719 / 729
連載
連射の意味
しおりを挟む
そんな冗談を呟きながらリオネは矢を放っていた。
途中、ツクネの魔法によって彼女の怪我や疲れは癒やされているものの、連続で矢を放つのは腕にも指にも負担がかかる。
腕の筋肉は辛いと叫んでおり、指先は皮が剥け血が滲んでいた。
しかし、一人で戦っている時のことを思えば、痛みなど気にならない。倉野がいるというだけでこれほど心強いのか、とありがたさを感じている。
「クラノさん、この攻撃はいつまで続けるんですか?」
リオネが倉野に問いかけた。
すると、言葉から一瞬遅れて倉野が聞き返す。
「すみません、何か言いましたか?」
どうやら、倉野はちょうどスキル『神速』で四人のミミーが放った矢を叩き落として戻ってきたところだったらしい。
それを察したリオネはもう一度問いかける。
「この、偽ミミーへの攻撃って一体いつまで続けるんですか? 大雑把な位置だけで矢を放っても決定打にはなりません。もちろんこれだけの数ですから、運よく偽ミミーを射抜くことができるかもしれませんけど」
「それはないと思いますよ。偽とはいえ、ミミーと共に数々の仕事をこなしてきたはずです。自分に向かってくる矢を回避することは可能でしょう」
倉野の返答を聞いたリオネは、頭に浮かんできた疑問により一瞬手を止めた。
「それじゃあ、この連射は意味ないってことですか?」
彼女は質問を投げかけてから再び矢を放ち始める。
倉野の作戦を信じているが、自分が何のために何をしているのかを知らない状態では、集中し難い。
「この連射は相手の思考を奪い、撹乱するための陽動です」
そう答える倉野。
「陽動・・・・・・ですか?」
「ええ、スキル『千里眼』を持つミミーは僕がリオネさんと合流したことを知っています。そうですね、ミミーのスキルを簡単に例えるならテレビの生放送・・・・・・じゃなくて、この場にいるかのように見えるスキル。僕がここに現れてからの全てを見ているミミーの目には、何がどう映っているでしょう?」
「どう、って・・・・・・クラノさんが素早く矢を叩き落として・・・・・・あ!」
言いながらリオネは気づいた。倉野のスキル『神速』を知らない者が、それに気づくことなどあり得ない、ということに。
スキル『神速』を発動した倉野を目で追いかけることなど不可能である。
リオネの気づきに対して倉野は口角を上げた。
「そうです。ミミーからしてみると、僕が登場した瞬間に矢が届かなくなったことしかわからないんです。また、それと同時に偽ミミーの方向にリオネさんが矢を放ち始めた。つまり『僕が魔法か何かで矢を防いでいる』こと『索敵能力に優れているかもしれない』こと『攻撃に関してはリオネさんしかしていない』こと。ミミーが得ている情報はこの三点だけです」
途中、ツクネの魔法によって彼女の怪我や疲れは癒やされているものの、連続で矢を放つのは腕にも指にも負担がかかる。
腕の筋肉は辛いと叫んでおり、指先は皮が剥け血が滲んでいた。
しかし、一人で戦っている時のことを思えば、痛みなど気にならない。倉野がいるというだけでこれほど心強いのか、とありがたさを感じている。
「クラノさん、この攻撃はいつまで続けるんですか?」
リオネが倉野に問いかけた。
すると、言葉から一瞬遅れて倉野が聞き返す。
「すみません、何か言いましたか?」
どうやら、倉野はちょうどスキル『神速』で四人のミミーが放った矢を叩き落として戻ってきたところだったらしい。
それを察したリオネはもう一度問いかける。
「この、偽ミミーへの攻撃って一体いつまで続けるんですか? 大雑把な位置だけで矢を放っても決定打にはなりません。もちろんこれだけの数ですから、運よく偽ミミーを射抜くことができるかもしれませんけど」
「それはないと思いますよ。偽とはいえ、ミミーと共に数々の仕事をこなしてきたはずです。自分に向かってくる矢を回避することは可能でしょう」
倉野の返答を聞いたリオネは、頭に浮かんできた疑問により一瞬手を止めた。
「それじゃあ、この連射は意味ないってことですか?」
彼女は質問を投げかけてから再び矢を放ち始める。
倉野の作戦を信じているが、自分が何のために何をしているのかを知らない状態では、集中し難い。
「この連射は相手の思考を奪い、撹乱するための陽動です」
そう答える倉野。
「陽動・・・・・・ですか?」
「ええ、スキル『千里眼』を持つミミーは僕がリオネさんと合流したことを知っています。そうですね、ミミーのスキルを簡単に例えるならテレビの生放送・・・・・・じゃなくて、この場にいるかのように見えるスキル。僕がここに現れてからの全てを見ているミミーの目には、何がどう映っているでしょう?」
「どう、って・・・・・・クラノさんが素早く矢を叩き落として・・・・・・あ!」
言いながらリオネは気づいた。倉野のスキル『神速』を知らない者が、それに気づくことなどあり得ない、ということに。
スキル『神速』を発動した倉野を目で追いかけることなど不可能である。
リオネの気づきに対して倉野は口角を上げた。
「そうです。ミミーからしてみると、僕が登場した瞬間に矢が届かなくなったことしかわからないんです。また、それと同時に偽ミミーの方向にリオネさんが矢を放ち始めた。つまり『僕が魔法か何かで矢を防いでいる』こと『索敵能力に優れているかもしれない』こと『攻撃に関してはリオネさんしかしていない』こと。ミミーが得ている情報はこの三点だけです」
0
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。