやはり特別ということだろうか。
 その水で植物も育てることが可能なため、ルトでは果物や小麦が育てられており、港から一番近い町でありながら、首都チェリコに次いで大きい町だという。
 そうレオポルトが説明した通り、ルトの周辺には緑が見えた。

「あれがルトだ。この国では一番の商業都市といってもいい。だが、やはり人間たちの国と比べると規模は小さいがな」

 そう言ってレオポルトは笑った。
 確かに驚くほど大きいというわけではないが活気がある町である。
 そしてルトの入り口までたどり着いた。
 しかし、ルトの町には入り口を守る衛兵などはいない。
 不思議に思った倉野はレオポルトに尋ねた。

「エスエ帝国だとそんなに大きくない町でも衛兵が立ってましたよ。ビスタでは入国者を確認することはないんですか?」
「エスエ帝国は、様々な国からほとんど制限なく人が入ってくる。あの国はそうやっていろんな国の文化を取り込んで大きくなった国だからな。だから町ごとに人間の出入りを確認する必要がある。だが、ビスタには基本的に獣人と審査を通った人間しかおらん。獣人は獣人を裏切らない、そういう国ってことだ」

 レオポルトは自慢げに倉野にそう言う。

「獣人は獣人を信頼しているし、獣人は獣人を傷つけないから、町で出入りを確認しなくていいってことですか?」
「まぁそういうことだ」

 そんな話をしながらルトの宿に到着した倉野たちは、荷物を置いてから、宿屋の隣の酒場で食事をすることにした。


 酒場のテーブルに着くと、ツクネは倉野のかばんからい出てニャルのひざの上でくるくると回る。

「あら? ツクネちゃんもお腹いたんですか? 干し肉持ってますよ、はい」

 そう言ってニャルはツクネに干し肉を食べさせた。
 ツクネは嬉しそうに干し肉をかじっている。

「さて、ワシらも何か食べるとするか」
「あ、お酒はだめですからね? お父さん。明日早いですからね」

 ニャルはそうレオポルトに注意した。
 レオポルトは残念そうな顔をしながらも渋々諦める。

「仕方ない。娘に言われてはな。クラノ、今日は水にするとしよう」
「そもそも僕、いつもそんなに飲んでませんからね」

 倉野は微笑みながらレオポルトにそう返した。
 ビスタでの食事は香辛料が使われているものが多く、倉野に馴染み深い表現をするならカレー味に近いだろう。
 昼と夜の温度差が激しい国なので、香辛料で体を温め、健康を保つのだという。
 その効果はわからないが、確かに体があったまる気がした。
 そうした他愛のない話をしながら食事を楽しんでいると、隣の席の会話がふと倉野の耳に聞こえてきた。

「グレイ商会がこの国に来ているらしいぜ」
「グレイ商会? 死の商人じゃないか。そんな奴らがこの国に何を売りに来たんだ? 武器も傭兵ようへいもこの国じゃ必要ないだろう」
「いや、どうやら買いつけに来たらしい。香辛料をな」
「人間が香辛料を?」
「ああ、香辛料から何やら成分を抜き出して、痛みを感じなくなる薬を作るってうわさだ」
「痛みを感じなくさせる薬だって?」
「それで、無敵の兵士を作り出すって話さ」

 獣人は人間を良く思っていないためか、そういった噂が流れているようだった。
 何気なく聞こえてきた会話に興味を持った倉野はレオポルトに尋ねる。

「レオポルトさん、グレイ商会ってなんですか?」
「ん? グレイ商会か。簡単に言えばイルシュナの武器商人といった感じだな。武器から傭兵まで、戦闘に関するもの全般を取り扱う大商会だ。そしてイルシュナは貴族制がなくてな、金を持っている者が強い、というような国だ。その中でもグレイ商会は最強と言ってもいい」

 レオポルトは肉にかぶりつきながらそう説明した。

「ちょっとお父さん、行儀ぎょうぎ悪いですよ」

 ニャルがそう注意するが、レオポルトは倉野に責任を押しつける。

「食べている途中に質問したのはクラノだ。ところでいきなりなんでグレイ商会なんだ?」
「いえ、ちょっと聞こえてきて。今、この国にいるって」
「ああ、そうだな。ワシの耳にもそう届いておる。イルシュナからわざわざ船で入ってきたらしい」

