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ミミーの枷

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 その能力の全貌が明かされるのはまだ少し先の話。
 今の倉野に自分のスキルを確認する余裕などなかった。

「リオネさん、偽ミミーへの連射を止めてください。ただし指と腕の負担が大きくて、もう射ることができないという演技をした上で」

 そう指示されたリオネは戸惑う。

「え、演技ですか? 私、演技なんてできませんよ」
「大丈夫です。ミミーが『千里眼』で得られる情報は視覚だけ。言葉は必要ありません。そうですね、弓を引いてから矢を落とせばそれっぽく見えるでしょう」

 具体的な方法を伝授されたリオネは即座に実行した。

「えっと、弓を引いてから矢を・・・・・・腕が痛んでもう矢を持っていられないような感じでしょうか」

 そのまま矢を落とし、偽ミミーへの連射を終える。
 この行動に一体どんな意味があるのか、目まぐるしく動き続ける中では頭が追いつかない。そんな中、連射を終えて振り返ったリオネの目に映ったのは自信に満ちた倉野の表情だった。
 無意味に攻撃の手を止めたのではない、と確信したリオネは倉野に肩を寄せて次の言葉を待つ。
 二人の衣服越しに感じる体温が非常に心地いい。呼吸を整えるうちにリオネは倉野と一体化していくように錯覚する。
 いや、それは本当に錯覚だったのだろうか。その瞬間、倉野の思考が流れ込んできたかのように理解する。

「そうか、攻撃の要である私が弓を引けなくなったと思い込ませているんですね。そうすれば、偽ミミーも私たちを取り囲もうと接近してくる」
「その通りです。一人たりとも逃すわけには行きませんからね。その上、こちらの戦力が低下した今、ミミーとしては一気に勝負を決めたいと思うはずです。戦いを長引かせれば、先ほどのようなことが起きるかもしれない」
「先ほど・・・・・・あ、ツクネのことですね。少し前にミミーは、私が回復する場面を『千里眼』で見ている。ツクネによる回復の可能性も考慮しなければならない」

 再び倉野の思考を理解するリオネ。シンクロとでも言うべきか。
 シンクロ状態になれば話は早く進む。

「ええ、じわじわと追い詰めるような戦い方をすればツクネ再来の可能性がある。ミミーほど優秀な傭兵であれば、それを無視できるはずがありません。やっぱりいい仕事してますね、ツクネは」

 倉野がそう言葉にした瞬間、リオネは既視感を覚えた。
 それは倉野が現れてすぐのこと。彼はツクネがリオネを回復させ去ったことを知ると、いい仕事をすると言っていた。その言葉の真意はここにあったのかもしれない。
 ミミーに制約を与えることだ。
 一撃で決着をつけなければ、ツクネが全快させるという無視できない可能性。これは戦況を大きく左右する重い制約である。
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