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澤檸檬

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夢。

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 彼と別れて三日。
 私はまだ、彼からのメッセージを消せずにいた。
 他の人から見れば、最低のメッセージなのはわかっている。
 隣にいた友人が、私のスマホ画面を見てしまい眉間に皺を寄せた。
「なにこれ。えっと『もうちょっとでデビューできるから、チケット十枚買ってくれ』とか『自主制作でCD作るのにお金貸して欲しい』とか、これ元彼からのメッセージ?」
「うん、そう」
「早く消しちゃいなさいよ。見てるだけで嫌な気持ちになるでしょ」
「そうなんだけどね」
 彼が私に求めていたものは『私』ではなく『夢を追いかける自分を助けてくれる人』なのは知っていた。
 それでも私は彼が『夢を叶えて幸せにするから』と言ってくれたことが嬉しかったの。
「やっぱ消せないよ」
 最低な彼が見せてくれていたのは、最高の夢だったから。
 私の心に植え付けられた叶わない幻想が私を支えていたから。
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