 レオポルトの説明を聞いていると、倉野は何か嫌な気配を感じた。
 だが、気配の正体はわからず、食事を終え、宿で眠りについた。


 ビスタでの二日目。
 朝から動き出さなければ、夜までにチェリコにたどり着けないということで、日の出の時刻にはレオポルトは倉野を起こした。

「起きろ! 行くぞ」

 ここはどこの軍隊だ、と思いながらも倉野は身支度みじたくをし、ツクネに干し肉を食べさせ、宿を出た。
 宿を出ると、すでに車が用意されていた。
 倉野が見たことのある車はおおかみのような魔物が引いているものだったが、今回は大きなトカゲのような魔物が引いていた。

「あれ、エスエ帝国とは車を引く魔物が違うんですね」
「おお、そうか。クラノはエスエ帝国でしか見たことなかったんだな。車は各国で引いている魔物が違うんだ。エスエ帝国にいるのはフォンガという魔物だ。そしてこいつは、リザドーだ。フォンガは暑さに弱いからビスタでは走れないのでな。暑さと乾燥に強いリザドーがここでの移動手段だ」

 まさか、エスエ帝国を出てからエスエ帝国にいた魔物の名前を知るとは、と倉野は少し複雑な気持ちになった。
 ありがとうフォンガ。そしてよろしくリザドー。
 レオポルトがリザドーに行き先を告げると、リザドーは勝手に走り出した。やはり移動用の魔物はある程度の知能があるのだろう。
 移動しながら、レオポルトは今後の予定を倉野とニャルに話す。

「とりあえず今日はチェリコに行き、役所でワシとニャルは養子縁組手続きをする。そして明日から、フェレッタについての情報を集める。そんな予定でよいか?」

 フェレッタは、倉野の相棒であるツクネの種族で、とても貴重な種族だと言われている。ツクネの仲間を探すというのもこの旅の目的なのだ。
 倉野はうなずく。

「はい、大丈夫です。急いでませんから。な、ツクネ」
「クー!」

 ツクネも元気よくレオポルトに返事をする。
 そんなツクネを見てレオポルトもついつい頬が緩んでしまう。

「しかし可愛いな、フェレッタは」
「ええ、とっても可愛いですね」

 ニャルもツクネを微笑みながら眺めた。
 さらにレオポルトはこう付け加えた。

「チェリコに着いてからはしばらく別行動になってしまうがよいか? 宿は取っておくから、宿にいてもいいし周辺をぶらついていてもいい」
「あ、はい。あんまり出歩かないほうがいいですよね?」
「構わんぞ? 獣人たちはむやみに人間を嫌うわけではないからな。差別的であったり、横柄おうへいであったりしなければ、問題は起こらん」

 それなら出歩いても大丈夫か、と倉野は楽しみになった。
 いろんな国を見て、いろんな国の食べ物を食べて、旅をする。それがこの世界での倉野の楽しみで、生きている意味だ。
 それがなければ、この世界の神に言われたようにただの空気清浄機だな、と心の中で苦笑した。


 ◇


 道中、景色を見たり、眠ったりしているとあっという間にチェリコに着いた。
 その前に一週間の船旅をしているのであっという間に感じたが、朝早くに出て着いたのは夕暮れなので、半日以上は車の中にいたことになる。
 チェリコの町の外で車を降り、車を預かる業者にリザドーを託した。

