触れて感じて

澤檸檬

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触れて感じて

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「私はもう何も見えないの」

 雄介は愛美にそう告げられた。
 それは比喩ではなく、愛美が視力を失うという意味である。
 結婚を控えた雄介と愛美に訪れたのは病という壁だった。
 突然の告白に驚き雄介は愛美の病名まで聞こえていない。しかし途中で自分よりも愛美の方が辛いはずだと気づき、無言で抱き締める。
 どうやら愛美はずっと視力を失うという恐怖と戦っていたが、ついに全ての視力を失ったのだ。

「ごめんね。だからもう雄介とは一緒にいられない」

 二人の部屋で向かい合って話しているが、愛美の視線を感じることはない。部屋の入り口に立てかけられた白い杖が彼女の話に現実味を帯びさせていた。
 目の見えなくなった自分が雄介の負担になると考え、愛美は身を引こうとしているのだろう。
 
「愛美・・・・・・俺は嫌だよ。何があろうと離れないって言ったろ? 俺が愛美の目になる」
「でも、もう私は雄介の顔も見えないの。雄介に抱かれたって何がどうなっているのかわからないのよ」

 愛美は雄介の言葉を受け入れようとはしない。
 言葉では彼女の心を開くことができないと感じた雄介は愛美の顔に手を伸ばす。

「愛美、今から頬に触れるよ」
「え?」

 雄介の体温が愛美に伝わった。

「どう? 俺がいるってわかる?」
「うん、わかるよ」
「何がどうなっているか分からないのかどうか、俺が愛美の目になれないかどうか今から試してみようか」
「え?」
「今から俺はキスをする」

 そのまま雄介は愛美の唇を塞ぐ。雄介が軽く唇を押し当てると愛美も受け入れるように背中に手を回した。
 何を言うでもなく互いに舌の先を絡ませ合い、相手を深くまで感じる。

「んっ・・・・・・」

 愛美は鼻から漏れるような声を出し、肩を震わせた。
 そんな反応を確認した雄介は愛美の右手を掴んで自分の左胸に押し当てる。

「ほら、俺はこんなにドキドキしてるんだ。伝わる?」
「うん、何だか鼓動が早いね」
「愛美のことを想うとこうなるんだ。心臓は見えないけど気持ちは伝わる」
「そうだけど・・・・・・」

 愛美が言い淀むと雄介はそのまま掴んでいる手を下にずらしていった。

「ここがお腹。けどもっと下に触れてもらいたいんだ」
「えっ、その、下って」
「嫌だったらこの手を振り払ってね。そのまま下げていくよ」

 徐々に下げていくと愛美の手が硬いものに触れる。衣服越しでもわかるほど硬く、熱を持っていた。
 すると愛美は自分の鼓動に驚く。見えないはずなのに何故か鮮明に感じられ、見ながら触っているよりも興奮していた。
 
「どう?」
「どうって・・・・・・その、何だか私もドキドキしちゃって」
「これでも何がどうなっているのか分からない?」
「それは・・・・・・」

 まだ自信なさげな愛美。
 雄介は優しく微笑んで愛美の耳元に口を近づけた。

「今から俺は愛美を抱くよ。愛しているから抱くんだ」
「雄介・・・・・・」

 雄介の声を聞いた愛美は自分の下腹部が熱くなっていくのを感じる。体が雄介の行動を受け入れる準備をしているのだ。
 愛美が嫌がっていないことを確認すると雄介は唇で首筋に触れる。

「あっ」

 艶めかしい声が漏れた。
 反応を確かめるように雄介は愛美の体に触れていく。

「もっと触るから全身で感じて」

 胸の膨らみ、中心の突起、柔らかな太腿。順番に触れていくと愛美の反応も大きくなっていった。

「んっ雄介・・・・・・」
「どうしたの?」
「んっ・・・・・・あぁっおかしいの・・・・・・いつもより感じて」
「良いんだよ、もっと感じて」

 言いながら雄介は愛美の右手を自分のパンツの中に導く。

「俺にも触ってくれるかい」
「んっ、うん。硬くて熱い・・・・・・雄介も、んっ、興奮してくれているんだね」

 そこから雄介と愛美は衣服を脱ぎ捨てながらお互いの体を触り合った。他の人には触らせない奥深くまで触れ合い、その内に言葉は全て喘ぎ声に変わる。

「愛美っ・・・・・・んっ」
「気持ちいいの、あっ・・・・・・んっ」

 クチュクチュという体液の混ざり合う卑猥な音が部屋に響いた。
 
「はぁ、はぁ、愛しているよ、愛美。あぁっ」
「んん、私も、私もよ。来ちゃう、来ちゃうよ、もうっんっ」

 お互いが果てると雄介は愛美を抱きしめ横たわる。
 相手の鼓動と体温だけが世界の全てかのように思えた。
 雄介は愛美の額にキスをしながら話しかける。

「これでもまだ俺と離れたい?」
「・・・・・・そんなの最初から離れたくないよ。でも雄介の為を思って」
「俺の為を思うならそばにいてくれないか。俺には愛美が必要だ。愛美以外ではこんなにドキドキしないよ。こんなに気持ち良くなんてなれない」

 もう愛美は未来が見えないものだとは考えていなかった。
 雄介と一緒ならば生きていけると信じている。
 恋は盲目かもしれない。だが愛は盲目すらも跳ね除け確かにそこに存在していた。
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