異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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久しぶりの活躍

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 全然丸くなってないよ、この人。戦場前の昂りと血の気に当てられて『血煙の獅子』感全開じゃないか。そもそもヴェルフェールさんもこんなわかりやすい挑発に乗らないでしょ。
 倉野は心の中で不満と希望的観測を述べる。
 しかし、ヴェルフェールはレオポルトに近しい性質を持っているらしく、戦う気満々で楽しそうな表情を浮かべていた。

「そこまでレオポルト殿が推挙されるのであればお受けせざるを得ませんね」

 そんな楽しそうな顔で言われても、と倉野はエクレールの方に視線をやる。
 流石に謁見の間で戦うことを許す王などいないだろう、と。
 言ってしまえば、エクレールもどちらかといえばレオポルト寄りの人間だ。自ら先頭に立って戦う王。血の気が多いのも無理はない。

「いいだろう、レオポルトがそこまで言うなら示して見せよ」

 何がいいだろうなんですかね、と倉野は再び目を細めた。
 だが、全員がやる気を漲らせている状況で断っても意味がないことを知っている。渋々倉野は拳を構えた。
 武器のない戦いであればスキル『神速』を使うまでもない。スキル『体術』などを組み合わせればある程度の力を見せつけることができる。
 そう簡単に考えていると、再びレオポルトは悪い笑みを浮かべた。碌でもない事を考えていることは倉野にもわかる。

「ヴェルフェール殿、腰の代物を使っても構いませんよ。どれだけリーチがあろうと刃があろうと拳と何ら変わりません」

 おいおい、煽るんじゃないですよ。
 倉野の心の声など気にせず、ヴェルフェールは眉をピクっと動かした。
 
「ほう? それはあまりにも舐めすぎというものではないでしょうか?」

 そう言いながらもヴェルフェールは剣を抜く。両刃の剣だ。峰打ちなどという概念はないのだろう。
 煽り耐性低くないですか、と思いながらも倉野は仕方なく戦闘体勢に入る。
 そんな倉野にヴェルフェールは「斬られる前に降参してください」と物騒なことを言い放ち、両手で剣を構えた。

「できれば斬らないで欲しいですけど」
「善処しますよ」

 先に動いたのはヴェルフェールだった。剣を振り上げ、地面を蹴り、倉野に斬りかかる。
 そんな殺意高めな行動なのにも関わらず、レオポルトやレイン、リオネは全く動じない。倉野の次の行動が読めているからだ。

「斬るつもり満々じゃないですか、もう。仕方ないな、スキル『神速』発動!」

 久しぶりの活躍だからかスキル発動の掛け声にも力が入る。
 スキル『神速』を発動した倉野は全ての時間を置き去りにする。光よりも早く動くことで相対的にこの世界全ての時間が止まっているように感じるのだ。
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