「体が痛いですね」

 と、ニャルが伸びをしながら言った。
 まるで伸びをする猫そのものでとても可愛い。
 倉野がニャルの姿を微笑ましく見ていると、レオポルトが立ちはだかった。

「クラノといえども嫁にはやらんぞ」
「なんですか、その急なお父さん感」
「貴様にお父さんと呼ばれる筋合すじあいはない」
「呼んでませんよ」

 そんな二人のやりとりを見てニャルは声を出して笑った。

「お父さんもクラノさんも面白いですね」

 ニャルが笑顔なのは倉野にとってもレオポルトにとっても喜ばしい。
 だが倉野は一応不満を唱えておいた。

「ほら笑われちゃいましたよ」
「ワシは笑われておらん」

 それから、とりあえず荷物を置こうということで宿へ向かった。
 すぐ隣が役所だという宿に入ったあと、荷物を置いて、その宿の前で倉野はレオポルトたちと一旦分かれる。

「それでは、また夜にこの宿の食堂で会おう。ワシとニャルは隣の役所で手続きだ」

 そう倉野に告げて、レオポルトとニャルは役所へ入っていった。
 残された倉野はツクネと相談する。

「どうする、ツクネ。ご飯はレオポルトさんたちとあとで食べるだろうし、適当にぶらぶらするか?」
「クー!」

 賛成、ということだろうか。ツクネは嬉しそうに倉野の言葉に反応した。


 宿屋の前はチェリコの主要な通りになっているらしく、いろんな商店が軒を連ねている。エスエ帝国で見てきた町とは違い、いろんな屋台が並ぶ活気のある通りだった。
 今までとは違う空気の商店街で、倉野のテンションは否応なしに上がる。

「香辛料の店なんてあるんだ。これはしっかり調合すればカレーを作れるんじゃないか?」

 そうつぶやきながら、ビスタに来て食べた食事がカレー味だったことを思い出す。

「いや、そもそもカレーはもうありそうだな。じゃあ、スパイスの入った紅茶とか、コーヒーとかって……僕には知識はないし、売るための店もないけど」

 歩きながら独り言を言う。
 宿から少し歩き、広場のような場所に出る。
 どうやらこの広場は食べ物の屋台が集まっており、飲食を楽しむために設けられた場所のようだ。
 倉野が屋台を見て回っていると背後で誰かが叫んだ。

「おい、危ないぞ!」

 その声に倉野が振り向くと、広場のはしのほうで少女が倒れているのが見えた。
 その少女に大きななべが倒れかかり、今にも中身がぶちまけられようとしている。
 倉野は即座に、スキル『神速しんそく』を発動し状況を判断した。
 屋台の鍋がなんらかの衝撃で倒れ、驚いて転倒した少女にその中身が降りかかろうとしている状況のようだ。
 鍋の中身はわからないが、直前まで火にかかっていたことは確かだった。
 倉野は鍋の中身が少女にぶちまけられる前に少女を抱きかかえ、飛び退く。
 誰かが叫んだあの声が一瞬でも遅れていたら、倉野が振り返るのが一瞬遅かったら、その少女は大火傷やけどを負っていただろう。
 だが、倉野に抱きかかえられ、間一髪少女は助かった。

「大丈夫かい?」

 間に合ってよかった、と安堵あんどしながら倉野は少女に語りかける。
 近くで見ると、少女は犬でも猫でもない、小さくて丸みをびた耳をしていた。年齢は十歳くらいだろうか。


 少女は何が起きたのかわからず、唖然あぜんとしながらも頷いた。

「うん。だいじょーぶ」

 周りで見ていた人も何が起こったのかわからなかったのだろう。
 少し遅れて歓声が聞こえた。

「うおおおお!」
「よくやったぞ兄ちゃん!」
「人間も捨てたもんじゃないな!」

 自分がしたことで、ビスタの獣人たちの間で人間の評判が上がるならありがたい、と倉野は照れながら微笑んだ。

「ほら、立てるかい?」

 倉野がそう言って少女を地面に降ろすと、少女はしっかりと自分の足で立ち、頷く。

「うん。ありがとー」

 少女はお礼を言って、そのまま立ち去ろうとする。
 だが、少し歩いてから少女はくるっと倉野を振り向いた。

「私はハルナ。おにーさんは?」
「僕は倉野。気を付けて帰るんだよ」
「うん、じゃあねクラノ」

 ハルナと名乗った少女は嬉しそうに走っていった。
 その後ろ姿を見て、特に耳の形を、どこかで見たことがあるような気がしたが、思い出せず考え込んでいると、倉野の手をツクネが舐めた。

「クー?」
「ああ、ごめんごめん。ちょっとだけ買い食いしていこうか、ツクネ」

 ツクネに微笑みかけながら立ち上がると、先ほど倒れた鍋の屋台から猫の顔をした獣人が出てきた。

「ほんっとうにありがとうございましたにゃ!! もう少しで大事故になるところでしたにゃ」

 猫獣人はそう言って倉野に頭を下げる。
 しかし結果的に助かったのだから、今後このようなことがなければ問題ない。

「大丈夫ですよ。今後は気を付けてくださいね」
「はいですにゃ。それでもしよければうちの商品を食べてってほしいですにゃ。お礼にはならないかもにゃけど」

 そう言ってその猫獣人はトカゲの丸焼きのようなものを倉野に手渡した。
 倉野は受け取ったものの、とてもかぶりつく気にはなれない。
 すると、ツクネが鞄から顔を出して一口かじった。

美味おいしいか? ツクネ」
「クー!」

 どうやら口にあったようだ。
 お礼としてもらったものに口をつけないのは失礼だよな、と倉野も意を決してかぶりついた。
 鶏肉に近い味がして、まるで焼き鳥のようだ。

「うん、美味しい」
「よかったですにゃ。またいつでも来てほしいですにゃ」

 倉野はその猫獣人を「焼き鳥猫」と名付けることにした。
 焼き鳥猫は、何度も何度も頭を下げる。
 長居すると気を使わせるな、と思った倉野は一旦宿に戻ったのだった。


 倉野が宿の前に戻ると、ちょうど役所からレオポルトとニャルが出てくるところだった。

「あ、クラノさん!」

 倉野を見つけてニャルが手を振る。
 少し照れながら、倉野も手を振り返した。
 レオポルトとニャルに駆け寄る。

「もう手続き終わったんですか? 思ってたより早かったですね」

 倉野がそう尋ねるとレオポルトは頷いた。

「ああ、すでに話は通っていたからな。まぁ必要なのは本人確認ぐらいだ」
「あ、違いますよ! お父さんったらちょうど部下の人を見つけて書類を丸投げしたんです。客人が来てるから飲みに行くんだって」

 ニャルはそう言って、レオポルトの秘密をバラす。

「ニャル、そういうのはバラすものじゃないぞ」

 レオポルトはそう言って笑った。

「なんでレオポルトさんが偉いのか不思議ですよね」
「どういう意味だ、クラノ」

 倉野とレオポルトはそう言い合って笑う。
 そうして歩き始めると、役所から獣人がレオポルトの名前を呼びつつ走ってきた。

「レオポルトさーん!」
「ん? どうしたムスタング」

 レオポルトは足を止めた。

「手続きならもう任せただろう」

 ムスタングと呼ばれた男は必死にレオポルトに詰め寄る。

「手続きどころではないんです! 少しよろしいですか」
「待て、娘と客人と酒を……」
「それどころではありません!」

 そう言ってムスタングは、レオポルトを連れていってしまった。
 レオポルトとムスタングが役所に入っていく姿を見ながら、ニャルは手を振っていた。そんなニャルに倉野は尋ねる。

「どうしたんでしょう、レオポルトさん」
「さぁ? お父さんが手続きを丸投げしたのはあのムスタングさんですから、連れ戻されたんじゃないでしょうか?」
「でも手続きどころじゃないって言ってましたし」
「わかんないですけど、お父さんも一応お偉いさんですからね。何かあったんでしょうね。それはさておき、とりあえずご飯にしませんか? さっきからいい匂いがするんですよ。クラノさん、何か食べましたね?」

 そういえばさっきトカゲの丸焼きみたいなものを食べた、と倉野が思い出していると、ニャルは倉野に近づき首筋の匂いをいだ。

「美味しそうな匂いがします。私、鼻がいいんですよ」

 そう言ってニャルは優しく微笑む。
 その近さと微笑みにドキドキしてしまう。
 冷静にならなければ、と倉野は距離を取ってから頷いた。

「は、はい。さっき広場でちょっと」
「私も食べたいです!」
「じゃあ、広場に行きましょうか?」

 そう言って倉野は先ほどの広場にニャルを案内した。


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